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第10回 韓国を代表する名峰 智異山 森正哲央

第10回 韓国を代表する名峰 智異山 森正哲央

第10回 韓国を代表する名峰 智異山

漢拏山に次いで高い智異山は、韓国人の日々の生活に最も大きな影響を与えてきた山の一つだ。中央(都)から遠い雪岳山や漢拏山に比べて、智異山は韓国南部の真中にどっしり位置し、その存在感は他の追随を許さない。最高峰・天王峰(1915m)から、西端の老姑壇(吉祥峰・1507m)へのびる約25キロの稜線には、1500mを越える峰が幾重にも並び、地域を分かつ境界線ともなってきた。韓国の伝統的な地理概念である風水地理説では、白頭山を発した“生気”が白頭大幹を流れ下り、智異山にいたって尽きると考えられている。

飢餓や戦乱、圧制に苦しめられてきた韓国の民衆にとって奥深い智異山一帯は、憧憬の地でもあった。李朝の預言書『鄭鏡録』の影響もあり、人里離れた奥地に桃源郷・十勝地があるという信仰が生まれ、更正儒道(一心教)の信者は、伝説上の十勝地・青鶴洞とされる三神峰の南麓で、今も儒教の伝統に則った生活を送っている。

また朝鮮戦争前後にはパルチザン(共産ゲリラ)が智異山一帯に篭もり、凄惨な闘争を繰り広げた。その実情は、李泰(1922~97)の『南部軍』や趙廷来(1943~)の『太白山脈』に詳しい。 今回は最高峰・天王峰へ最も手軽に登れる、山清郡矢川面中山里からのコースを紹介したい。

天王峰の南麓、中山里からは、法界寺を経由する直登コースと、ジャントモク待避所を経由する渓谷コースがある。

晋州から中山里まではバスで約1時間。バス終点の駐車場前には食堂や民泊のほか、2001年にオープンした智異山パルチザン討伐展示館があり、智異山一帯で活動したゲリラの一端がうかがえる。バス終点より1・3キロ先の中山里探訪案内所までは車道を歩く。車なら案内所前まで入れる。案内所には、智異山の自然などに関する展示もあるので、立ち寄ってもよい。

法界橋を渡り中山里キャンプ場分岐(637m)から山道へ。中山里渓谷沿いの樹林を40分ほど進み、木橋を渡ると刀岩三叉路にでる。直進すると直登コース、左が渓谷コース。直登コースは急な登りが続くが、距離は短く、日帰りで往復する人も多い。ロータリー待避所(収容人数35人)と法界寺のある鞍部で、ひと息入れる。

法界寺は、智異山で最も高所に位置する古刹で、544年に縁起祖師が創建した。高麗初期の三層石塔(宝物)や、新羅末の文人・崔致遠(858~没年不詳・諡号は文昌侯)が冥想した文昌台がある。身を隠すのにちょうど良い巨岩が多いことから、パルチザンの指揮本部があったという。

一方、中山里渓谷沿いのコースは、なだらかだが、ジャントモク待避所、帝釈峰を経由するので距離が長い。ユアム瀑布をはじめ大小の滝、木橋や木道、石積みの河原など、変化に富んだ山行が楽しめるので、のんびり歩きたい人向けだ。

●晋州~中山里バス
一日16本。始発6時10分~終発21時10分。所要時間1時間余り。5500ウォン。

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