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第558回 アフガニスタン紛争とベトナム戦争(上)直井謙二

第558回 アフガニスタン紛争とベトナム戦争(上)直井謙二

第558回 アフガニスタン紛争とベトナム戦争(上)

2021年8月中旬、アフガニスタン情勢が大きく動いた。タリバンが全土を掌握し、首都カブールから脱出するアメリカ人やアメリカに協力したアフガンニスタン人の国外脱出で空港は混乱し死者も出た。45年ほど前、アメリカ軍の撤退後2年ほどで崩壊した南ベトナムと撤退が終わらないうちに崩壊したアフガニスタンは似たような経緯をたどった。(小欄も1年ほど前に触れている。第524回ベトナム戦争化するアフガニスタン)

一方、予想以上の速さでアフガニスタン政府が崩壊したことにアメリカはショックを隠せない。トランプ前大統領はバイデン大統領が責任を取って辞任すべきだと述べたが、アメリカ軍の撤退はトランプ政権時代に決めたことだ。紛争を始めた政権の責任もある。

ブリンケン国務長官は「This is not Saigon」と語りベトナムの失敗を繰り返したという批判をかわそうとしている。だが、否定すればするほど二つのケースがよく似ていることが浮き彫りになる。

ブリンケン国務長官はベトナム戦争の目的は南ベトナムが破れベトナムが共産化されればインドシナ諸国など多くの国が共産化されるというドミノ理論にのっとり米軍を派遣したが失敗した。一方、アフガニスタンのタリバン政権はイスラムテロ組織アルカイダを保護し、結果的に2001年9月11日のニューヨークのワールドトレードセンターなどで起きた大規模なテロ攻撃に繋がった。アルカイダの首謀者のウサマ・ビンラディン容疑者を殺害するためにアフガニスタンに侵攻し、2011年10月、パキスタンでビン・ラディン氏容疑者を殺害したと語る。侵攻の目的は果たしたというわけだ。

しかし、タリバン政権が復活すれば再びイスラムテロ組織を受け入れアメリカがテロの標的になる可能性は否定できない。アメリカとの戦闘で傷ついたタリバンの遺恨は以前より強くなっている懸念もある。(写真)崩壊の過程も似ている。

北ベトナム軍は攻撃を強めながらコンツム、プレークなど南ベトナムの地方の拠点都市を陥落させ、最後に首都のサイゴンに迫り敵の国外脱出を促した。大統領官邸に残っていた政府要人は我先に国外に逃亡しようとして混乱に拍車をかけた。

アフガニスタンでもガニ大統領をはじめ、政府要人はいち早く国外に脱出した。後を追って一般市民が空港に押し寄せる混乱はサイゴン陥落と区別がつかないほどだ。混乱を避けようと3000人のアメリカ軍兵士が機能しないほどの速さだった。

 

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