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第513回 「男性のハツラツ」の秘訣を医学者に聞く 伊藤努

第513回 「男性のハツラツ」の秘訣を医学者に聞く 伊藤努

第513回 「男性のハツラツ」の秘訣を医学者に聞く

わが国は平均寿命が男女とも年々伸び、世界の国々の中でも高齢化社会の到来では「最先端」を走っており、それに伴って、年齢を重ねても若さや健康を少しでも保とうという「アンチエイジング」(抗加齢)の重要性が医療関係者の間で呼び掛けられている。筆者もまだ若いつもりでいても、体力面などで無理が利かない年齢に差し掛かっていると感じているそんな折、アンチエイジング医学の世界的権威の講演を聞く機会があった。

「男性のハツラツの秘訣―最先端のアンチエイジング医学」の名キャッチコピーの演題につられてか、都心にある男性だけに会員資格がある名門社交クラブの会場ホールには、年齢が50代前後から80代とみられる高齢の会員がいつもより大勢詰め掛けていた。広いホールにあるたくさんの丸テーブルに着席した会員諸氏を見渡しながら、多くの方々が、若さや健康を保つために「何か有益な情報を求めている表れなのだろう」と思いながら、美味しい昼食を取った後の講演の開始を今か今かと待っている様子が伝わってきた。

前置きが長くなったが、この興味深い演題で講演したのは都内にある私立の有名医科大で泌尿器科外科学の主任教授を務めるH博士。もともとは男性だけがかかる前立腺がんなどの専門家で、そうした診療科目から男性ホルモンが人体に与える影響や加齢との関連などについても研究を続けるようになったとのことだった。筆者にとっては専門外の最先端医学の話題なので、ここでは講演の詳細には立ち入らないが、「テストステロン」と呼ばれる男性ホルモンの分泌の多寡によって、男性の身体的能力(筋肉の形成など)や社会的行動、さらには認知機能などの老化対策にも大きな影響の差が出てくることがさまざまな研究結果から分かってきたという。

男性ホルモンのテストステロンは、人体の臓器である精巣と副腎でつくられるが、男性の成長段階では乳幼児期の1次性徴、思春期から成人になる時期の2次性徴で活発に作用することは昔から知られている。しかし、大学病院で男性の健康に関わる「メンズ・ヘルス外来」や「抗加齢医学」にも専門分野を広げたH博士の研究から、テストステロンの分泌量が多いと、狩猟やチャレンジと関連する「冒険心」、仲間や家族を大切にする「社会性」、目標達成に向けた「競争心」、何か大きな決断を迫られたときの「リスクテイク」(危険の引き受け)を高める作用として好影響が出るそうだ。

これら4つの性格、特徴を兼ね備えた男性を想像すれば、頼りがいのある活動的な男性像と重なる。これは「ハツラツ」とも言い換えることができる。今、ここでの説明の「冒険心」の部分で、狩猟という行動を紹介したが、人類は長い歴史の中で食料を手に入れるため、動物を捕まえたり、木の実や魚介類を採取したりする狩猟採取の期間があったが、H博士によれば、この長い人類史において男性は率先して危険を伴う狩猟に出向いたことなどを通じて、男としての性的特徴を強めていったのではとの仮説を紹介していた。

もちろん、世の中には「男まさりの女性」「女性ぽい男性」という人たちもたくさんおり、性別に伴う男女の性的特徴を一刀両断に切り分けることはできないが、テストステロンがいわゆる「男性らしさ」「ハツラツとした男性」という社会的行動面にも好影響を及ぼすのであれば、それを取り入れない手はない。高齢化社会の到来に伴って、社会の第一線を退いた後も男性が健康的に、かつ生き生きと生活するためには、認知機能の低下防止など老化対策にも効果がある男性ホルモンの効用に関心を持ちたいものだ。

では、テストステロンの分泌を高めるにはどうすればよいか。H博士によれば、食事の摂取は「腹八分目」にしてカロリーを制限すること(成人病の予防にも効果)のほかに、普段から気にかけて姿勢を良くすること、ストレスを極力ためないようにして睡眠を十分に取ること、日本人には摂取が少ないという亜鉛、あるいはポリフェノールが多く含まれている赤ワイン(グラス1杯が適量)や旬の野菜を食事に取り入れることなどを推奨していた。意外なところでは、野菜ではウリ類がテストステロンの分泌を高める作用が知られているとのことで、戦国時代に全国統一を果たした豊臣秀吉がその効能を知って知らずか、ウリが好物だったということもH博士から教わった。

 

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