第169回 国ごとに違う犬の生活 伊藤努

第169回 国ごとに違う犬の生活
先日、NHKのBS番組でドイツにおける犬の躾け方や飼い主の心得など、日本とは随分と違う彼の地での「犬の生活」事情を紹介する番組を見た。日本人の愛犬家の女優が、ベルリンにある捨て犬などを集めた「犬の学校」を訪ね、問題行動を取る大型犬の躾けを専門家から習うという見せ場もあった。この番組を見て、人間とペットの犬との関係について、いろいろなことを知ったが、タイなどアジア諸国とは犬の生活もかなり違うという印象を持った。
ドイツでは、日本と違って、生き物である犬の生命を尊重する立場から、飼い主不明の犬を捕獲しても、殺すことはしない。ベルリンの「犬の学校」のような収容施設が国内の各地にあり、飼い主の愛情が薄かった捨て犬を専門家の手によって「更生」させるとともに、新たな飼い主が見つかるまで生活の面倒をみるのだそうだ。飼い主が見つからなければ、施設で一生を終える。日本では、保健所の担当者に捕獲された犬は飼い主が現れなければ、殺処分となるが、犬の運命は国によってこうも違うのである。
「さすがに文化的レベルの高いドイツだ」とかつて暮らしたことがあるこの国の懐の深さに感嘆する一方で、筆者が後に駐在したタイでも、犬は自由気ままに生きているようだった。日本のように、犬小屋で鎖や紐につながれて自由の度合いが低い生活環境と比べると、タイなど東南アジアは天国だと言えるのではないか。

バンコク市内の屋台をうろつく犬
街なかをうろつく犬たちも利口なので、地元の人とよそ者の外国人を見極めることができるのだろう。筆者のような外国人には、「侵入者」と思ってか、時にはほえたりして威嚇するケースが多かった。バンコク中心部にあった自宅のアパートに帰るときも、徒党を組んで歩き回る大きな犬たちがいるので、その道を歩く勇気はなく、車を使うしかなかった。タイ人の運転手は慣れたもので、犬を全く怖がっていなかった。仏教の信仰心があつい国ということで、生き物に対する姿勢も違うのだろうか。