1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第355回 朝鮮半島の専門家、伊豆見教授の最終講義 伊藤努

記事・コラム一覧

第355回 朝鮮半島の専門家、伊豆見教授の最終講義 伊藤努

第355回 朝鮮半島の専門家、伊豆見教授の最終講義 伊藤努

第355回 朝鮮半島の専門家、伊豆見教授の最終講義

朝鮮半島情勢の専門家で、NHKをはじめメディアでも発言する機会の多い静岡県立大学の伊豆見元(いずみ・はじめ)教授がこの3月で定年退官となり、それを前にして静岡市内にある同大の大教室で最終講義を行った。最終講義のタイトルは「朝鮮半島を見つめて40年」だったが、静岡県立大の開学と同時に奉職して以降の1987年以前の約10年間の院生・研究員時代を含め、1970年代半ばからほぼ40年にわたる朝鮮半島との関わりを、多くの出会いや貴重な経験などを交えながら振り返る講義となった。

伊豆見氏は一般財団法人「霞山会」との関係が深く、都心の霞ヶ関で行われる月例の午餐会での講演やアジア問題月刊誌「東亜」への寄稿も多く、素人にはなかなかうかがい知れない独裁国家・北朝鮮の政治情勢や外交・軍事戦略について、同氏の分かりやすい分析・解説に接した本コラム読者も少なくないのではないか。

伊豆見教授の最終講義

さて、最終講義では、学者として韓国、北朝鮮という同一民族の分断国家をめぐる情勢を研究対象とした理由について、自らの誕生日が第2次世界大戦の終結からまだ日が浅い朝鮮戦争が勃発した日(1950年=昭和25年=6月29日)だったという因縁に加え、国際関係論の研究対象としては日本の近隣国である南北朝鮮の動向に興味、関心を持ったことがきっかけだったことを明らかにした。また、朝鮮戦争が北朝鮮の南進によって起き、当時の冷戦状況下にあって、南北の分断国家の背後に控える米国や中国、当時のソ連といった世界の大国の代理戦争の様相を呈したことも、朝鮮半島研究の学問としての関心を倍加させたのではないかと推察する。実を言えば、筆者は学生時代から伊豆見氏の謦咳に接し、さまざまな研究会に呼んでいただくなど、公私のお付き合いも40年に及ぶ間柄にある。

最終講義には、現役の県立大生や伊豆見ゼミのOB・OGに加え、研究仲間の大学教員、新聞記者や放送記者らメディア関係者が多数、聴講に来ていたのが、異色と言えば異色だった。マスコミへの登場が多く、そのたびに肩書にある「静岡県立大学」の大学名が流れ、同大は静岡の公立大でありながら、いつしか全国的に知られるようにもなった。伊豆見教授は大学の「広告塔」の役割も果たしていたわけであり、最終講義にジャーナリストが押し掛けた背景にはそのような事情もあったのだ。

富士山を望む閑静な県立大キャンパスの国際関係学部講義棟での最終講義を終え、場所を移して懇親会が近くのレストランで開かれたが、取材で伊豆見教授にお世話になったテレビ局記者が、若い時分からのテレビキャスターとしての活躍ぶりや外務省幹部らのメッセージ、セミプロ級の音楽家の横顔の一端などを映像で紹介し、参会者を驚かせた。教え子の県立大生がこの世に生を受ける前の時代の懐かしの映像もあり、歳月は巡り、時代が確実に移っていることを実感する著名学者の最終講義の聴講経験となった。

 

タグ

全部見る