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第18回 味わい深い旌善郡の鎮山 加里旺山 森正哲央

第18回 味わい深い旌善郡の鎮山 加里旺山 森正哲央

第18回 味わい深い旌善郡の鎮山 加里旺山

韓国で9番目に高い加里旺山は、アリランで有名な旌善の鎮山で、最高峰の上峰(1,560m)ほか、周囲には中峰(1,433m)、下峰(1,380m)、青玉山(1,256m)、中旺山(1,376m)など高峰がつらなる。太白山脈の主稜をなす、なだらかな山容をした静かで味わい深い山の一つで、旌善の街を流れる五台川と朝陽江の水源ともなっているが、実は今、その姿を大きく変えようとしている。2018年平昌冬季五輪の舞台となるスキー場の造成が進んでいるためだ。整備されつつあるのは、下峰から旌善郡北坪面宿岩里へと下る約3キロの山腹で、加里旺山は高麗人参をはじめ薬草や山菜が豊富で、「山林遺伝資源保護林」にも指定されていたことから、今回の開発には反対の声も大きい。手付かずの自然が残る緑豊かな山だっただけに、どう変わってしまうのか心配でもある。

かつて貊国の葛王が兵乱を避け城を築いたことから、葛王山と呼ばれたのが名前の由来とされる。上峰の広い頂、望雲台からは360度の大展望が広がり、天気に恵まれれば日本海が見える。南東麓の旌善郡檜洞里か、北の北坪面から登るのが一般的な登山コースだが、今回は平昌郡大和面のカピョン洞から中旺山へ登り、上峰まで縦走、檜洞里に下山した。

江原道平昌郡龍坪面の長坪バスターミナルからカピョン洞行きのバスに乗車して35分、小学校そばの終点で降りると、青々とした山並みが目前に迫る。登山口は停留所からさらに約35分あり、田舎道をのんびり歩く。舗装道をゆるやかに上っていき、三叉路で右折、小川を渡ると登山口にでる。足をのばす人が多くないのか、山道は薄暗く荒れ気味。蜘蛛の巣を掃い、枝に結んである布やビニールテープなど目印を探しながら進む。1時間半ほどで尾根にでると、ひときわ明るく感じる。さらにひと登りで、ヘリポートになっている広い山頂の中旺山についた。樹林越しだが周囲が見渡せる。これから向かう上峰が東に頭をのぞかせていた。

中旺山からは馬項峙十字路へ一度急下降する。四方からの林道が交差する広場となっており、プレハブ小屋、休憩用の縁台があった。馬項峙から再び山道に入るとすぐ地方有形文化財に指定されている「江陵府蔘山封標」が立っている。李朝時代、一般人の立ち入りを禁じ、高麗山参を保護、採取する目的で建てられた石碑だ。十字路から先はよく踏まれた道で急に歩きやい。平昌郡と旌善郡の郡境をなす尾根には、カシワ、オノオレカンバが色づき、ナナカマドの実がひときわ赤い。馬項峙から登ること1時間余りで、馬項峙三叉路を通過。檜洞里へはここから下るが、その前に加里旺山の山頂まで往復する。下山してきた年配の男性グループとすれ違う。山中で出会った最初で最後の登山者だった。 

山頂近くは潅木帯で、だんだん視界もあけ、高原漫歩の雰囲気が味わえる。藪からカサカサ音がするので覗くとハリネズミがいた。三叉路から20分でこんもりと丸い上峰の山頂、望雲台につく。視界を遮るものはなく、晴れ渡った青空がひときわ広い。北の五台山、桂芳山、西の白徳山、東の青玉山、さらに遠くまで山並みがつづき、山座同定が楽しめる。

先ほどの馬項峙三叉路まで戻り、尾根道と別れて魚隠谷の檜洞渓谷を下る。魚隠谷の名は、伝説上の大蛇イムギ(蛟龍)に似た岩が谷の入口にあり、イムギを怖れて魚が隠れ住むことからついた。一帯には1950年代まで10戸余りの火田民が暮らしていたそうだ。イワナの一種、熱目魚も生息している。急いだこともあり約2時間余りで山林庁が運営する加里旺山自然休養林についた。休養林から先は車道となり20分でバス亭。旌善の街まではさらにバスで20分。朝陽江に架かる旌善第一橋を渡り街に入ると、ちょうど街では「旌善アリラン祭」が開かれていた。

●アクセス(バス)
・長坪~カピョン 1日4本。8時40分~17時25分
・檜洞里~旌善 1日7本。20分所要。7時50分~20時25分
・旌善~檜洞里 1日8本。20分所要。6時20分~20時

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