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工場には供給制限、住居地も計画停電、中国の電力不足は続くのか-豪州炭輸入がカギ(下) 日暮高則

工場には供給制限、住居地も計画停電、中国の電力不足は続くのか-豪州炭輸入がカギ(下) 日暮高則

工場には供給制限、住居地も計画停電、中国の電力不足は続くのか-豪州炭輸入がカギ(下)



<電力不足による影響>

計画停電は住居地にも及んでいるが、この措置が住民に知らされないケースもある。東北三省では突然電気が来なくなり、商業地ではエレベーターが運転途中で停止したり、住宅地では夜間の停電で照明に困ったりするケースも見られた。このため、ネット通販では蝋燭(ろうそく)の需要が急増しており、ある蝋燭取り扱い商店では普段の10倍の購入希望が来ているという。一方、悲劇も生まれている。東北三省ではこの季節、すでに暖房が必要で、石炭で暖を取っているが、電気が来ないために室内換気ができず、吉林省では一酸化炭素中毒で3人が危うく死亡寸前までになったという。混乱が起きていることについて、党機関紙「人民日報」は地方政府の対応が悪いと責任を押し付けた上、「能耗双控や拉閘限電(電力装置の大元のスイッチを切って電力使用を制限する)は今後も続くのだから、各地区は節電目標を掲げてこの状況に慣れるべきだ」と書いている。中国は来年2月に北京冬季五輪を控えており、当局は電力消費を抑えておきたいという思惑もある。

 火力の燃料になる石炭は在庫が減ったことで値上がり傾向にある。一説には、過去1年で石炭価格は3割以上もアップしたもようだ。であれば、電力料金に跳ね返ることは避けられない。中国の経済メディア「第一財経」が9月29日報じたところによると、湖南省のある発電企業幹部が「省発展改革委員会の通知を受け取った。電力料金は10月分から値上げする」と示唆したという。工場群の多い広東省や浙江省では需要が多い昼間電力料金を25%程度値上げするとの方針が示されている。ただし、これはあくまで工業用の料金であり、一般家庭向け電力料金は反発が大きいので先延ばしされたとも言われている。

 中央政府は、今後石炭価格が一定しないことから、電力料金に幅を持たせるフロート料金システムに改めることも検討しているようだ。国家発展改革委員会は10月11日に「化石燃料で発電する電力料金を市場化することに関する通知」を公布したが、それによれば、燃料の購入価格の上下動によって電力料金も変動させるが、その値上がり率、値下がり率とも現行料金の20%を限度とする、ただ、電力を大量消費する企業向けの料金はこの制限を外す-というような方向性が示されている。ラジオ・フリーアジアによれば、中国の金融専門の学者は「中国の製造業は現在、労働集約型になっており、電力供給が決定的な重要性を持つ。特に、鉄鋼業、半導体製造などは電力消費の大きな産業分野であり、石炭問題でらちが開かないと影響は大きい」と見通している。

 中国で9月から始まった電力欠乏状態は全国20の一級行政区に及んだ。特に影響が出ているのが広東省と東北三省。東北地方はこれから暖房のいる厳冬のシーズンに入るので、安定的な石炭、電力供給は欠かせない。だが、火力発電の主燃料である豪州炭輸入の見通しは立っていない。「長期的には豪州との関係を切って、ロシアやインドネシアの石炭に切り替えることも可能だ」と中国側は暗に豪州側にブラフを掛けているようだが、本音は豪州炭が必要なのであろう。電力事情が改善しないとなれば、中国当局は、経済に政治を絡ませたことの報いに、当面悩まされることになる。

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