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デフレ不況で深圳、上海に失業者の群れ-香港にも波及し、有名飲食店が次々に閉店 日暮高則

デフレ不況で深圳、上海に失業者の群れ-香港にも波及し、有名飲食店が次々に閉店 日暮高則

デフレ不況で深圳、上海に失業者の群れ-香港にも波及し、有名飲食店が次々に閉店

中国のデフレ不況は長引いている。経済ファンデメンタルズ(基礎条件)を見ても、国内総生産(GDP)の伸び率が今年第1四半期より第2四半期の方が下回っており、回復兆候は見えない。先端テック産業の都市・深圳や中国最大の経済都市・上海では工場の操業が止まり、農民工が街にあふれ、野宿する光景も見られる。1980年代から中国の自動車産業をリードしてきたドイツのフォルクス・ワーゲン(大衆汽車)社が撤退するという情報も流れており、外資離れを印象付けている。こうした中国の不景気風は香港にも及び、繁華街から老舗の飲茶(ヤムチャ)屋などが店を閉める動きが出始めた。「一国二制度が消えた香港に魅力はない」という見方もされているが、それにしても今年に入っての極端な景気沈滞ムードは“東洋の真珠”都市の将来に暗い影を投げかけている。

 
<国内ファンダメンタルズ>
不動産不況に端を発した内需の沈滞傾向に加えて、米トランプ政権による高関税政策の影響で輸出が落ち込み、中国経済は依然厳しい状況に置かれている。国家統計局が715日発表したところによれば、今年第2四半期(46月)のGDP成長率は対前年比5.2%増にとどまった。これは事前予測の5.1%よりは若干良い数字であるものの、第1四半期(13月)の5.4%増に比べて低い伸び。6月の小売売上高は前年同期比4.8%の増でしかなく、5月の6.4%増を大幅に下回り、年内最低の数字となった。5月は労働節、端午節の休日があり、庶民の遊興支出が増えたのに加え、自動車、電子製品の買い替えへの政府補助金もあって消費が伸びたが、6月はその効果が薄れてきた。

中国の15月の工業生産高は前年同期比6.3%増、6月単月では6.8%増と比較的高い水準にある。ただ、生産しても消費が伸びないのは、要は製品が在庫状態にあることを意味していよう。米の高関税政策によって輸出が抑制されれば、ますます「造っても売れない」状態が続くのであろうか。国家統計局が7月9日発表した6月の生産者物価指数(PPI)は前年比3.6%の減で、20237月以来最大の落ち込みとなった。これを見る限り、製造現場で好況感はない。一方、6月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.1%上昇し、5カ月ぶりにプラスとなった。

今後の見通しはどうか。ロイター通信社は自社の調査分析で、2025年第3四半期(79月)、第4四半期(1012月)のGDPの伸びをそれぞれ4.5%増、4.0%増と予想した。そして通年では4.6%増と見込んでいる。今年3月の全人代で示された中国政府の目標値は「5%前後」となっていたので、これより低くなるということだ。ロイターは来年2026年のGDPはさらに悪化し、4.2%増程度にとどまるとしている。GDP3割を占める不動産関連の低迷が続いていることが最大の原因だが、やはり米高関税政策で製造業の先行きが読めないことも大きい。

国家統計局が630日に発表した同月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7だった。前月より0.2ポイント上昇しているものの、4月から連続して50を下回っている。PMI50が景気判断の分かれ目となる。JETROPMIを構成する細かい指数ごとに分析したが、それで見ると、生産指数、新規受注指数、サプライヤー納期指数がそれぞれ51.050.250.2となり、50を超えた。一方で、原材料在庫指数、雇用指数はそれぞれ48.047.950以下となった。企業規模別では、大型企業のPMI51.2と楽観的であるのに対し、中型企業は前月から1.1ポイント上昇したものの、48.6と厳しい見方。小型企業はさらに厳しく47.3。前月から2.0ポイント低下し、前月に続いて50を下回った。

