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チャイナ・スクランブル

習政権2期目、ソロス氏の予言した「2017年、中国の不動産バブル崩壊」はあるのか(下)
2017-11-09. 日暮高則
一方、個人レベルで資金を借り入れるケースが多くなっていることが裏付けられた。個人とは、習主席が望むように居住するために購入する中低層のサラリーマンと見られる。ただ、年若い彼らは十分な頭金が揃えられない。しかも、年収に比較してかなり高額の住宅を購入しなければならないため、厳しいローン設定を迫られるのだ。中低所得のサラリーマンへの貸付額が多くなれば、金融機関は安心できない。レバレッジ率が高くなったことで金融不安の恐れも出てきた。そこで、考えられたのが米国のサブプライム・ローンのように不動産を証券化し、危険分散を図る手である。香港紙によれば、中国房地産開発集団公司の孟暁蘇理事長は「不動産の証券化で、地方債(地方政府が抱える債務)の問題を解決しなければならない」と強調している。

かつて米国では、低所得者にも住宅を行き渡らせようと、高金利の住宅ローン、いわゆるサブプライム・ローンを設定し、物件を担保に購入させた。そこには、住宅価格は右肩上がりで、支払い不能になったときは物件を売却すればいいという計算があった。一方、住宅金融会社はそのローンを担保にして小口の証券(RMBS)、さらにRMBSを裏付けにした債務担保証券(CDO)なるものを作り、世界各地の金融機関にばらまき、高金利をえさに一般投資家に引き受けさせた。ただ、サブプライム・ローンの特徴は、数年で金利が急激に跳ね上がること。案の定、2007年ごろから、このローンを抱えた人たちが大量に返済不能に陥り、この債務不履行が世界的な不況を呼び込んだ。08年に起きたリーマンショックもこのサブプライム危機が引き金になっている。

この経緯を熟知している世界的に著名なファンドマネジャー、ジョージ・ソロス氏は2016年1月のスイス・ダボス会議で、「米国では、債務不履行の恐れのある不動産ローンが小口証券化され、さまざまな別の証券と十把一絡げで売り出された。見かけは低リスクであり、しかも高金利であったことから、多くの投資家が飛びついた」とサブプライム・ローンの危険性を改めて力説するとともに、「中国では(影の銀行などが発行する)理財商品なるものが、証券化された不動産ローンの役割を担っている。一般投資家から理財商品として集められた資金が地方政府の開発資金になった。地方政府は実績を誇張するため、無理な不動産投資を行い、バブルを引き起こしている。これは米国のサブプライム・ローン危機と同じである」と喝破した。

そしてソロス氏は、「近い将来、1、2年内(2017年まで)に(不動産価格の暴落によって)中国経済がハードランディングすることは不可避だ」と指摘した。このソロス発言に対し、中国国内からは「バブル崩壊、ハードランディング説はこれまで何度も出ているが、中国の不動産市場は持ちこたえている」「(うそばかり言って人騒がせする)狼少年の類だ」と反発する声が続出した。ソロス氏が予言した2017年ももうすぐ終わるが、これまでバブル崩壊に至るような大きなほころびは出ていない。中国の金融機関はほぼ国営であり、民間企業のような厳しい収支バランスシートチェックが入ることもないし、情報公開もないので、たとい不動産投資で膨大な債務を抱えたところで、すぐに明らかにされることはない。

しかし、ハードランディングは突然訪れるから、そう呼ばれるのであって、兆候がないことが安全の保証でないことも確かだ。習近平氏は2期目に権力を集中させ、本来李克強総理が担うべき経済、金融部門まで統括する構えである。であれば、新築住宅を一般人が買えるレベルまでに下げる不動産のソフトランディングも習氏の責任となる。成功すれば、庶民の拍手喝采を浴びるが、失敗すれば、絶対的な権力確保は怪しくなるかも知れない。