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チャイナ・スクランブル

習主席が王岐山書記の身辺調査を進める理由と国家監察委員会創設の行方(上)
2017-05-11. 日暮高則
今秋開かれる中国共産党第19回大会の新人事体制に向け、水面下では激しいつば競り合いが展開されているのだろうが、外には漏れず、表面的には静かさを保っている。そんな中で唯一、注目すべきニュースが米国から飛び込んできた。それは、習近平国家主席が王岐山党中央紀律検査委員会書記の財産関係を秘密裡に調査しているという内容だ。習主席と王書記は固い盟友関係にあり、現在、二人三脚で汚職摘発を進めているのは周知のこと。その盟友関係を引き裂くような情報だけに、党内だけでなく世界中のチャイナウォッチャーも驚かせた。一方で、習主席は来春、「国家監察委員会」という最高レベルの国家機関の創設を考慮していると言われ、そのトップに王岐山氏を据えたい意向のようだとの情報もある。王氏身辺調査の情報はどういう意図でだれが流したのか。国家監察委はどういう組織になるのか。米国の華文ニュースや香港情報から探ってみた。

驚きの情報は、香港の反中国的なメディア「蘋果日報(電子版)」が4月20日に報じた。それによると、米国に逃亡している中国ビジネスマンの郭文貴氏がボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った話として、習国家主席が公安部の親しい配下である傅政華副部長に、王岐山書記の親族の在外資産や資金貯蓄状況を調べるよう指示していたことが明らかにされた。郭氏は、習氏がこの指示が出した理由について、王氏を信頼していないからだと説明している。2012年に習近平氏が党のトップ総書記に就いて以来、習氏は王書記を使い、江沢民元国家主席系幹部らを腐敗追及、汚職摘発の理由で追い落としてきた。それだけに、この時期、郭氏が2人の仲を割くような情報を漏らしたことは特別な意図があるように感じられる。

そもそも郭文貴氏とはどういう男か。1967年生まれで今年50歳。もともと山東省の貧しい農村の出だが、北京に出て北京盤古氏投資公司、政泉控股公司の代表を務め、海外投資グループの総師となった。胡潤富豪調査によれば、郭氏の個人資産は2013年に55億元、翌14年には155億元に跳ね上がったという。これだけ急激に資産を増やしたのは、もちろん党幹部とのつながりを持つ「政商」であるためで、特に2015年1月に紀律検査委に摘発、拘束された馬建国家安全部副部長との仲は有名だ。郭氏本人も2013年末、検査委の調査対象となり、贈収賄への関与があったとして事情聴取を受けている。このため、直後に海外に逃亡し、現在は米国に滞在している。中国公安当局は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて郭氏を国際手配、米国には身柄引き渡しを求めている。

郭文貴氏は習近平・王岐山コンビによる幹部の汚職摘発キャンペーンに批判的で、王氏の影響力が強いとされるメディア「財新網」の胡舒立編集長と太平洋をまたいで激しい論争を繰り広げたこともあった。一ビジネスマンにしては大それた行動であり、国内に有力なバックがいないとあり得ない。そこで香港メディアなどは郭氏の後ろ盾を調べたが、その結果、江沢民元国家主席や曽慶紅元副主席の存在が大きく浮かび上がった。曽氏は家族を含めて400億−450億元の海外資産を所持していると言われ、郭氏がその運用を任されている可能性がある。郭氏はまた、国家安全部が収集した高級幹部のさまざまな個人情報を馬建元副部長を通じて入手し、海外に持ち出したと言われ、それも公安当局が郭氏を追及する罪科の一つになっている。

習主席による王岐山氏の身辺調査という今回の暴露情報も、国安部から持ち出されたものに相違ない。であれば、事実の公算がかなり高くなる。問題はその理由だが、香港誌などは、王岐山氏が最近、検査委の力を背景に発言権を増し、習氏の不評を買っていることが背景にあると見ている。王氏は今年の第7次紀律検査委全体会議に出した報告で、「次期党大会の代表、中央委員、各省の指導幹部を選出する際には、彼らの政治観や潔癖性を確認しよう」「政治的に問題ある人物には検査委が異議を出す」などと明らかに党人事で“一票否決権”を持つような態度を示したという。検査委と王書記が江沢民元主席や同派系幹部の力を削ぎ、習氏への権力集中に協力してきたことは事実。ただ、それによって検査委の権限が増大し、習近平氏の「党核心」体制まで脅かす存在になったとしたら、習氏にとって好ましい状況ではない。

そこで、習氏が王岐山氏をへこます材料として彼自身と彼の周辺の“マイナス状況”を調べ上げることは十分にあり得る。調査を指示する相手として傳政華公安部副部長の名が出てきたことも信ぴょう性を持たせる。というのは、傳氏は周永康元政治局常務委員(訴追され入獄中)が支配していた政法委員会系統の中でも数少ない習近平氏系幹部であり、習氏が国家主席になった2013年夏に北京市公安局長から国務院公安部副部長に引き上げられている。現在は同部常務副部長(筆頭次官)であり、次期党大会ではさらなる出世が約束される。習主席がひそかに王岐山書記を調べさせるには、いちばん信頼できる公安幹部であっただろう。