topics & News to Home
霞山会とは
月刊『東亜』
講演会・シンポジウム
中国への研究留学
日本への研究留学
東亜学院中国語学校
東亜学院日本語学校
日中交流
霞山会館
交通案内
各種お申し込みForm

■中国マクロ経済分析
 慶應義塾大学駒形研究会

■霞山学生会
■リンク集
■サイトマップ
一般財団法人霞山会
東京都港区赤坂2-17-47
赤坂霞山ビル
TEL.03-5575-6301
FAX.03-5575-6306

チャイナ・スクランブル

米国で2つの中国人絡みのスパイ“事件”−北京当局はグローバルに影響力強化狙う(下)
2018-02-08. 日暮高則
最近出たもう一つのスパイ“事件”は、ルパート・マードック氏元妻のウェンディ・トン女史に関わる話。米紙「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」は1月16日、「ウェンディ・トンは中国の高級スパイの可能性がある。クシュナー氏やイバンカ夫人に近づいて中国の利益を図ろうとしている。事情通によれば、米国の公安当局(おそらくFBI)はクシュナー夫妻に注意を喚起している」と一面トップ記事で伝えた。同紙によれば、トン女史は、米国で大規模な建設プロジェクトを開始したいので、それに協力してくれるよう夫妻に頼んでいたという。

そのプロジェクトとは、「中米両国の親善関係のシンボル」として中国側が一億ドル出資し、ワシントンの米国国立植物園の中に中華風庭園を配置した「中国の森」を造るプロジェクトだという。一見、何の問題もないように見えるが、米公安当局者は「中国の森が計画される場所はホワイトハウスや米議会から5マイル(約8キロ)程度しか離れていない。しかも高い地形にあり、そこには70フィート(約21メートル)の白塔も建てられる計画だという。米側中枢が監視される恐れがある」と注意喚起している。また、当局者はクシュナー氏に対して、政府の中にいる期間が短く、ロビー活動に慣れていない点を指摘し、「自身の利益と国家の利益の区別が必要」などと警告したもようだという。

こうした報道に対し、ウェンディ・トン女史の代理人は「彼女は中国の森建設などに関知していないし、FBIなどの捜査機関が彼女や彼女の関係者を調べていることなど、本人は何も知らない」と意に介してない様子だという。実は、同女史のスパイ説はこれまでもしばしば出ており、その出所元はいつもオーストラリア出身の元夫マードック氏。彼は2013年の離婚後、しばしば「前妻は中国共産党のスパイ。それが離婚の本当の理由」などと公言しており、彼女にとってスパイ説は”慣れっこ”になっているのだ。今回の中国の森建設にかかわるクシュナー氏へのロビー活動もマードック氏がオーナーのWSJが報じたため、同氏の差し金もうわさされる。

ただ、トン女史も疑われる要素がないわけではない。「大学生時代に英語が流暢だったことから、軍総政治部のスパイ教育を受けたこともある。実はマードック氏に接近させたのも中国当局の計らいだった」との情報もあるほど。1968年、山東省済南市で生まれ、江蘇省徐州市で育った。幼いころから向上心が強く、海外に出ることばかりを考えていたという。広州市の医学校に通っていた際に余暇に米国人夫妻に英語を習い、その夫妻の紹介で米国留学を果たす。ところが、米国でその夫と関係を持ち、その男性を離婚させ、後釜に収まった。このとき、夫は53歳、トン女史は21歳だった。この結婚は長く続かず、トン女史はその後香港に行き、中国大陸をカバーする衛星放送のスターテレビに勤務。そこでオーナーのマードック氏と知り合い、1999年、30歳のトン女史は68歳の同氏と結婚した。

同女史はマードック氏を通じて世界的な政治家と交際し、トニー・ブレア元英首相やプーチン・ロシア大統領とも浮名を流し、中国のために一定の工作活動をしたとも言われている。マードック氏との間に2人の女児をもうけたあと離婚するが、その原因は当初、「ブレア氏との不貞」ともうわさされた。トン女史は、大陸企業との関係を強める一方、党中央幹部とも懇意にしてきた。特に曽慶紅国家副主席とは、1999年にオーストラリアを訪問した際、ガイド兼通訳を務めたり、息子の曽偉氏のためにシドニーで住宅探しを手伝ったりして誼みを深めてきた。こういう経歴やうわさがトン女史のスパイ説に信憑性を持たせている。

中国の影響力行使は南半球オーストラリアにも及んでいる。ターンブル首相は昨年12月、外国勢力による国内政治への介入を防ぐため、外国からの政治献金を禁止する法案を提出、成立させた。同首相は「外国勢力が政治プロセスに影響を与えようと、これまで例のない巧妙な工作が行われている」とし、具体的に「中国の影響については懸念している」と中国を名指しした。 地元紙によれば、中国は世界的に影響力を発揮するための「実験台」としてオーストラリアを考えており、政治家に金品を渡して中国に有利な政策決定するよう仕向けている。つまり、「オーストラリアを中国の傀儡国家にするのが目的だ」という。同国保安情報機構(ASIO)によると、実際に選挙で中国に篭絡され代理人となった候補者が10人ほどいたという。首相がわざわざ中国の脅威を公言し、法律まで制定したことに危機感の強さが感じられる。

同じオセアニアのニュージーランドでも中国人スパイ事件が話題になった。昨年9月の総選挙に出馬した与党国民党の中国系議員ジェン・ヤン(楊健)氏に対し、保安情報局(NZSIS)が「中国のスパイ」として捜査していることを明らかになった。楊氏は大陸出身で、元共産党員だが、「軍の外国語学校で諜報活動の訓練を受けていた」という経歴を公開していなかったことが問題になった。同議員は国会で外交防衛政策を専門にし、影響力を発揮できる立場にある。この事件の2カ月後、カンタベリー大学教授で中国人ビジネスマンの妻でもあるアンナマリー・ブラディさんが「ニュージーランド・中国関係の新モデル」と題した報告書を発表し、「中国は我が国政界、経済界の支持を獲得し、政治体系を破壊し、主権を脅かそうとしている。当地の華人の言論、結社、信仰の自由にも悪い影響を与えようとしている」と警告した。

そして、ブラディさんは、中国がニュージーランド内政に干渉したがる理由について、_罎国が防衛、外交事務を代行している南太平洋のクック諸島、ニウエ、トクラウの島嶼国3国に影響力を発揮すれば、中国への国際的な支持票が増やせる、▲織奪スヘイブンであるこれら3国を中国の腐敗官僚がマネーロンダリングの場に使える、F邏忙拉曚鮖詭遒貌れると航路上にあるニュージーランドとの提携は欠かせない、ぐ造す椋鄰呂あり、人口も少ないので、中国人が入植し、安全な食品が作りやすい、ヅ形鎧餮擦發い泙棲発されておらず、その採掘可能性が大きい、β席人里悗凌塀弌∋拉曚砲魯縫紂璽検愁薀鵐匹箸猟鷏箸詫利であり、オーストラリアや南太平洋島嶼諸国に対し、中国との関係モデルを提示できる利点もある−などを挙げた。

習近平政権がグローバルパワー化を目指した世界戦略を描く中で、オーストラリアやニュージ―ランドとの関係強化、影響力発揮を優先課題と位置付けているならば、オーストラリアとの安全保障同盟構築まで考えている日本としても十分な対応が必要になりそうだ。