ところで、かねてからうわさされている中国経済統計の”水増し“疑惑について、米ホワイトハウスの経済顧問であるケビン・ハセット氏は714日、ネットメディア「ワシントン・オブザーバー」に対し、6月の中国税関総署のデータなどを引き合いに「中国の公式経済データにはあいまいなところが多い」との見方を示した。中国の輸出量が東南アジアや欧州向けに増えていることから、米国の高関税措置にもかかわらず、ドルベースで前年同期比5.8%増を記録し、5%という当初予想より伸びたと同総署は発表したが、これに疑義を唱えたのである。

ハセット氏は「こうしたあいまいなデータによって全世界の経済分析の信頼性も損なわれている」とも語った。これに対し、中国側は全面否定するどころか、国家統計局も「昨年の11月下旬から10チームの調査隊が地方の省市や3つの国務院の部門を調査したところ、山西、遼寧、江蘇、浙江、海南の5省、重慶特別市、寧夏回族自治区で統計の水増しが行われていた」と指摘し、米側の見方を裏付けた。地方の役人は自らの有能さを際立たせるために、往々にして数字の誇張を行うと言われてきたが、“元締め”である統計局もそれを認めたとしたら、かなり深刻である。

<都市の不景気とVW社の撤退>
先端テック企業である「ファーウェイ(華為技術)」や多くのドローン製造企業が本拠を置き、「アジアのシリコンバレー」とも呼ばれる深圳市では、今年15月期の工業生産高の伸びは3.5%にとどまり、前年同期比で8.8ポイントも下がっている。同市統計局が公表したデータによれば、固定資産投資額は9.2%の減、民間投資は11.8%も下降。輸出額も8.6%の減で、とりわけ対米輸出は12.5%の減であった。この結果、企業の損失率も4割近くに達している。李克強前総理が主張した景気を見る3つの視点(電力使用量、鉄道貨物輸送量、銀行の貸出量)のうちの一つ鉄道貨物の輸送量も同期比18.9%のダウンだったという。

この結果、国有企業、中央企業、先端テック企業でもコストカットを強いられ、従業員への給与は3分の1に削られている。いや、給与が出ていればまだいい方で、遅配、欠配もあるようで、多くの従業員は退職も余儀なくされている。米系華文メディアによれば、深圳市南山区にあり、70万平方メートルの広大な敷地を持つビル群「深圳科技園」でも空室が目立つ。「小しゃれたショッピングセンターは今、屋台や野菜売りのマーケットに変わった」との皮肉な報告もある。農民工(農村出身労働者)らが離職して、バスターミナル、高架橋の下、地下鉄の入り口などで夜を過ごす人も数多く見られるという。

中国最大の経済都市・上海は、今年第一四半期のGDP成長率は5.1%で、全国平均より低い。同市はその繁栄ぶりから国内外から多くの定住者を呼び込んできたが、2024年は外来人口が前年同期に比べて23万人減少し、初めて1000万人を割り込んだ。このため、賃貸物件の空室率が上がっている。不動産バブルのころ上海は好景気を享受、投資のための住宅物件購入や飲食店などサービス業分野での開業が後を絶たなかった。それが今では、多額の返済に窮し、物件を処分したり、店を閉鎖したりする人が続出。開いている店でも10軒のうちの8軒は経営に苦しんでいるという。

上海の外資企業と言えば、国営企業の「上海汽車(自動車)」と合弁したドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW、大衆汽車)が有名だが、その撤退のうわさが今、大きな話題になっている。VW社は、改革・開放が始まった1984年に真っ先に中国に目を付け、進出した。初期には「サンタナ」などのガソリン車を造って一世を風靡した。その後、地場企業がこぞってEV(電気自動車)への転換を図ると、これに追随し、小型EVなどを造り始めた。江蘇省南京工場は上級セダン「パサート」の主力生産拠点となり、年間36万台の生産能力を持つ。すでに大衆汽車は中国にしっかり地歩を築いた感じだったが、ブルームバーグ通信によれば、「南京工場が来年にも閉鎖される見込みだ」という。EV車では躍進著しい地場企業に勝てないということか。

