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第556回 中国雲南省をさまよう象の群れ 直井謙二

第556回 中国雲南省をさまよう象の群れ 直井謙二

第556回 中国雲南省をさまよう象の群れ

最近日本でもサルやクマが人の居住地域に入りニュースになっている。長年、猿に苦しめられた小田原ではついに駆除に乗り出すという。5月末中国の雲南省昆明の郊外に野生の象の群れが現れ、市民の安全を確保するため400人以上の地元警察が動員される事件が起きた。

野生の象は自然保護区から500キロ歩いて移動したという。保護区で繁殖した象が餌を求めて移動したという説もある。餌を捜し、昼寝をするなど自由奔放な象の振る舞いに市民も驚いた様子だった。

ドローンを使って象の移動を追跡し、人口密集地に近づかないようトラックを並べたバリケードで道路を封鎖した。その後いつの間にかニュースが途絶えたところをみると大きな被害もなく自然保護区に戻ったのだろうか。 

それから一か月後の6月末、今度はタイの中部ホアヒンで野生の象が民家の台所の壁を壊し、鼻で残飯を漁っている様子がSNSに投稿され話題となった。すぐ近くにある象の自然保護区の当局は責任を感じ、壊れた家の修理を手伝うことをツイッターで表明した。

毎日のように餌を求めてやって来るこの象は住民から「ブーンチュアイ」という愛らしい名前まで付けられているという。「チュアイ」はタイ語で助けてという意味だから、物乞いのブーンさんという意味だろうか。ホアヒンといえばシャム湾に面した有名なリゾート地だが、果物や野菜などが栽培されている場所でもある。ホアヒンのすぐ近くのプラチュアップキリカーン県でミャンマーから国境を越えて出てくる野生の象がパイナップルやバナナを食い荒らし農民が困っている様子を小欄に書いた。(小欄 第276回 タイ西部の野生の象)

この取材で野生の象は警戒心が強く人に飼いならされた象とは全く違うことが強く印象に残った。風向きを読み後ろからそっと近づいてもすぐに気が付かれ、草むらにわずかに見える象の姿をカメラに収めるだけでも大変だった。(写真)

テレビの企画としては失敗かと思われたとき、運よく2頭の子象を連れた母親象を発見した。親子の象の水浴びを物陰から2時間かけて撮影した。安全確保のため、多数のスタッフを動員し、数十機のドローンを使って象の動きを逐一観測した。

トラックで行く手を阻んだ中国雲南省昆明の象の対応に比べタイは毎日餌をもらいに来ている野良猫の扱いとあまり変わらない。突然、数十頭もの象が現れた中国と毎日やってきて名前まで付けられた野良象との差もあるが、中国雲南省とタイのホアヒン野生の象に対する対応に表れた中国とタイのお国柄の差も面白い。

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