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第459回 19世紀末に活躍のオランダ人画家の名画か!? 伊藤努

第459回 19世紀末に活躍のオランダ人画家の名画か!? 伊藤努

第459回 19世紀末に活躍のオランダ人画家の名画か!?

民放の人気長寿番組に「開運なんでも鑑定団」がある。日本各地の視聴者に対して、「ご自宅に骨とう品や絵画など、ホコリをかぶったお宝はありませんか」と呼び掛け、本物の名品・名画か、あるいはその価値(市場価格)などについて、番組に出演の各分野専門家がテレビカメラの前で現物をあれこれ鑑定し、真贋を見極めるという視聴者参加型のバラエティー番組だ。古今東西の歴史の勉強になるばかりか、美術品・工芸品の由来なども知ることができ、知的好奇心をかき立てられる好番組だ。

いろいろいわく付きの「お宝」の持ち主は期待半分、不安半分で、鑑定を受ける前に自分の宝物に値段を付け、その道の大家と言える鑑定士の先生方の厳正な(?)審査結果を待つが、大体は贋作(ニセモノ)で二束三文の値段に、持ち主はガックリ肩を落とすというパターンが多い。時々はその逆もあり、何十万円、何百万円という高額の値段が付けられることもあるから、宝物がどこに転がっているか分からない。

さて、前置きが長くなったが、この人気番組のスタッフでもない筆者が最近、「非常に価値がありそうな、19世紀末に活躍したオランダ人画家に関係があると思われる絵画」の真贋、おおよその評価額をめぐって、知人のHさんから鑑定の仲介役を頼まれる機会があった。たった今記した絵画の説明文にも、「ありそうな」「・・・と思われる」と推量を意味する日本語を繰り返したように、筆者自身も当初は価値ある絵画かどうか慎重な見方をしていたのだが、知人からメールに添付された写真の絵「料理をするオランダの老婦人」(仮題)を目にし、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオランダ人画家の名前をうかがわせるかすれたサインらしい文字と併せ、最初に話を聞いた時点と比べ、判断と見方がやや傾きつつある。

知人がこの絵画を手に入れたのは、ある大手鉄鋼メーカーの海外プラント事業責任者としてインドネシアに長期出張していた数十年前のことで、出張時に知り合った同国在住の日本人から譲り受けたという。この日本人は身元も確かな人物で、第2次世界大戦後もオランダからの独立前のインドネシアに残留し、その後、現地女性と結婚し、同国でカメラマンとして活躍する傍ら、写真店を経営するなどして生計を立てていたという。

知人がインドネシア滞在中に絵画を譲り受けた経緯は省かせていただくが、持ち主だったMさんは戦争中も、絵画を肌身離さず持ち歩くなど、命に次ぐ貴重なお宝としてこの西洋絵画を大切に扱っていたと、Mさんの死後、インドネシア人女性の奥さんから聞いたそうだ。

九州出身の知人は筆者に絵画をめぐる手掛かりを探る相談を仰ぐ前に、すでに福岡県にある美術館の学芸員や九州大学の専門家にも同様の相談をしているが、決定的な手掛かりや評価が得られないまま、現在に至った。そのような経緯は全く知らずに、今年4月初め、都心の東京タワー近くにある在京オランダ大使館からの招きで、同国特産のチューリップを観賞に行ったことを絵画の持ち主の知人にメールで知らせると、早速、本人から「オランダつながりで、大使館スタッフの方に、絵画のサインにある筆跡を手掛かりに19世紀末のオランダ人画家に関する情報を何かお持ちであれば、お手数でも調べていただくようご尽力願いたい」との依頼があった。現在、筆者を仲立ちとした在京オランダ大使館スタッフ、Hさんによる照会作業が進んでいるが、果たして何か貴重な手掛かりはつかめるのか。もし、これがうまくいかなければ、人気番組の「開運なんでも鑑定団」に持ち込んでみてもいいと密かに思い始めている。



19世紀末に活躍のオランダ人画家の名画か?

 

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