<香港経済の現状>
大陸の景気悪化に伴い、香港も引きずられるように芳しくない状況に陥っている。2024年の域内総生産(GDP)は前年比2.5%増。特別区政府の通年経済見通し通りの数字と言われるが、前年2023年の3.3%増に比べると、大きく落ち込んだ。物価動向を見ると、同年のCPI伸び率は1.7%の増だった。2025年のGDP伸び率については、陳茂波財政司は「通年で23%になりそうだ」と予測し、CPI伸び率については1.8%増と見ている。チャータード銀行も「今年第1四半期のGDP伸び率が3.1%増だったので、通年で2.2%ではないか」と見込んでいる。

香港は金融、商業都市であり、住民の消費活動が域内活性化のバロメーターとなる。だが、地元メディア「経済日報」によると、今年の上半期(16月)に290軒のサービス業店舗が閉鎖に追い込まれており、このうちの約7割の200軒が飲食店であるという。香港島のオフィス街金鐘(アドミラルティ)のビルの一角にある飲茶レストラン「名都酒楼(メトロポールレストラン)」は服務員が熱々の料理をワゴンに載せ、店内を回り、客に自由に選ばせることで有名。筆者も1990年代の香港駐在時代、昼時に仲間との会食によく使った店だが、9月に閉店するという。

香港の繁華街に30以上の支店を持つこれまた有名なお粥屋「海皇粥店」も、5月に全店で営業を停止、33年の歴史に幕を閉じた。44年も営業を続けてきた喫茶・軽食のチェーン店「金装燉奶佬」は最近徐々に店舗数を減らしてきたが、529日にはとうとう最後の一店舗まで閉鎖した。このほか、名だたる海鮮レストラン、飲茶屋も相次いで店を閉めた。外資系も例外でなく、タイの有名甘味レストラン「アフター・ユー・デザート・カフェ」、日本のラーメン店「金田家」などのチェーン店も5月、6月までに店をたたんでいる。

地元メディアによれば、香港内の飲食業が振るわないのは概して価格が高いことによる。香港市民は宴会を開くときに地元でなく、隣接の大陸の都市深圳、珠海、東莞などに足を伸ばす傾向があるという。確かに、香港のセントラル、チムサッチョイ、銅鑼湾の繁華街では貸店舗の家賃が月額25万香港ドルにも達する上、従業員の平均賃金もここ3年間で月額6000香港ドルから15000香港ドルに上昇するなど経営者にとってはコスト高だ。それが商品価格に上乗せさせられるので客は逃げていき、とても商売にならないという状況になっている。

信用格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(SP)」によれば、香港の6月の購買担当者景気指数(PMI)は47.8で、景気不景気の分岐点50を大きく割り込んでいる。5月のこの数字49.0であったので、1.2ポイントも悪化。今年に入ってずっと下落傾向が続いており、今後下半期になって回復するどころか、ますます悪くなると見ている。「飲食店の閉鎖店舗は2000軒程度になるのではないか」との悲観的な見方も出ている。

<政治的圧力もあるのか>
香港サービス業の”衰退“はやはり政治的な締め付けと切り離せない。警察官僚上がりの李家超行政長官はしばしば「香港国家安全条例」の正当性を繰り返している。同条例は2020年に中国が定めた香港国家安全維持法をベースに香港の立法会(議会)が制定したもので、国家機密の窃取やスパイ行為を禁じることなどを内容としている。これによって反北京のスタンスを取る民主派の活動は封じられ、事実上「香港の自由」は消滅している。だが、李長官は主権返還から28年目を迎えた71日の記念式典で、「歴代政府が果たせなかった歴史的任務を達成し、安全な香港を作り直した」と安全条例の効果を高らかにうたい上げた。

