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第458回 マラッカは味と香の分水嶺(上)  直井謙二

第458回 マラッカは味と香の分水嶺(上)  直井謙二

第458回 マラッカは味と香の分水嶺(上)

日本では様々な調味料が売り出されているが、東南アジアでは現在も「味の素」の存在が大きい。写真はインドネシアの路線バスの広告だが、東南アジアのテレビCMにもよく登場する。原材料は国によって異なり、東南アジアの場合はキャッサバが多いようだ。一方、マラッカ海峡を越え、インド大陸では化学調味料はめったにお目にかからない。中華系の文化がマラッカより西に渡りにくかったのと同様に食文化もインドの香辛料に阻まれたようだ。

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インドネシアの路線バスの広告「味の素」

アジアを取材する記者にとって中華街の存在は大きく、かなりの辺境の地でも中華街を見つけることができれば、日本食とまではいかなくても腹を満たし心の安定も得られる。中でもマラッカの中華料理は忘れられない。マラッカの近海で獲れる海産物と、定住した華僑のおかげで料理は抜群に美味しかった。それより西では中華街を見つけることは困難だ。貿易風に乗って西に進んだ帆船はマラッカより西に進もうと思えば、半年待機し貿易風の方向が変わるのを待たなければならなかったといわれる。貿易風の方向が変わった半年後、西に進もうと思えば今度はベンガル湾を横切らなければならない。

筆者も大型船でベンガル湾を横切ったことがあるが、海は荒れ丸4日間船酔いに苦しんだ。
ベッドから起き上がれず、ベンガル湾の美しい夕日さえ撮影できなかった苦い経験がある。
頭痛で食欲がなく船に乗り合わせたフランス人の医師の診察を受けたが、医師自身も船酔いに苦しんでいた。大型のジャンク船やインドのダウ船は超えることができても華僑が利用する小型の帆船ではインドに到達することは難しかったようだ。このため中国食文化の代表である麺類や万頭などはインドではまずお目にかかれない。

マラッカで味から香りのカレーに切り替わる。インドのカレー料理は様々な香辛料が入っていて猛烈に辛い。香りのインド料理に化学調味料は必要ないようだ。

19985月インドの2度目の核実験の取材でニューデリーに入った。5月のインドは猛暑続きで気温は軽く40度を超える。レポートを撮ろうと外に出るとたちまち汗が噴き出す。ただ日本と違い猛烈に空気が乾燥しているので、噴き出した汗はすぐに蒸発し産毛をゆするのでくすぐったい。

テレビで放映されている番組はルールが理解できないクリケットとインドダンスを交えたドラマばかりだった。たまに日本の昭和30年代の時代劇が放映され、子供のころを思いだしホッとしたものだ。ホテルでの食事は毎日カレー。カレーに飽きて他の料理を探すが口に合わず結局カレーに戻るのだった。

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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