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第19回 気軽に登れる韓国5番目の高峰 桂芳山 森正哲央

第19回 気軽に登れる韓国5番目の高峰 桂芳山 森正哲央

第19回 気軽に登れる韓国5番目の高峰 桂芳山

今回は、漢拏山、智異山、雪岳山、徳裕山に続く韓国で5番目の高峰ながら、気軽に登れる緩やかな桂芳山(1,577m)を紹介したい。桂芳山は江原道平昌郡と洪川郡の郡境に位置し、車で越えることができる韓国で最も高い峠、雲頭嶺(1,089m)から1時間40分余りで山頂に立てるとあって人気がある。桂芳山の一部は五台山国立公園に属し、東の黄柄山(1,407m)や五台山(1,563m)、北の芳台山(1,444m)などとともに太白山脈の主稜をなしている。交通の便も良く、南には嶺東高速道路が走り、珍富ICから雲頭嶺までは20分余りと近い。雲頭嶺行きバスは、珍富から乗車する。また地元の人によると、桂芳山が最もにぎわうのは、樹氷で稜線が白く染まる真冬とのこと。今回は雲頭嶺から桂芳山の山頂を経て、南麓の桂芳山駐車場へ下山した。

珍富から内面行きバスに乗り雲頭嶺で下車。雲頭嶺には、乗用車が20台ほど停まれる駐車場と生態管理センターがあり、日曜日ということもあって、色とりどりのウェアに身を包んだハイカーが次々と大型バスから降りていた。「ようこそ、ムクゲのふる里、洪川郡」と刻まれた大きな石碑も建っている。北へ雲頭嶺を北へ越えると洪川郡となる。

20人前後のグループに続いてスタート、急な木段を登る。階段があるのは入口だけで、後は小さな起伏のある尾根道が続く。本格的な紅葉には少し早かったが、カエデが真っ赤に色づき、みんな立ち止まっては写真におさめていた。55分も歩くと樹林が途切れ、展望台のある草原状の小ピーク(1,496m)にとびでた。ここで初めて桂芳山の頂上部が視界に入る。駱駝のこぶのようなツインピーク(1,577mと1,551m)で、稜線が北の小桂芳山(1,490m)へのびている。展望台の案内板によると、天気に恵まれれば、五台山の毘廬峰や虎嶺嶺、遠くは雪岳山まで見えるそうだ。

ニワトコなど低木の間をひと登りすれば、大きなケルンが立つ広い山頂につく。雲頭嶺を同じ頃スタートした山岳会のグループが先に着いて、記念写真を撮り合っていた。風を避け、東側の斜面で弁当を広げる。大きな笑い声が盛んにあがるので振り返ると、年配の男女、数十人のグループが車座になってマッコリや焼酎を酌み交わしていた。みんなでワイワイにぎやかに登り、十分な時間をかけて昼をとり、ストレスを発散させるのが韓国式登山といえる。

山頂からは、龍坪面龍坪洞 の桂芳山駐車場へ向けて4.4キロの支尾根を下る。モミジの紅葉した樹林の緩やかな下りが続き、途中、オートキャンプ場(李承福生家址)へと分岐する1,276峰、ツツジの群生地、権大監という名の山神の伝説が残る権大監岩を通る。ほかに路洞渓谷をオートキャンプ場へ下る5.4キロのコースもある。

桂芳山駐車場では、大型バス数台が、山岳会のグループが下りてくるのを待っていた。時間に余裕があるので、国道31号線を珍富方向に25分ほど歩き、李承福記念館に立ち寄る。李承福君は、北朝鮮武装工作員によって1968年に殺害された当時小学2年生の少年。李君が工作員に対し「共産党が嫌いだ」と言ったと、生き残った兄が証言したことから、一躍「反共少年」として有名になり、教科書にも取り上げられた。記念館は、彼が通っていた学校横に建設されている。小学校は98年に廃校となったが、校庭には李君の大きな銅像が立っていた。事件の再現フィルム上映館、戦車や戦闘機なども展示されており、「反共」という韓国の国是を改めて認識させられる。珍富行きバスには、記念館正門300m先の停留所から乗車する。

●アクセス(バス)
・珍富―雲頭嶺 内面行きバス乗車。1日3本。9時30分、13時10分、17時
・雲頭嶺―珍富 1日3本。8時45分、12時、15時48分

●山行メモ
・李承福記念館。入場無料。9時~18時(冬期は17時)開館
・桂芳山駐車場そばの国道沿いに食堂と民泊(民宿)が数軒ある

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