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孫政才重慶市書記の失脚は習近平長期政権化狙いの一環か−胡春華氏が次の標的?(下)
2017-08-08. 日暮高則
孫政才氏とはどんな人物か。山東省栄成市の出身。1963年9月生まれだから、今年間もなく54歳だ。北京市農林科学院で専門的に農業を学び、そこで研究生活をしていた専門家で、その後に党行政マンに変わった。北京市順義県、区幹部や市党委秘書長を歴任した後、2006年に43歳の若さで国務院農業部長に抜擢された。さらに09年、吉林省書記に転じたが、このとき共産主義青年団第一書記だった胡春華氏が同時に内モンゴル自治区書記となり、2人がポスト習近平を担う「第6世代」のホープと言われた。2012年、第18回党大会で孫氏は重慶市書記、胡春華氏は広東省書記の要職に就き、ともに49歳で政治局入りを果たす。この時点で押しも押されもしない次世代トップの地位を確固たるものにした。しかし、幸事魔多いで、政治局常務委員に上る最終段階でつまずいた。

若くして孫氏をエリートの道に引き上げたのは、温家宝前総理だと言われる。胡錦濤政権の時代、党内は胡錦濤氏の出身母体である共青団系幹部、江沢民元国家主席が影響力を持つ上海閥や太子党(革命幹部の二世グループ)の葛藤があったが、その中でどの派閥にも属さない温家宝氏は独自の勢力作りに動いた。その一人として、地質の専門家である温氏が目を付けたのが農業専門家の孫政才だ。だが、温氏が余力を残さず第18回党大会で完全引退したため、孫氏は後ろ盾を失った。政治力学的に見れば、バックアップする老齢幹部も集団もないエリートはその地位を確保できない。

そもそも孫政才氏は若年で抜擢されるほどの能力があったのかという点だが、これには毀誉褒貶がある。香港メディアによれば、北京市の下部組織にいて11年連続で「優秀党員、幹部」の評価を受けた実績はある一方で、「浮名流しの幹部」「高級時計持ちの書記」などの悪評もあったという。昨年秋以降、4人の女性と愛人関係となり、彼女らを吉林省や四川省のテレビ局に売り込んだりしていた。また、ローレックスなどの高級腕時計を海外で買い込み、上司に贈呈したりもしていた。この乱れた作風は検査委の知るところとなり、今年5月下旬、王岐山書記が孫政才氏を呼び出して注意した。これに対し、孫氏は「十分な自己管理ができずに、女性を傷つけた。私の党性は強くない」「検査委が私の妻を調査することに同意する」などと殊勝な言葉で応じたという。

しかし、こうした報道は孫氏の失脚以後に出てきたもので、事前に図抜けて腐敗幹部だったというような風評は出ていなかった。第一、そういう風評があったならば、並み居る青年幹部の中から選抜されて農業部長から地方の2つの省のトップへと順調に出世の階段を上り、将来の党中央トップ候補生に据えられることもなかったであろう。孫氏の“訴追”はやはり腐敗摘発に名を借りた権力闘争だと見る方が自然ではなかろうか。であるなら、習近平主席は何を狙ったのか。

現在、最大の関心事は、習近平氏が10年の国家主席任期を無視して、2022年の第20回党大会以降も権力保持を目指すかどうかという点だ。老幹部なども一堂に会し、忌憚のない意見交換をする夏恒例の北戴河会議は今年、「党主席制」の復活が提議されると言われる。党主席制は、1980年代初めの胡耀邦時代、個人への権力集中、個人崇拝につながるとして廃止されたもので、この制度の復活はまさに習主席の一極集中、強権力保持の狙いが隠されていよう。習氏は昨年秋の6中全会で決まった「党の核心」化に加え党主席になることで、あるいは毛沢東主席と同様に、終生の権力掌握さえ思料の内に入れているのかも知れない。

長期政権狙いであれば、2022年党大会時の権力移譲を見据えて、次世代幹部を今秋党大会で政治局常務委員会に引き上げるといった人事の必要はなくなる。次世代の有力候補者は孫政才、胡春華の両氏と見られていたので、その一人孫氏を失脚させたことは習主席の長期政権作りに沿った動きと見ることもできる。この仮説に立てば、もう一人胡春華氏の今後の政治的立場も厳しいものになる。党中央の依頼を受けて、民主諸党派が最近、広東省に調査研究グループを派遣し、その報告書を党中央に提出したという報道がある。それによると、「広東省は経済発展の光の陰で、腐敗と堕落の問題がある。これが爆発したら重大な災禍をもたらす」などとして、暗に胡春華書記の執政に問題があるように指摘していた。胡春華つぶしが露骨になれば、習主席の長期政権狙いがますます明確化してくるだろう。