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第502回 一帯一路の要衝、中国・重慶の交通網  直井謙二

第502回 一帯一路の要衝、中国・重慶の交通網  直井謙二

第502回 一帯一路の要衝、中国・重慶の交通網

陸路の発達で鉄道や川を利用した船舶による輸送が衰退している。東京やバンコクなどでも鉄道や水路を利用した貨物の量は下降気味だ。ところが一帯一路の要衝として中央政府の直轄に指定された内陸部の中国・重慶は川を利用した船舶の運搬や改良を加えた鉄道による輸送が盛んだ。

かつて旧日本軍の攻撃を受け国民党政府が南京から武漢へさらに重慶へと首都を移した歴史がある。武漢まで制圧した旧日本軍も長江と嘉陵江の合流点に位置し山と川に挟まれた重慶では陸上の攻撃を断念し、空爆を繰り返し多数の市民を殺害した。首都を重慶に移したことで戦争中から工場やインフラが整備され、一帯一路の拠点になったという。


内陸部の辺境の地であるが、水路や鉄道それに高速道路を総合的に利用し、重慶は3,000万都市に膨らんでいる。長江の岸壁には荷積み用の大型クレーンが設置されていてその横に交通網の概念図が展示されていた。(写真)

中央アジアやヨーロッパには鉄道で日本や韓国などには長江の水路を使って上海まで運び外洋貨物船に乗せる。東南アジアなどには高速道路や列車で広西・欽州港まで運び貨物船に引き継ぐという概念図だ。

旧日本軍の攻撃を阻んだ大河や山は皮肉なことに道路の発展を妨げている。市内の道路はトンネルや橋が多く交通渋滞は北京を越えるほどだ。数か月前、新華社が「陸海新ルート」を利用しコンテナを運ぶニュースを伝えた。23個のコンテナには自動車部品や電子部品が積まれ欽州港まで鉄道で運び、コンテナを貨物船に積んでシンガポールやベトナムに輸送した。

一方、中央アジアやヨーロッパに向けた鉄道は軌間が違うため荷物を別の列車に移さなければならない。中越間の国際鉄道は両国間の軌間の差を克服するため線路が3本で構成されていることはすでに書いた。(小欄第482回、第2回米朝首脳会談とベトナム)同様に軌間の問題を克服できればコンテナを移すことなく双方の列車が行き交うことが出来る。

米中貿易戦争が長引くであろうと予想される中、一帯一路構想が加速しそうだ。夏気温が40度に達する重慶では市民が外に出てくるのは夜8時ごろからだ。特に川風が涼しい舟遊びは人気だ。巨大なイルミネーションが施された高層ビル群を眺めながら遊覧船の甲板で冷えたビールを飲めば昼の暑さを忘れる。宿泊設備を備えた大型のフェリーも行き交うが、貨物船の姿がない。水路の利用は始まったばかりのようだ。

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