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日中雪解けと中国映画祭と『芳華』(中) 戸張東夫

日中雪解けと中国映画祭と『芳華』(中) 戸張東夫

<日中国交正常化45周年記念中国映画祭に期待>

そういえばここ数年中国映画をあまり観ることができなかったという印象がある。中国映画の輸入量を調べたわけではないし、筆者が見逃した映画があるかも知れないが全体としてわが国でみることのできる中国映画の数が減少しているような気がしてならない。「近年、日本での中国映画ブームが下火になった感は否めない。中国映画が日本へ輸入されなくなった要因の一つは、その価格が高騰したことにあるように思われる。」日中の映画交流に詳しい劉文兵氏はこういう。(劉文兵「日中映画交流の歴史」、『日中平和友好条約締結40周年記念 映画上映会』記念冊子、公益財団法人ユニジャパン、2018年2月)



しかし筆者はこれもまた尖閣諸島をめぐる日中両国の対立の過程で中国が対日圧力の一環として日中間の映画交流を制限する行政命令とか指示などの〝報復措置〟をひそかに講じたのが原因だと考えている。中国における日本映画についても似たような傾向が報じられている。

中国で上映される邦画はここ数年日中関係悪化の影響もあり、せいぜい年に2-3本といったところだった。ところが日中両国が関係改善の方向に転じた2016年を機に一気に増えたのである。この年突然11本にはねあがったのである。この中に含まれていた同年わが国の興行成績トップのアニメ『君の名は。』(235億6000万円―2017年1月現在)が中国でも大ヒットしたことがわが国でも話題になったのを覚えておられるファンもおられるであろう。さらに翌2017年にはあわせて9本、加えて日中合作の陳凱歌監督『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎(妖猫伝)』が公開されるという盛況だった。

日中関係がこんな具合に両国の映画と結びついている。困ったことである。だが両国関係がこうして好転の方向に進みだしたのだから、これまでよりたくさんの中国映画を観ることができるに違いない。中国語圏の映画の大ファンである筆者がそんな期待を抱き始めた矢先に開かれたのが日中国交正常化45周年記念中国映画祭「電影2018」である。わが国の国際交流基金などの主催で今年(2018年)3月8日から14日にかけて東京、大阪、名古屋で未公開作品など最新作を10本順次上映するという。あわてて東京会場のTOHOシネマズ 六本木ヒルズに赴き前売り券を購入した。こういう情報に筆者は疎いのでいつも失敗するのだが今回は映画祭開催に気が付くのが早かったのがよかったのだ。だが10本の中国映画を東京、大阪,名古屋の三か所でそれぞれ一回だけ上映するというのはファンの立場からすればいささか不親切な気がする。これではごくごく限られた数のファンしか観ることができないではないか。関係者にはそのあたりも考えて欲しい。とはいえ、作品の一部はこの後国内の配給業者によって公開されることになるのであろう。そちらも期待したいものである。

*「電影2018」で上映された10作品は以下のとおり。
1.馮小剛監督『芳華-Youth―(芳華)』
2.韓傑監督『ナミヤ雑貨店の奇跡(解忧雑貨店)』
3.李宵峰監督『追跡(追・踪)』
4.忻鈺坤監督『無言の激昂(暴裂無言)』
5.大鵬監督『シティ・オブ・ロック(縫紉機楽隊)』
6.袁和平監督『奇門遁甲』
7.鵬飛監督『ライスフラワーの香り(米花之味)』
8.羅正雨監督『無敵名人の最強食譜(絶世高手)』
9.韓寒監督『乗風波浪~あの頃のあなたを今想う(乗風波浪)』
10.呉有音監督『南極の恋(南極之恋)』
 

写真1:厳しい訓練に汗を流す文工団の団員。『芳華』より。
(c)Huayi Brothers Pictures Limited



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