李長官はまた、「一国二制度の下で国家の安全を堅持していく」とも述べ、鄧小平氏が提唱し、英国との主権返還交渉の中で約束した「一国二制度」への“固執”にも言及した。しかし、民主派の代表的な人物であるジミー・ライ(黎智英)氏は西側諸国の釈放要求にもかかわらず依然監獄の中だ。同氏はもともと「ジョルダーノ」というアパレルチェーン店のオーナーだったが、日刊紙「蘋果日報」を創刊、共産党独裁に反対する論陣を張り、香港の民主派による雨傘運動などを陰で支援してきた。これによって2020年、国安条例違反で逮捕されたが、その後もずっと国際的に注目され続けている。

英国の地方議会議員であるウエラ・ホブハウス女史(自民党)は410日、香港にいる息子や孫と会うため、夫とともに入境しようとしたところ、空港内で5時間にわたって尋問を受け、最終的に入境を拒否された。女史は、中国の人権侵害事案について調査を進める組織「各国議会による対中政策審査連盟(IPAC)」のメンバーであり、香港側は女史が活動を進めることを嫌ったものと見られる。明らかに、北京当局の指示を受けた対応のようで、デイビッド・ラミー外相は「一人の議員の個人的な行動への入境拒否は香港の国際的なイメージダウンになろう」と批判した。こうした政治的な圧力は確実に経済への影響に跳ね返るのであろう。

国際的な人権擁護NGOとして有名な「アムネスティー・インターナショナル」は2021年に香港の2つの支部事務所を閉め、現地での活動を停止した。2020年に北京中央の全人代で、「香港国家安全法」が成立して以来、事実上自由な活動ができなくなったというのが理由。だが、AFP通信によれば、最近、世界各地に散らばっている香港人の要請を受けて、スイスに亡命「香港支部」を設立する計画であるという。海外から引き続き香港の自由度を監視していくのが目的だ。アニュス・カラマール事務局長は「香港支部を再び立ち上げるのは、われわれの運動の強靭性を示すものだ。われわれは、口を閉じることを望まない」と語っている。

<李嘉誠、長江実業への怨念>
香港経済界の大御所、李嘉誠氏と支配下企業「長江和記実業(CKハチソンホールディングス)」が今年3月、パナマ運河の権益を米国の大手投資企業「ブラックロック」系の投資コンソーシアムに譲るという話が表面化した。中国側は台湾有事、太平洋有事があった場合、CKハチソンに指示してこの運河を閉じ、米軍艦の通航を阻止するはずだったが、権益が移譲されれば、それも不可能になる。逆に、米トランプ政権は、中米“裏庭国家”の一つであるパナマの運河権益に重大関心を示しており、ブラックロックの運河権益獲得も、陰で糸を引いていたのであろう。中国サイドは李嘉誠氏の“裏切り”に怒り心頭の様子で、共産党系メディアを使って連日、激しい批判を加えた。

香港行政区の支配下にある「廉政公署(汚職取り締まり機関)」は521日、李嘉誠氏の旗艦企業「長江実業集団」が開発を進める香港・観塘安達臣道の住宅建築プロジェクトに関して、建築基準に違反する行為があったとして10人の関係者を逮捕した。長江実業は約50億香港ドルを投じて安達臣道に6棟の住宅ビルを建築する計画だったが、公署によれば、住宅は当局に提出した図面とはかけ離れており、しかも低予算の中で鉄筋の数などが不足しているなどの不備が見られたという。そして、建築費の一部は住宅建設監督者に賄賂として流れていたとも指摘されている。

