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第279回 日本の発展段階と比較しながらの外国観察法 伊藤努

第279回 日本の発展段階と比較しながらの外国観察法 伊藤努

第279回 日本の発展段階と比較しながらの外国観察法

以前、仕事の関係で欧州やアジアに駐在していた折、任地国だけでなく、周辺国にもしばしば出張する機会があったが、初めて行った国や都市、地域を訪ねた折に、日本の経済発展段階や交通機関などのインフラ整備状況と訪問先を比較するのがちょっとした楽しみになった。もちろん、十数年前に5年近く住み、その後も毎年のように取材で訪れるタイのように、首都で大都会のバンコクの中心部では高層ビルが立ち並び、先端的な高架鉄道が走るなど、発展している都市や地域がある一方、首都郊外や地方はインフラ整備が遅れて日本の昭和30年代当時を思わせる地域が大半だ。このようにある国をとっても、一概に比較できない部分はあるが、外国と日本の発展段階の比較、観察は我ながら面白い試みだと内心思っている。

幾つかの訪問国や訪ねた都市を紹介しながら、独断的な日本との発展段階比較を綴ってみたい。日本を訪れる外国人観光客は、東京など日本の各都市の清潔さや国民の公徳心の高さ、礼儀正しさなどを称賛するが、これによく似ていて、経済の発展段階も日本と同じレベルなのが、ドイツやスイスなどの西欧諸国だろう。

この両国とも工業が早くから発展する一方で、農業などその他の産業状況も日本の発展段階とはそれほど変わらない。森の散歩や山歩きが好きといったドイツ人、スイス人の休日の楽しみ方、あるいは公徳心が比較的高いといった国民性も日本人に共通するように思われる。日本国内並みの交通機関の利便性、治安の安定、食の安全、手が行き届いた自然保護といった点に魅力を感じて旅行したいという人にはお勧めの国ということになる。両国とも物価がやや高いのが難点だが。

フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、デンマークといった欧州大陸の国々や島国の英国も、それぞれ独自の伝統、文化、慣習を持ちながら住み心地のいい国造りをしているという点で、ドイツ、スイスと比べてほとんど遜色はない。

これがかつての共産圏だったポーランド、チェコをはじめ、クロアチアなど旧ユーゴスラビアといった東欧の国々となると、かつての社会主義計画経済の名残で経済発展に出遅れたためか、日本に比べると、数十年程度の発展の遅れを感じたものだ。それは逆に言うと、昭和30年代から40年代の昔の日本国内の様子を思い出させるという意味では、さまざまな点で郷愁を感じさせ、それを見聞するのもまた旅の楽しみということになる。

さて、アジアの幾つかの国だが、都市国家のシンガポールは英国の植民地だったせいもあり、南国でありながら公園や道路などがよく整備され、都市景観その他は日本レベルに十分達している。一人当たりの国民所得は日本を上回る。

これに対し、インドネシア、マレーシア、フィリピンといった東南アジアの馴染みがある国々もジャカルタなどそれぞれの首都の発展は目覚ましいものがあるものの、地方に足を伸ばせば、貧しさを含め、日本の昭和30年代前後に似た昔ながらの風景が現出する。いずれの国も観光振興に取り組んでいるので、観光地やリゾートはきれいに整備されているが、そこに至る交通機関などはまだ整備に着手した段階にとどまる。昔の日本の地方各地を見るようであり、それも一興だ。(次回に続く)

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