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第528回 新型コロナ感染症とバッタの被害  直井謙二

第528回 新型コロナ感染症とバッタの被害  直井謙二

第528回 新型コロナ感染症とバッタの被害

世界的な大問題となっている新型コロナウイルス感染症のニュースの陰に隠れているが、大型のバッタ、サバクトビバッタの被害が国境を越えて広がりFOA国連食糧農業機関は危機感を強めている。新型コロナウイルスが中国の武漢の市場で感染が広まった今年の初め頃はあまり注目されなかったが、わずか半年で世界中で感染者が1,000万人死者は50万人を超え、最終的な感染者と死者数は見当もつかない。

一方、バッタの被害も今年の初めオマーンの砂漠地帯から始まったとされ、最初はほとんどニュースにならなかった。その後被害はイランやイエメンそれにエチオピアやケニアに広がりさらにパキスタンなど南西アジアを超えてインドや中国にまで及ぼうとしている。

小麦などが食べつくされ世界的な食糧危機が懸念される。大量発生の原因は地球温暖化に伴う気温と湿度の上昇が考えられるが、今年は新型コロナウイルスの影響で国境を越えて駆除をおこなう専門家を派遣できないなど国際的協力が進まない。

タイとフィリピンでイナゴによる農作物の被害を取材した。タイでは農産物の値下がりで逆にイナゴを食料の素材として売ることに切り替えたことはすでに書いた(小欄第198回イナゴは貴重な蛋白源)フィリピンでは1991年6月、ルソン島のピナツボ火山が噴火し、大量の火山灰に雨季の豪雨が降り注ぎ泥流となって流れだした。被害を免れた農村部をイナゴの大群が襲った。マニラの北120キロ、タルラック州の稲作地帯を取材した。順調に育った稲の苗の上を大量のイナゴが飛来している。雨季独特の厚い雨雲に覆われた空にイナゴが覆いかぶさり夕方のように暗くなる。農民が棒の先に布を取り付け振り回してイナゴを落とそうとしているが、完全に焼け石に水だ。(写真)農民も半分やけになって棒をただ振り回しているだけのようだ。

調査に来ていた農事研究者によると火山灰の泥流は温度湿度とも高くイナゴの羽化に絶好の環境を与えているという。恐ろしいのは飛んでいるイナゴより羽化したばかりのイナゴや卵だ。一部で地面が黒い絨毯のようになっていて、よく見ると羽化した小さなイナゴがぎっしりと密集し跳ねている。さらに白い泥流を手で掘っただけで黄色いイナゴの卵の塊が出てきた。

フィリピンではイナゴの被害は10年に一度ほど起きるが、この年はピナツボ火山の噴火と大雨が重なり被害が拡大したといわれている。

新型コロナウイルスの拡大とほぼ同時に起きた地球温暖化によるバッタの被害に注目する必要がある。

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