地元では、この摘発を単純に住宅建築上の瑕疵の問題とは見ていない。廉政公署がとりわけ長江実業のあら探しに出たのは、北京当局の意に反してパナマ運河権益売却に出た李嘉誠氏の「売国的なビジネス」に対する意趣返し、報復ではないかとの見方が出ているのだ。もともと大きな地震が起きにくい香港で鉄筋の質や数に対して厳しい目を向けるのは不自然であり、意趣返しと見られるのは無理もない。また、李嘉誠氏は今年5月、北京市朝陽区東四環路にある住宅園区「御翠園」内の物件の7割を安値で売り払う行動に出、中国全体の不動産価値引き下げに加担したことも北京当局の逆鱗に触れたのであろう。

なお、パナマ運河権益の移譲について、まだ決着はついていない。中国の「国家市場監督管理総局」が「CKハチソンら取引当事者が当局の審査を逃れている」との理由をつけて、国家としての承認を与えていないからだ。CKハチソンもこれまで移譲契約がされたかどうかを明らかにしていない。この問題に対しとりわけ厳しい批判を展開してきたのは香港の共産党系紙「大公報」だが、同紙は「CKハチソンが北京の警告に聞く耳を持たず、売却に突き進むならば、北京当局は必要に応じて安全保障上の法律を駆使するであろう」との脅しをかけている。一国二制度とはいえ、現在ほとんど北京の影響下にある香港をベースに居続ける李嘉誠氏、長江実業としては難しい選択が迫られている。

<香港の発展可能性>
親中国系週刊誌「亜州週刊」を読むと、香港経済発展に向けたバラ色の未来像が示されている。その一つがドローンと先端ネット技術を駆使した低空三次元空間の活用。香港には大小260個の島嶼があり、そのほとんどが無人島だが、それはコスト的に定期的な船便の運航ができないことが理由。このため、評論家の胡恩威氏は、ドローン、空中タクシーなどを使えば、有人島に替えることもできると主張する。そして、「タイのプーケットやインド洋のモルディブのように観光開発し、ハイレベルなリゾートにするほか、環境豊かな住宅地を造成することもできる」と語る。

また、胡氏は、香港島のセントラルなどのオフィス街で林立している高層ビル間の物流や、市街地とビクトリアピークやジャーディンマウンテンなどの山間部にもある高級住宅地への交通にも低層空間を有効に使ってはどうかと提案、「低空経済発展で香港がモデルになれば、アジア各地にも波及させることができる」と抱負を語った。さらに、香港でのドローン使用を進めるために、深圳を本拠とする「大疆創新科技公司(DJI)」の積極協力を受けることが必要とも進言している。香港の発展は今や、隣接都市の「アジアのシリコンバレー」頼みなのであろうか。

香港立法会の建制派政党「紫荊党」のシンクタンクである「政策研究院」の伍俊飛院長は、香港が今、中国華南地区を包含した大湾区経済圏にあることから、この地域が一体となった共通の法制度が必要との観点から「大湾区法院(裁判所)」の設立を提唱している。この地域内では人流、物流が盛んであるのに、問題が起きたときに法的に争う場所が大陸側になるか香港側になるかで違いが生じる恐れもある。その際、案件が無条件に大湾区法院に持ち込まれれば、判別の面倒がなくなるということだ。伍氏は「香港・マカオ居民の利益を守る専門委員会も作る。大湾区法院は大陸、香港両地法制の融合したものにする」と話し、香港の法制度が尊重されることを強調している。

紫荊党の提言であれば、北京当局の意向を受けた改編であることは十分考えられる。大陸の影響力が強まる香港・マカオの現状からすれば、大湾区法院の司法判断は限りなく中国の法制度の影響を受けることは間違いない。ただ、香港・マカオ居民からすれば、やはり大陸で裁かれるより、一国二制度が残る特別行政区内で裁かれる方を望む。司法の一体化によって経済上の利便性は強まるのであろうが、大陸と香港・マカオ両特別行政区との政治的な垣根は一段と低くなりそうで、それは両地住民にとって心地よいものにはならないであろう。

 

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