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恒大集団のデフォルト危機契機に中国、不動産税を本格導入へ-今秋、住宅需要は下火に(上) 日暮高則

恒大集団のデフォルト危機契機に中国、不動産税を本格導入へ-今秋、住宅需要は下火に(上) 日暮高則

恒大集団のデフォルト危機契機に中国、不動産税を本格導入へ-今秋、住宅需要は下火に(上)

中国国内総生産(GDP)の4分の1を占めるという不動産業が苦境に陥っている。これは、党中央・政府が不動産のバブル状態に業を煮やし、金融機関に資金投入を抑えるよう求めてきたことが背景にあるほか、今秋、「恒大集团」のデフォルト(債務不履行)危機をきっかけに、大手企業の過剰負債が露見、倒産の恐れも出てきているからだ。近年、富裕層が住宅を投資や蓄財の対象とし、経済実体を離れて価格は高騰、事業はバブル化していった。その一方で、一般サラリーマンが純粋に居住用として購入を希望しても手の届かないものになったが、有効な策は打ち出せないままできた。「共同富裕」を目指す習近平指導部もこうした状況を無視できなくなり、不動産業の“健全化”に乗り出した。その手段として出てきたのは資金面の規制であり、物件所有者に新たな負担を与える「不動産税」の導入だ。同税目はこれまでさんざん議論され、一部都市ではすでに試行に入っていた。ただ、昨今の不動産市場の低迷で、本格導入に党内から反対意見も出ている。それでも党中央・政府は断固スタートさせるようだ。

<中国不動産の現状>

中国の住宅価格は今春から下落傾向にあるが、9月になって一段と顕著になった。国家統計局が10月20日に発表した「全国70都市商品住宅の販売価格変動状況」によると、今年9月現在の住宅価格は前月比で全体的に落ち込んだ。新築住宅で値上がりしたのはわずかに27都市で、前月比で19都市少なくなった。さらに中古住宅を見ると、値上がりしたのは17都市のみで、前月比で10都市減った。不動産研究機構である「克而端(CRIC)」によると、10月の新築住宅の販売額は前年同期比で32%の減となった。中国で伝統的に住宅販売の最盛期を迎えるのは、「金九」とか「銀十」とか言われるように9月、10月なのだが、今年はこの時期、恒大集団の債券デフォルト問題が出現。もともと沈滞気味であった住宅市場は、恒大問題によって取引量や販売価格を一気に下げてしまった。

 不動産市場の需給動向をもっとも反映すると言われる中古物件取引はここ7カ月ずっと前月比で取引量がマイナスとなっているが、10月も引き続き低迷した。中原地産研究センターによれば、北京の同月の中古物件取引は9340件、前年同期比で53・4%減、前月比で25・7%減となり、恒大危機の影響が大きかったことを物語った。麦田不動産によれば、北京では、85%を超す物件が前月比で売り出し価格を下げた。下げた物件の割合は9月に比べて4ポイントも増えている。地区別で見ると、同市の徳勝片区、月壇片区などの学園地区では特に下げ幅が大きく、大多数の物件が30万-40万元減の安売りをし、中には100万元も下げたところもあったという。

 経済紙「界面新聞」によれば、深圳の福田百花片区や長城大厦などの学園地区でも23の物件が売り出され、それまでの一平方メートル当たり10万4000元-11万3100元の価格が7万5000元程度に下がっている。他の不動産企業情報によれば、国城花園は300万元、南天二花園は250万元の値下げ、核電花園住宅は600万元という大幅値下げを行っている。取引量も減っており、深圳市不動産仲介協会によれば、「金九」「銀十」という中古住宅取引の活況時にかかわらず、今年9月は、前年同期に比べて8割の落ち込みで、過去12年間で初めて取引数は2000件を割った。10月も引き続き2000件を下回っている。中原研究センターによると、10月初めの国慶節7日間休日の期間、取引された中古物件はわずかに4件と、過去になかった少なさだったという。

 住宅不況は大都市の北京、深圳に限らず、全国的な傾向だ。易居不動産研究院の最新報告では、10月の主要13都市の中古住宅取引量は前年同期比で42・8%の減、前月比でも26・9%の減。今年1月-10月間の取引量は前年同期比で2・1%減少した。中指研究院のデータによれば、10月、100都市の中古住宅平均価格は一平方メートル当たり1万6000元で、前月比で0・04%の減だった。住宅価格指数は2020年6月に数字の公開が始まって以来、初めてダウンとなったという。この結果、不動産ビジネスも振るわず、中国の同策研究院のアナリストによれば、今年第3四半期に主要59の企業のうち24社の営業収入が前年同期比でマイナス、34社が純利益もダウン。17社が増収であっても減益。約73%の企業が利益を生み出す力を落としているという。

 オックスフォード大学のジョージ・マグナス研究員は英紙「ガーディアン」の中で、「中国の不動産事業は世界経済の中でもっとも重要な分野だ。その全体価値は55兆米ドルに上り、米国の2倍の規模だ」と指摘した。中国の対GDP構成比で見ると、不動産開発、建設業は、関連業種も含めると25%を占めるという。一般的に各国でこの業種がGDPに占める割合は15-20%であることからすれば、中国が突出していることが分かる。業者が資本のレバレッジを効かせて過剰投資してきた結果である。当局は金融機関に対し貸し出し規制を求めてきたが、それでもバブル状況は変わらなかった。地方政府が土地をデベロッパーに譲渡し、開発させることで地方財政の有力な資金源としてきたほか、この事業分野への介入、縮小が経済全般に与える影響が大きいとの判断もあって、当局が十分な規制に乗り出せなかった。その結果が今秋の恒大のデフォルト危機を招いた。

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