第209回 手習いに終わったゴルフ 伊藤努

第209回 手習いに終わったゴルフ
若い時分はゴルフをしようなどと思っておらず、欧州駐在時代には誘われても丁重にお断りしていた。だが、タイのバンコクに赴任してみると、同業の記者仲間を含め、日本人ビジネスマンの多くが週末のゴルフを楽しんでおり、たびたびの誘いを断るわけにはいかなくなった。仕事仲間や大学のOBなどによるコンペが結構あり、日ごろの運動不足解消や人脈づくりなどからも、コンペに参加し、クラブを振った方がいいと考えるようになった。
日本では金持ちのスポーツだと思っていたゴルフだが、タイでは物価が安いこともあり、日本の3分の1程度の料金でプレーを楽しむことができる。また、タイに駐在する日本など外国ビジネスマンが気軽に余暇を楽しむことができるようにと、首都バンコクの近郊には多くのゴルフ場があり、利用しやすいこともゴルフを始めてからすぐに分かった。ゴルフ場の有無は現在、外国企業を誘致する新興国にとっての大事な投資環境の一つとなっている。
当時のバンコク市内は車の急増や渋滞などに伴い、排気ガスによる大気汚染が問題になっていたが、郊外に行けば空気は新鮮で、灼熱の太陽の下ながらもゴルフコースを歩き回るのは気持ちがいい。好ショットが続いてスコアが良ければ、気分も爽快となるのだが、そこは初心者の悲しさで、ボールは思うところには飛んでくれない。最初のころは、スコアよりも体を動かし、運動をすることで良しと考えることにした。

タイの名門ナワタニゴルフ場
コンペが終わった後の成績発表や懇親会も楽しい。ゴルフはそれぞれのプレーヤーの技量によってハンデをつけるスポーツなので、下手な初心者でもハンデのおかげで上位に食い込むことができる。半日、思い切り体を動かし、プレーが終わった後にシャワーを浴び、その後にコンペ参加者と一緒に飲むビールはおいしい。辛いタイ料理も栄養補給には絶品の味だ。
ゴルフが下手だと、あちこちに飛ばしたボールを追い、段差のあるコースを歩き回らなくてはならず、18ホールを回るとかなりの運動量になる。このため、バンコクの自宅に戻る車内では足がつってしまうことがしばしばだった。ゴルフの下手さ加減と日ごろの運動不足を痛感しながら、足のつりの痛さに耐えた。これが筆者の週末ゴルフの活用法だったが、ある同業他社の支局長は4年余の駐在中に、セミプロ並みの技量の持ち主になっていた。