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第165回 恩師の奥さまの多彩なお仕事 伊藤努

第165回 恩師の奥さまの多彩なお仕事 伊藤努

第165回 恩師の奥さまの多彩なお仕事

筆者の大学時代のゼミの恩師は現代中国論、国際関係論の著名な学者であると同時に、2つの大学で学長経験がある優れた大学経営者、教育者だが、その夫人である中嶋洋子さんも夫に負けないパワフルな女性だ。夫が大学の教授や学長でありながら、ご本人は定年まで都内で公立中学校の理科教師を務め、その間に4人のお子さんを育てられた。数年前に100歳を目前に他界された先生のお母様の老後も自宅で長くみておられた。

これだけでも、1日に24時間あっても足りないような超多忙な生活が想像されるが、お仕事はまだまだある。1つは、夫が教授や学長を務めた東京外国語大学の留学生支援の会の会長として、夫の退官後も長く、会の会長の任を引き受け、世界各地から外語大に留学している外国人学生の母親のような存在として、さまざまな支援活動の先頭に立っておられることだ。

中嶋先生のご自宅では毎年、12日に先生の国際関係論ゼミの教え子や、現在勤務している秋田の国際教養大学の現役学生や卒業生を招いた新年会が開かれているが、ゲストの大きなグループをなすのが両大学の外国人留学生である。留学生に積極的に新年会への参加を呼び掛けているのは洋子先生のアイデアで、留学生たちの異国でのさびしい年越しを慮って、大勢の教え子たちが集まるにぎやかな新年会で少しでも楽しいひと時を過ごしてもらおうという優しい心遣いによるものだ。と同時に、これが留学生支援の会の具体的活動の1つでもあるようだ。

先生ご夫妻のご自宅は板橋区の閑静な住宅街にあり、2階建ての家も、広いリビングを含めかなりの間取りがあるが、新年会の際にはここに5060人が集まると、リビングには収まり切らない。夕方から夜明けまで続く新年会は、延べの出席者を数えると、毎年、軽く100人を超える。飲み物や食べ物の量も相当なもので、先生のご家族が総出で準備に当たっておられる。

洋子先生の仕事はまだある。これまでに2冊の本を出版されているが、1つは『住んでみたオーストラリア:理科教師の観察ノート』(1984年、サイマル出版)、もう1つは二女の亜純(あずみ)さんとの母娘の共著となる『高校生留学のすすめ~これからの地球の歩き方』(2010年、教育評論社)で、それぞれ本のタイトルから内容が想像していただけよう。中学の理科教師、教育のグローバル化のただ中にいる学長を夫に持つ人が執筆するのは打ってつけのテーマであり、本を書き上げる知的探究心の旺盛さには敬服するだけだ。

筆者がバンコクに駐在していたとき、洋子先生が結婚前の二人のお嬢さんを伴ってタイ旅行に来られたので、アユタヤクルージングなどで同行させていただいた。「昔からよく知っている伊藤さんがバンコクで勤務しているので、タイに決めたのよ」と聞き、ガイド役にもつい力が入ってしまった。

 

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