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第163回 羨ましい「3人組」の交友 伊藤努

第163回 羨ましい「3人組」の交友 伊藤努

第163回 羨ましい「3人組」の交友

仕事柄、いろいろな分野の方々とお会いするが、大学のゼミ同窓として50年以上にわたり交友が続く「3人組」と仕事で接する珍しいケースもある。この3人組のリーダー格は、製鉄会社出身で今は経営コンサルタント会社の代表を務めるH氏で、あとのお二人は国際派弁護士のT氏、外務省OBで大使経験者のA氏。共通点は、同じゼミで国際法を専攻したことと、3人が大学卒業時にそろって難関の外交官試験を受け、リーダー格のH氏を除くTAの両氏が外交官になったエリートぞろいという点だ。学生時代にそれほど勉強に打ち込まなかった様子のH氏も、第一志望の外務省入りこそかなわなかったものの、「鉄は国家なり」といわれた時代に最大手の鉄鋼メーカーに入社し、海外営業畑で活躍した経歴を見れば、エリート外交官と遜色はない。

蛇足ながら、現役で外交官試験を突破したT氏は3人の中では最も秀才だった由だが、外務省に12年ほど在籍して、弁護士に転身した。外交官の肌が合わなかったのかもしれない。今は、親友であるH氏の会社の顧問弁護士などを務めながら、公私にわたり密な付き合いが続く。大使ポストを何度か経験し、外務省を務め上げたA氏を含む3人組の交友が続く理由は、3人の性格がそれぞれ違い、相手の長所、短所を認め合って、その人間関係が学生時代と変わらないためではないかと推測する。

「A元大使の叙勲を祝い3人組が一席設けた」
写真右からT氏、H氏、A氏

筆者が仕事の上で、H氏の面識を得たのは勤務先のベトナム事業での共同パートナーになったためで、契約交渉の折などには、国際派弁護士のT氏が助け舟を出すといった具合に、この二人が絶妙のコンビを組んでいたからである。仕事上での関係を深めていくうちに、筆者がバンコク駐在時代に取材でお世話になった当時のA大使が二人の親友であることも分かり、世間の狭さを改めて知った。

最近、久しぶりにこの3人組と歓談する機会があり、なぜこのように長い交友が続いているのか、好奇心もあって尋ねてみた。70代半ばながら年齢より若く見える3人の話を総合すると、在籍する京都の大学図書館にH氏がいつも女子学生を連れていて、残りの二人がそれを羨ましがって女子学生連れのH氏に近づいていたのがきっかけではないかという。こんな昔話を聞き、古き良き時代の学生の交友関係の1つの典型を見た気がした。自由な雰囲気の国際法ゼミの恩師をいまだに慕う思いを共有していることも話の端々からうかがえた。

大学の卒業後も、3人の個性が人生の折々、絶妙に化学反応しながら大きな幹になった老木の林の崇高さのようなものを、若輩の筆者は歓談の席で感じた。
 

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