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チャイナ・スクランブル

肖建華氏の“強制連行事件”によってまたまた崩れた香港の一国二制度(下)
2017-03-07. 日暮高則
中国では現在、今秋の第19回党大会を前に、新人事体制をめぐる激しい党内抗争が展開されている。習近平国家主席は、権力集中化の動きに出ているが、これに立ちはだかるのは江沢民元国家主席の勢力だ。香港メディアによれば、肖建華氏は江沢民氏系幹部である曽慶紅元国家副主席、賈慶林前全国政協会議主席、周永康前政治局常務委員、張徳江現全人代常務委員長ら家族、姻戚と親しかったとされる。そのために、現在北京で党中央規律検査委員会の調査を受け、江系幹部太子党の海外資産運用やマネーロンダリングにどう関与していたのかを聞かれていると見られる。特に、肖氏は曽慶紅氏の子息で現在オーストラリアに住む曽偉氏と関係深く、曽偉氏や曽慶紅氏の実弟慶准氏の資産増やしに協力していたと言われ、検査委はその解明を進めているもようだ。

曽偉氏関係でとりわけ注目されるのは、中国の経済誌「財経」も報じたことがある山東省の最大国有企業「魯能集団」の買収問題。同集団は電気、ガス、鉱山、不動産、金融など多くの事業を行い、738億元の資産を持つ。その大企業集団が2007年、2つの民間企業に30億元余で買収されたが、買収企業のうちの一つは明天系企業の「新時代信託」が大株主になっている。その後、魯能集団の董事会に曽偉氏が名を連ねていることが分かり、肖氏のバックに太子党が暗躍していることが浮き彫りになった。すなわち、曽偉氏と明天系はこの取引で差し引き700億元以上の国有資産を手中にしたことになる。財経誌は、王岐山規律検査委書記と深いつながりがあり、腐敗摘発情報がしばしば同誌から発せられている。すなわち、同誌が魯能集団買収“事件”を掲載したのは、検査委が曽偉氏の摘発を示唆したことにほかならない。

また、香港誌「壱週刊」は、明天系のIT関連企業「北京康海天達科技公司」が2013年1月、習近平国家主席の姉、斉橋橋とその夫家貴氏が経営支配する投資企業「CCBインターナショナル・ユアンウェイ・ファンド・マネジメント」の半分の株式を1500万元で買収し、傘下に収めたことも問題だったと指摘する。この際、明天系企業のスポークスマンはわざわざ「習近平家の投資会社が株売却を決意したのなら、こちらは損を被ったとしても惜しくも何ともない」などと語ったという。肖氏は習近平家の関係企業とつながることで、身の安全を図ったのであろうが、習氏は江沢民系幹部太子党と関係深い肖氏の買収を知り、不快感を募らせたことは間違いない。

さて、肖建華氏は今、北京での取り調べに対しどう対応しているのか。これも海外華文メディアの報道だが、当局の要求に応えて党・国家幹部と経済界との関係をペラペラと供述していると伝えられる。例えば、自身が党中央宣伝部の蒋建国副部長と結んで国内メディアの買収を図り、さらに中国人民銀行や証券監督管理委員会などの上級幹部を篭絡し、一大経済情報ネットワークを構築しようと考えていたことを暴露。そして、2015年に発生した中国株式市場の大暴落も、肖氏が利権集団と共謀して経済的混乱を起こし、習指導部を窮地に立たせる狙いから関与したとも供述しているもようだ。習近平主席の反腐敗キャンペーンによって、肖氏の主な“業務”であるマネーロンダリングがしにくくなったため、同主席に恨みを抱いたことが背景にあるようだ。

肖氏がスラスラ供述している様子は、専門紙「証券日報」の謝鎮江社長が摘発された事実からもうかがえる。2月11日の財経誌系のネットメディア「財新網」は、謝社長が規律違反で規律検査委の調査対象になったことを伝えた。2000年に創刊された證券日報は、中国の著名な「経済日報」系メディアとされていたが、いつの間にか明天集団、肖建華氏系企業が36%の株式を取得し、その経営権を確保した。そのため、明天系企業のマイナス情報は流れず、対立する企業のマイナス情報ばかりを積極的に報道していた。2015年の株式大暴落の際もオーナー肖氏の指示を受けて意図的情報を流すなどの挙に出たようで、謝社長はその責任が問われているとの見方がされている。

肖建華氏が自らの意思で大陸に入境しておらず、大陸公安当局者によって強制的に連行されたとなれば、一昨年の銅鑼湾書店、関係出版社関係者の香港からの拉致事件に次いで、再び同地の一国二制度が冒涜されたことになる。ただ、肖建華氏事件に対して香港市民はデモを行うなどの強い反発の動きを示していない。共産党内の秘密情報の拡散を嫌い、その図書などの出版差し止めを図って香港人を拉致した銅鑼湾書店事件は香港の言論、出版の自由にかかわるが、肖建華氏は所詮大陸の人であり、同氏の連行は党中央の派閥闘争の延長線上にある“出来事”と認識しているからかも知れない。ただ、香港人がこの種の連行事件に痛みを感じなくなれば、一国二制度、港人治港、50年不変の原則は徐々に損なわれ、50年を待たずに香港と大陸の垣根がなくなってしまう恐れはある。