topics & News to Home
霞山会とは
月刊『東亜』
講演会・シンポジウム
中国への研究留学
日本への研究留学
東亜学院中国語学校
東亜学院日本語学校
日中交流
霞山会館
交通案内
各種お申し込みForm

■中国マクロ経済分析
 慶應義塾大学駒形研究会

■霞山学生会
■リンク集
■サイトマップ
一般財団法人霞山会
東京都港区赤坂2-17-47
赤坂霞山ビル
TEL.03-5575-6301
FAX.03-5575-6306

チャイナ・スクランブル

マハティール・マレーシア新政権、本当に中国投資の開発事業拒否に進むのか(下)
2018-06-20. 日暮高則
マハティール氏は今回、政権担当直後に「前政権が外国と結んだ協定すべてを再検討する」と宣言した。選挙前から「中国資本に過度に依存する経済建設は危険だ」との見方を示していたことから、協定再検討の標的が中国と交わされた大規模投資プロジェクトであることは明らかだ。5月28日の記者会見で早速、クアラルンプールとシンガポールを結ぶマレー半島高速鉄道計画を中止すると表明した。このプロジェクトは、時速350キロの高速鉄道で両都市間を1時間半でつなげようとする画期的なもので、2026年開通を目指していた。

日本のJR東日本などのコンソーシアム〈企業連合体〉も落札に意欲を示していたが、ナジブ前首相は中国企業に傾いた。中国側は、技術水準の高さの割に低コストである面を強調したほかに、資金調達面で最大限の協力を約束したからだ。習近平政権にとっても「一帯一路」の目玉として、ぜひ獲得したかったプロジェクトであった。というのは、中国雲南省からラオス、タイを突き抜ける国際縦断鉄道が計画されている。これにマレー半島の鉄道をつなげれば、中国製の高速鉄道で自国からシンガポールまで陸路を使って一気に行くことが可能で、東南アジアへの影響力は一段と強まる。

マハティール首相はまた、中国関連プロジェクトであるマレーシア東海岸鉄道(ECRL)建設についても、「財政的な余裕はない」との理由で、延期あるいは中止の方向で検討していることを明らかにした。これは、クアラルンプール郊外から北部タイ国境近く南シナ海に面したコタバルに至る全長688キロの鉄道敷設計画で、2024年の完工を目指していた。130億米ドルという巨額な総工費は全額中国からの借款に頼ることになっており、中国鉄路総公司などがコンソーシアムを組んで参画する。昨年8月にナジブ首相、王勇国務委員を迎えてにぎにぎしく開工式典が行われていた。

このECRL、実は、マレー半島西海岸で進める港湾建設とともに、中国にとっても大きなメリットがある。現在、マラッカ海峡を通る貨物船舶の7割以上は中国の港湾を出入港するものと言われ、シンガポールの港湾を使う船舶の5割以上が中国関連の船であるという。となると、中国系船舶は、施設使用料が割高のシンガポール港を使うより、マレーシア内に自前の港湾を造り、そこを利用した方が良い。中国系企業によるケラン港(巴生港)やマラッカ港(馬六甲皇京港)造成計画はそんな意図が込められている。その両港から東海岸鉄道を使って陸路で貨物を運び、南シナ海に面した港湾から再度船積みすることも可能で、インド洋から中国への距離は近くなる。さらに、マラッカ港は中国の軍事基地になるとの情報もある。

中国関連プロジェクトが相次ぎ中止、中止表明される中で、一番注目されているのが、シンガポールにも近いマレーシア南部ジョホールバル地区で計画されている「フォレスト・シティー(碧桂園森林城市)」プロジェクトだ。両国国境付近の海上を埋め立てて4つの人工島を造成、20平方キロ大の広さの上に居住スペース、ショッピングモール、ホテル、オフィス、病院、学校、国際会議場などあらゆる施設を持つ巨大都市を建設しようというものだ。最終的な投資額は1000億米ドル規模と言われており、中国系が主体の中馬合弁企業「カントリー・ガーデン・パシフィックビュー(CGPV)」が事業主体となっている。

将来、ショッピングモールになるべきビルの一部は完成、2016年からオープンしているが、居住スペースの建設などはまだまだ。だが、中国国内ではすでに物件宣伝、販売が始まっており、富裕層からは高い関心を持たれている。あるサイトでは、「販売開始からまたたく間に20数棟のコンドミニアムが買い占められ、完売状態になった」と伝えられており、異常な人気を得ている。また、フォレスト・シティーが国際空港に近いことや、クアラルンプール・シンガポール間の高速鉄道計画があることもあって両国の企業、ビジネスマンからも注目されている。すでに動き出しているとなると、マハティール政権もこの人工島建設を簡単にストップするわけにはいかず、難しい選択が迫られそうだ。

マハティール氏はかねてから「ルック・イースト(東方国家に学べ)」を主張しているが、学ぶ対象として中国も含まれると発言している。政権担当後、大型開発事業に懸念を表明する一方で、「契約内容は再審査するものの、両国間で協議された内容は順守していく」「われわれは世界のいかなる国とも友好関係を保つことが基本である。中国も歓迎する。中国人には積極的でまじめな仕事ぶりなど学ぶところが多い」と述べ、若干軌道修正を図った。やはり、中国の協力なしに経済再生はないとのスタンスは持ち続けているようだ。首相系のシンクタンク幹部も「マハティール氏はもともと中国系企業を排除するなどと言っていない」「中国企業は長期的な視点でビジネスを見ており、人民の気持ちを捉えるのもうまい」などと指摘し、首相が“中国嫌い”でない点を強調した。こうしたことから、「中国事業見直しはあくまで選挙対策向けだったのではないか」との疑問を呈した地元メディアもあるほどだ。

中国外交部の耿爽スポークスマンは「マハティール氏は中馬関係発展のために大きな貢献をしてきた」と持ち上げ、「両国の友好関係をわれわれは大いに重視しており、この全面的、戦略的な二国間関係は両国人民の利益にかなっている」とも力説した。北京大学の国際関係部門の学者も「中国側の投資が合理的に不正なく行われるならば、プロジェクトの遂行に影響が出ることはない。マレーシア新政権が対中国関係を長期的に発展させたいとの思いを捨てることはなかろう」と分析している。中国側も、事業継続には楽観的な見方が支配的なようだ。