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第251回 在京8社の外信対抗野球大会のこと 伊藤努

第251回 在京8社の外信対抗野球大会のこと 伊藤努

第251回 在京8社の外信対抗野球大会のこと

在京の報道機関8社の外信部(会社によっては外報部、国際部の呼称もある)の職場でつくる草野球チームの対抗戦は長い歴史を誇る。外信部は各社で国際ニュース報道の司令塔となるセクションだが、海外特派員が日本に帰任した後、同部の記者やデスク(原稿の指示・チェック役)をすることが多い。そして、内勤の外信部で数年勤務した後に再び特派員として海外に出て行くというのがよくあるパターンだ。

恐らく半世紀以上の歴史を持つ毎年春・秋の年2回の8社外信対抗野球大会が始まったのは、海外では任地で一緒に仕事をしたのに、東京では内勤の仕事となり、顔を合わせる機会がなくなることの穴を埋めるという親睦の意味合いで始まったと先輩から聞いたことがある。全国紙や通信社という活字媒体の報道機関が中心だが、放送界からは唯一、NHKがメンバーとなっている。これら8社が親睦の野球対抗戦に参加しているのは、海外特派員や本社の外信部の陣容がほぼ同じという事情もあるようだ。

筆者自身、勤務先の通信社の外信部に配属されて以降、30年以上もこの8社対抗野球に参加してきたので、古株の一人と周囲からは見られている。草野球というのは、勝負で大きな比重を占めるいい投手と捕手のバッテリーがいることと、打撃と守備が上手な選手が数人いれば、チームの士気が上がるので、勝ち上がっていく確率は大きくなる。「ドントコイズ」という名の職場の草野球チームで長く主将などを務めてきた者としての実感である。

草野球と言っても、参加8社の対抗意識は本来の仕事と同様強い上に、トーナメント形式の試合では神宮球場所属の正式審判が必ず付くことや試合後の懇親会では負けたチームがビール代などを払うルールなので、勝負に対する執着心はどのチームも高い。勝ち負けは時の運でもあるが、長年の戦績をみると、NHK、読売新聞、共同通信、時事通信といったあたりが優勝、準優勝の回数が多い。前述したように、高校時代に投手だった野球経験者がいたりすると、そのチームはやはり強い。読売新聞チームの元エースは東北大学野球部の投手出身で、あの大魔神の佐々木主浩投手と投げ合った経験もある。

また、野球の経験はなくとも、社会人となってからのキャッチボールの取り組みやバッティングセンター通いによって上達する他社の選手も少なくない。意外だったのは、ニュース番組などで紳士的に(!?)国際ニュースの背景を伝えるNHKの記者がこの8社対抗野球になると、闘志を燃やして、相手チームに立ち向かっていたことだ。

NHKの夜9時台のニュース番組で花形のキャスターを務める大越健介氏はNHK国際部チームのエースでもある(外信部OBも参加資格がある)。大越氏は、東大野球部時代に8勝を上げたエースだったことは知る人ぞ知る話だが、往年の球威は衰えたとはいえ、投球術は健在だ。氏が最近著した「ニュースキャスター」という新書には、小さいころからの野球体験が綴られている。野球を続けたことが後の記者、キャスターの仕事にも役立っているという話がうれしい。筆者も全く同感だからだ。


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