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第500回 高齢化対策を急ぐ中国  直井謙二

第500回 高齢化対策を急ぐ中国  直井謙二

第500回 高齢化対策を急ぐ中国

今年の8月末、中日友好協会の招待で訪中した日本のジャーナリストグループに加わり、中国の様々な団体と意見交換をおこなった。米中貿易摩擦や中国本土への犯人引き渡しを可能にする逃亡犯条例で揺れる香港について忌憚のない討論が続き時に双方が異論をたたかわせた。中国側は当然のように国益に沿った意見が多く、日本のジャーナリストグループと大きく意見の食い違いを見せた。

そのような中ですでに一線を退いた中国側の元外交官らが組織する中国国際友人研究会との意見交換は日中友好をベースに共通の問題を話し合うことが出来た。冒頭、政府や市民交流の歴史を振り返りながら、日中関係の友好が保たれるように願っているとの呉従勇副会長の挨拶があった。

中国側は中国の経済成長は日本の利益になり日本の経済成長は中国の利益になる。両国はパートナーとして進むべきだとの意見も出た。その後、日中の観光客や高齢者問題など両国共通の話題について話し合いが始まった。中国側は中国からは若者を中心に年間800万人が訪日するのに対し、中国を訪れる日本人は260万人に留まり、日本の学生の訪中に対して教育委員会や親が治安や大気汚染などを理由に取りやめるよう説得しているという情報があると指摘された。

訪中するたびに目の当たりにする排気ガスやPM2.5などの問題が頭に浮かんだが、今回は青空が見え何十年ぶりかで北京秋天の予感を感じた。治安も問題なく日本のマスコミが中国の既成概念を変える努力が足りないと感じたほどだった。

中国側が特に興味を示したのは両国共通の問題である高齢化社会への対応のことだった。中国も日本ほどではないが高齢化が進み、65歳以上の高齢者は1億5千万人にのぼるという。中国側は対策の遅れを懸念していて高齢化対策先進国の日本に学びたいと発言した。そして、中国の高齢者の経済力はワインの樽の様だと表現した。つまり一部の富裕層が上にいて大多数が中間層さらに下に一部の貧困層で構成されているという。対策として富裕層は自力で中間層は自治体や社会がサポートし、貧困層は政府が援助すべきだとした。

介護施設などハード面でも日本より遅れているが、問題は介護のソフト面だ。中国では高齢者への心のケアやリハビリはほとんど行われず、介護施設は寝食を与えるだけだという。日本では寝たきりになった高齢者にも再び自力で歩行ができるようリハビリを施すなど高齢者の生活の質の向上に努めている。

介護士が不足している日本に中国の研修生を送り込み、介護の補助をしながら研修する必要があると強調した。高齢化対策は両国にとって待ったなしだ。

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