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第529回 「おまけ付き」のある在宅勤務 伊藤努

第529回 「おまけ付き」のある在宅勤務 伊藤努

第529回 「おまけ付き」のある在宅勤務

前回の本欄では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年の夏休みなどの大きな変化を近隣の子供たちの過ごし方を例に挙げて紹介したが、筆者も新型コロナ禍における「新しい生活様式」の余波の直撃を受けることになってしまった。後々に語り継がれるであろう2020年夏の出来事ということで、私事ながら簡単に紹介したい。

新型コロナの感染拡大により、いわゆる「3密」(密集・密接・密閉の空間)の回避をはじめとして、外出自粛や夜の会合取りやめ、マスクの着用などさまざまな社会生活上の変化があったが、デジタル化社会を迎えて企業で働く従業員に対するテレワークあるいはリモートワークと呼ばれる在宅勤務の呼び掛けもその一つだろう。

社会の第一線を退いている筆者には、在宅勤務などは全く関係のないことなのだが、メディア業界で働く30代の長女が5月以降は勤務先の指示で在宅勤務を命じられ、その後、折に触れて会社に近い都内の自宅ではなく、両親が住む三多摩地域の実家(集合住宅)での「在宅勤務」を始めるようになったのである。ここまでは、あるいは世間でよくある在宅勤務の変型と言えるかもしれないが、長女の実家での在宅勤務には小型犬の愛犬も一緒に来ており、週末の休暇を使っての1泊か2泊の滞在ならともかく、これが1週間、2週間という長丁場になることが相次いであり、迎える側の当方も当惑してしまうことが多々ある。

長女の仕事の勤務時間は不規則で、早朝からのこともあれば、夕方から深夜まで、あるいは徹夜勤務ということもあり、在宅勤務が始まる前の通常勤務では、飼い犬の雌のマルティーズ(2歳)も飼い主の出勤に伴う外出に合わせて普段は長女の自宅マンションで留守番の時間が長かった。勤務時間が不規則な仕事に従事している上に、一人暮らしの身で小型犬を飼うことは「ちょっと無謀では…」と正直な感想を伝えたことはあったが、飼い主に忠実な犬を飼って、生活上の癒しをもらえるといったメリットがあることも承知しており、2年前に飼い始めて以降は、可能な限りのサポートをしてきた。

筆者も子供時代に柴犬の雑種を家で飼っていたことがあり、愛犬の可愛らしさや散歩の楽しさは知っているつもりだが、座敷犬ともいわれる小型犬の生態や室内での過ごし方については知らないことが多く、長女が自宅に飼い犬のマルティ-ズを時々、一緒に連れて泊まり込んだりすると、犬種の違いや犬の扱いに戸惑うというのが正直な感想だ。

長女に新型コロナ禍の感染拡大に伴う在宅勤務が始まって以降、幾度となく、愛犬という「おまけ付き」で実家での在宅勤務を繰り返している理由を聞くと、「在宅勤務だと、自宅でも(両親が住む)実家でも全く変わりがない上に、飼い犬も両親になつき、留守番続きが多かった寂しさから解放させることができるんだよ」とあっけらかんと話していた。両親の日常の暮らしに迷惑をかけているといった意識はほとんどないようで、子育てをとっくに卒業した母親が愛犬の世話をする楽しみも聞いているためか、在宅勤務の変型をむしろ好都合と考えているらしい。

実家でも相変わらず、勤務時間が不規則な在宅勤務の影響で愛犬もいつ寝たらいいのか分からないような表情で、狭い集合住宅で暮らす3人の間を忙しそうに行ったり来たりしている。ただ、1日に1回ある外の散歩の担当は筆者と分かっているようで、暑さが少し和らぐ夕方になると、散歩の催促が始まる。とんだ「新しい生活様式」の影響に巻き込まれた愛犬との共同生活だが、散歩などは体を動かす運動の機会と思うことにして、若くて活発な小犬のリードに引かれながら、ここは自宅近くの自然観察にも有効活用した方が良さそうだ。

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