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第543回 高齢の知人の著書に5年後の「朗報」 伊藤努

第543回 高齢の知人の著書に5年後の「朗報」 伊藤努

第543回 高齢の知人の著書に5年後の「朗報」

5年余り前に出版・刊行された知人のベトナムの少数民族紹介の著書に対して、ほぼ偶然のような経緯で「優良選定図書」の朗報が著者のご本人に最近届き、編集者として伴走した筆者にとってもうれしい出来事となった。現在、御年84歳の元企業コンサルタントの日髙敏夫氏は今回の朗報を励みにして、本人いわく「まだ書き足らない」という現地取材を盛り込んだ2冊目の刊行と、優良選定図書のお墨付きを得た前著のベトナム語版の出版を計画しており、年齢が離れた編集協力者の筆者への注文や期待が増えているようで、定年後人生で予想もしなかった編集者生活に追われ始めている。

日本人にとっても親しみのある東南アジアの有力国ベトナムに居住する多くの少数民族の生活や慣習、伝統・文化の実情を現地で丹念に取材した報告記「ベトナムに魅せられて―民族が織りなす文化と人間模様」(桜美林大学北東アジア研究所刊)については、 本欄でも紹介したことがあるが(2015年9月4日付の第331回「敬愛する友人の連載コラム出版のお手伝い」)、2015年11月の出版からそれほど日がたたない頃に、発行元責任者のK氏から、公益財団法人「日本図書館協会」の優良選定図書に選ばれたとの連絡を受け、関係者一同、大いに喜んだことを記憶している。しかし、メールでの連絡を受けた当時は、著者の日髙氏も編集者の筆者も日々の仕事の多忙に紛れて、優良選定図書事業を主宰する財団法人からの直接の確認作業を怠ってしまい、それを証明する確認書類を入手できない状態が長く続いていた。

そうこうするうちに、日髙氏の著書の出版を強く後押ししてくれた大学教授のK氏が闘病の末に他界され、前記の「日本図書館協会」が諸般の事情により2016年3月を最後に優良選定図書の事業を終結したこともあって、同図書に選定された手掛かりを探ることが難しくなってしまったのである。

著者の日髙氏から折に触れ、せっかく頂戴できたと連絡のあった図書館協会らしき組織からの優良選定図書の認定書のような書類があれば、ぜひとも入手したいとの相談を受けていたが、時間の経過とともにK氏からの連絡がおぼろげの記憶になっていたのに加え、正式の財団法人の名称も失念していたため、確認作業は困難を極めた。

それが一転して確認作業ができたのは、新型コロナ禍に伴う外出自粛要請もあって、筆者が保有する仕事用パソコンに収納されている大量の過去メールや原稿・翻訳の類の検索を少しずつ進めていたところ、K氏からの最初の連絡メールを発見。優良選定図書に選んだ団体が「日本図書館協会」と特定できたためだった。K氏からメールでその連絡を受けたことも、5年前のことなので、すでに忘却の彼方にあったのだが、こうして過去メールを検索作業で再現することによって、当時の記憶と記録が見事に蘇ったのである。

この後は、インターネットで日本図書館協会のサイトにアクセスして連絡先を確認し、担当者に上記のいきさつを電話で説明すると、数日後に日髙氏の著書の優良図書選定の確認書類が郵送で送付されてきた。著者にとっても、編集者の筆者にとっても5年ぶりの朗報を目の当たりにした気持ちだが、元企業戦士でベトナムという国と国民・民族に深い愛情を注ぐ日髙氏を慕う周囲の仲間たちがあの江戸時代の天下の副将軍の「黄門さま」と呼ぶご本人は、今回の朗報を励みに、5年前の著著のベトナム語版の刊行と、まだやり残したというベトナム少数民族をテーマにした続編の執筆と出版に弾みをつけたいと意気込んでおられる。

「旅は道連れ」、あるいは「乗りかかった船」といったわが国の昔からの俗な例えではないが、高齢ながら意気軒昂の黄門さまのお供ならぬ、伴走をいましばらく続けなくてはならないようだ。

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