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第370回 ベトナム統一列車の旅  直井謙二

第370回 ベトナム統一列車の旅  直井謙二

第370回 ベトナム統一列車の旅

ベトナムにはベトナム戦争後南北ベトナムが統一されたことを記念して「統一」(トンニャット)という名前を冠した名称が多い。ハノイにある老舗の高級ホテルはトンニャットホテル。南北に走る幹線鉄道もトンニャット鉄道だ。

80年代の中ごろ首都ハノイから南の商業都市ホーチミンまで統一鉄道に乗って旅する企画を立て実情を調べた。ドイモイ前のベトナムの経済は瀕死の重体でインフラも悪く、列車のスケジュールも守られずハノイから出た列車はいつホーチミンに到着するか分からない。忙しい現役の特派員の身には時間的に到底許されないとあきらめた。

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90年代にハノイから20キロほど試乗してみたことがある。先頭にはディーゼル車は貨物用で緑色に塗られた客車はいかにも古臭い。客車の窓には金網が張られていた。列車に向かって投石が流行っていて窓ガラスが割れることを防ぐためだという。中越戦争の影響で流通を担っていた華僑がベトナムから脱出、全国的に物不足がまん延した。投石は列車に乗って買い出しに行ける富裕層への妬みだ。

ハノイ駅は乗客でごった返し、切符を買うにも列をつくらない。窓口に札束を突っ込んで大声で駅員に切符を注文している。日本人には到底切符を手に入れることは出来そうもない。同行したベトナム人の友人が窓口に突進して切符を手に入れてくれた。当然、列車の中は満員だ。

ホーチミンまで向かう列車は寝台車だった。ワンボックス6人用で3段のベッドが2つ向かい合わせになっていた。寝台切符を買えなかった乗客もいて狭い通路やトイレの前にしゃがみこんでいた。ゴザを引いて弁当を食べている乗客もいた。

去年の秋、四半世紀ぶりに中部の都市ダナンからホーチミンまで16時間かけて統一列車に乗ってみた。列車はカラフルになり内装もきれいになっていたが、狭い寝台や通路など基本的な構造は変わっていなかった。

ベトナム戦争以来続いていた乗客の移動許可証制度は廃止され、狭い通路を利用して車内販売が行われるなどサービスの向上が見られた。(写真)以前は見られなかったフランスなど欧米人の観光客も目立った。大柄の欧米人は狭い寝台や通路で身をもてあまし、低い天井に頭をぶつけて悲鳴声を上げていた。

列車はほぼ時刻表通りホーチミンに到着した。経済成長著しいベトナムだが、高速道路などに比べ鉄道の整備は遅れている。日本が高速鉄道を売り込むチャンスだ。

写真1:中部の都市ダナンからホーチミンまで統一列車。狭い通路を利用して車内販売。

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