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第26回 白岩温泉で名高い慶北の白岩山 森正哲央

第26回 白岩温泉で名高い慶北の白岩山 森正哲央

第26回 白岩温泉で名高い慶北の白岩山

韓国にも日本と同じように、山行と同時にふもとの温泉でゆっくり汗を流して寛げる山がいくつもある。今回はそんな山の一つ、慶尚北道蔚珍郡と英陽郡、盈徳郡に位置する白岩山を紹介したい。慶尚北道の海岸一帯にある山の中で最も高い白岩山(1004m)は、海岸から15キロ余りと近く、晴れていれば山頂から日本海が望める。山容はなだらかで、ピクニックをかねて家族で登るのにもお薦め。ふもとの蔚珍郡温泉面温泉里にある白岩温泉は、1000年の歴史を誇る韓国随一の名湯。1979年に国民観光地、1997年に観光特区に指定され、大型観光ホテル、保養所、旅館などが立ち並ぶ韓国有数の温泉街に発展した。

白岩温泉には、蔚珍郡平海邑からバスに乗ること20分でつく。バスターミナルをでると、「天下第一 白岩温泉」と刻まれた石碑や、温泉ゆかりの文人、徐居正(1420~1488)や李山海(1539~1609)の詩碑が目に入る。立ち並ぶ大型ホテルの後方に青くそびえるのが白岩山で、左奥のピークから、温泉里の北に位置する仙邱里へ向けて長い支尾根が緩やかに下っている。

旅館と食堂はバスターミナル前の三叉路に集まっており、旅館に泊まり、ホテルの浴場を利用するのがお奨め。ハンファリゾート白岩は、温泉街北端に建つ財閥ハンファ系列の大型ホテル。浴場は広く、湯船は熱湯と温湯の2つ。無臭透明できれいなお湯だが、地下にあり展望がないのが寂しい。一方、バスターミナル前に立つ仏閣のような外観の源湯高麗ホテルは、外光が射しこむ開放的な浴場で、プールのように広く、日本の温泉と雰囲気も似ていてとても気に入った。白岩温泉は、新羅時代に鹿を追っていた猟師が見つけたといわれる。泉温は53度で、ラドン成分と水酸化ナトリウム、フッ素などを多く含み、婦人病、動脈硬化、喘息などに良い。

登山口へはホテル街の坂を上り、白岩観光ホテル裏手にまわる。ホテル前には、1930年に日本人・矢崎音作が開業した最初の温泉施設、白岩旅館の写真付き看板があった。今回歩いたのは、モシ谷の北の尾根から登り、帰りは白岩山城を経て白岩瀑布へ下る約10キロ、5時間30分のコース。

管理小屋と登山案内板を過ぎ、最初は松林の単調な林道が続く。40分も行くと最初の分岐で、右折する本格的な登りとなる。千両墓と名が付いた土盛りした墓を過ぎ、しばらく行くと2つ目の分岐。右折してジグザクの急登をこなすと尾根にでる。指導標には、左折すると山頂、右折するとハンファリゾートとあるので左へ。ミズナラの若葉が眩しい樹林の尾根を30分も歩けばコンクリートで固めた山頂にでる。全方位の展望に、登山の疲れが一気に吹き飛ぶ。北に金蔵山(849m)、西に五十峰(827m)、南に三僧嶺(741m)がつらなり、東には緑の丘陵の彼方に海岸線がのびている。温井面の青年会が建てた頂上碑「白巖山頂上」の上で蝶が一匹、静かに休んでいた。

帰りは南の尾根を下る。山頂すぐ下の小さな岩場が白岩。クロフネツツジの群生地を通り、温泉洞との分岐をやり過ごし、山頂から40分で白岩山城の前を通る。木漏れ日の下、崩れてはいるが大小の岩が3mほどの高さに積んである。内城と外城に分かれ、全体で1600m余りにもおよぶ。新羅時代、平海丘氏の始祖とされる唐の将軍・丘大林と、長水黄氏などの始祖とされる後漢・光武帝の臣下だった黄洛が築いたといわれ、後に新羅や高麗の国王がここで、兵乱を避けた。山城が倭寇に攻撃された時、谷づたいに倭寇が忍び寄って来たのに気づかず(韓国語で「知らない」は「モルダ」)、陥落させられたことにちなんで名がついたモシ谷へと下る。

山城から1時間で樹林に囲まれた白岩瀑布つく。幅25m、高さ30mの2段瀑布で、ひんやりとした大気が気持ちよい。女性数人が滝前で涼みながら話し込んでいた。さらに20分で朝も通った最初の分岐に戻る。華やかさはないが、十分な行程と展望を得ることができ満足した。汗を流した後に浸かる温泉はまた格別で、忘れがたい。


●アクセス(バス)
・釜山東部バスターミナル~蔚珍郡平海邑 蔚珍・江陵・束草行きバスに乗車。一日8本・6時~16時30分。18100ウォン。4時間30分所要。
・蔚珍郡平海邑~白岩温泉 20分所要。1000ウォン
・白岩温泉~ソウル 一日5本・6時50分~17時30分。5時間20分所要。30500ウォン。

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