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習主席肝いりの河北省新都市建設プロジェクト「雄安新区」は実現可能か(下)
2017-06-06. 日暮高則
党メディア「人民網」は、雄安が「新区」と名付けられたことについて、「旧来の工業施設や不動産主体のエリアではなく、制度改革、科学技術や企業環境の革新が進んだハイテク企業などを誘致し、産業と都市機能を良好に融合させた創造的な発展モデルエリアにすることを目指したため」としている。習主席も言うように、北京の非首都的機能の分散配置も構想されており、高等教育、研究機関や大型病院のほか、金融機関など経済関連部門が移転候補に挙げられる可能性もある。中国国際経済交流センターの張燕生首席研究員は「雄安新区に課せられた使命は創新型だ。中国は今後、大国の責任として創新型の国家となり、世界経済のために中国独自の発展モデルを示さなければならない。雄安は創新型近代国家の心臓部、中国のシリコンバレーにしなければならない」と熱意を語った。

こうしたバラ色の開発計画であるため、まず地元民が欣喜雀躍した。北京紙「新京報」によれば、これまで3県農民は、近郷農村地区の余剰労働力として北京市に吸収されていたが、その出稼ぎ者の一人は開発情報を聞いて、「昨晩は興奮して一睡もできなかった。すぐにでも郷里に戻り、自分は何のビジネスができるか考えたい」と話した。また、香港紙によれば、情報開示後、すぐに現地に不動産業者が入り込み、土地の取得に動き出した。このため、現地の公安局が厳重な取り締まりを始めたという。さらに、深セン(土へんに川)株式市場に上場している河北省系の土木・建設、セメント、環境保護関連企業が値上がりし、一部は取引停止になったという。

党機関紙「人民日報」は、新聞やネットサイトで不動産熱を煽らないように警告する記事を掲載した。4月2日には「雄安新区は冒険家の楽園でも、投機家の天国でもない。不動産価格は上らなければ、雄安はその名のように安心できる」と書き、4月4日は「土地漁りで雄安に押し掛けるのは間違いだ」と強調した。4月3、4日に趙克志書記や許勤省長ら河北省幹部が現地を視察し、趙書記は「新区専門の党委員会が責任指導し、全力で準備工作を進めていく」と発言。これを受けて、雄安新区準備工作委員会も「雄県、容城県、安新県の3県の土地、建築・土木、不動産取引は法に基づいて厳重に行う」と宣言した。

ところで、天津市政府は2006年、600億元を投じ、渤海湾沿岸の響螺湾にビジネス特区「濱海新区」を造る計画を立て、建設をスタートさせた。ニューヨークの摩天楼をイメージして49棟の超高層ビルを持つ「東方のマンハッタン」の創設を目指したが、資金調達ができず、2年後に多くの工事は中断した。26棟はすでに完成しているが、夜は灯りも人家もなく高い墓標のように見える。香港のテレビは「中国最大のゴーストタウン」と指摘。不動産開発を手掛けた北方信託公司の劉恵文董事長が自宅で自殺した。この濱海新区建設に関わっていた何立峰氏が国家発展改革委主任として、今回雄安新区プロジェクトの総指揮を執るのも不気味な巡り合わせだ。

天津市のビジネス特区建設も当時、「北京からの産業移転」、京津冀(北京市、天津市、河北省)地域の経済一体化を推進することが狙いということで計画された。だが、この構想は実現しなかった。このため、雄安新区についても、雄県、容城県、安新県3県と距離的に近い河北省保定市の地元メディアは「天津市の例を教訓とすべきだ」と雄安新区のブームに警鐘を鳴らしている。ただ、現在、大中都市の住宅建設が一渡りし、新しい公共事業も住宅建設も起こしにくい状態にあるため、久しぶりに出てきたビッグプロジェクトに開発業者が注目し、はしゃぐのも無理はない。

問題なのは投資資金だ。今までのところ、雄安新区建設の総事業費は明らかにされていない。銀行監督管理委員会の統計によると、2015年末の商業銀行の不良債権残高は1兆2744億元。2016年5月末で不良債権残高は2兆元を超え、不良債権比率も2.15%に達している。年初よりそれぞれ2800億元強の増加、0.16ポイントの上昇だという。現在、中国はこうした不良債権を証券化して危険分散を図っているが、潜在的な危険が消え去ったわけではない。こうした中で、国家プロジェクトとはいえ、雄安新区への新たな資金調達が可能なのか、注目されるところである。