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第359回 国際教養大の躍進の功労者、勝又教授の退官講演 伊藤努

第359回 国際教養大の躍進の功労者、勝又教授の退官講演 伊藤努

第359回 国際教養大の躍進の功労者、勝又教授の退官講演

先だっては朝鮮半島情勢専門家のI教授の最終講義を聞くために静岡に出向いたが、3月は大学ゼミ先輩の勝又美智雄・国際教養大学教授(68)の定年に伴う最終講義ならぬ「退官講演会」を聴講するために秋田に行ってきた。秋田に行くのは今回が初めてだったが、東京から秋田新幹線で4時間とかからない。羽田と国際教養大キャンパスに隣接する秋田空港を結ぶ空の便を使えば、東京から1時間で、これを利用して秋田入りした聴講者も少なくなかったようだ。

勝又氏は生粋の学者というわけではなく、母校の東京外国語大学卒業後は長く、日本経済新聞の社会部記者や海外特派員を務めていた。英米語科出身で英語に堪能なのは、大学では年次が5年下の後輩の筆者もよく知っていたが、ロサンゼルス特派員時代には記事の取材、東京本社への送稿の傍ら、米国人の取材先などに頼まれるまま米国各地で英語の講演をこなしたという逸話を持つ、発信力も抜群のジャーナリストだった。

勝又教授の退官講演

そんな教え子の勝又氏を恩師の中嶋嶺雄先生(故人=元東京外国語大学長、元国際教養大初代理事長兼学長)はアカデミズムの世界に引き入れ、自らの懐刀として、2000年代初頭の国際教養大の開設準備段階から二人三脚で歩まれてきた。大学創設10周年を目前にして中嶋先生は2013年2月、70代半ばで急逝されてしまわれたが、先生の強い指導力で瞬く間に、秋田の公立大の同大が全国区の有力大学として名を馳せるようになったのは改めて紹介する必要はあるまい。

すべての授業・講義を英語で行い、学生に1年間の留学義務付け、24時間オープンの大学図書館といった革新的制度の導入もあって、新設の大学ながら、卒業生の就職率が抜群ということで有名になったが、地方の小さな大学の躍進の陰に、図書館長も兼務した勝又教授の尽力があったのは多くの関係者が認めるところだ。

勝又教授の専門は米国政治や日米外交論だが、秋田駅近くにある大学のサテライト施設で行われた大学主催の公開講演会では、自身の専門研究分野は封印し、①国際教養大の挑戦と成果、②秋田活性化ビジョンの提言―の二部構成で自説を展開した。国際教養大は秋田県の公立大学法人という性格もあり、聴講者には教育関係者だけでなく、地元議員やお役人、一般市民の方たちも交じっていたが、講演のテーマに秋田の活性化を取り上げたのは、定年退官を機に秋田を離れるに当たっての提言を置き土産にしたいとの思いがあったようだ。

近年、少子高齢化で地方の過疎化が急速に進む日本では、地方創生の掛け声がかまびすしいが、新聞記者出身らしい勝又教授の提言は、10年余りにわたり生活の拠点としてきた秋田への愛情も包まれた興味深い指摘がたくさんあった。次回の本欄で紹介したい。(この項、続く)

 

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