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第11回 広々とした稜線が人気 徳裕山 森正哲央

第11回 広々とした稜線が人気 徳裕山 森正哲央

第11回 広々とした稜線が人気 徳裕山

韓国の第4峰・徳裕山は広々として雄大な山容を誇る。主峰・香積峰(北徳裕山・1610メートル)から南徳裕山(1507メートル)まで約20キロ余りにおよぶ稜線は、韓国を代表する縦走コースで、春には徳裕平田の高原を中心にツツジが咲き乱れ、冬は黄海から吹いてきた北西風がぶつかり雪がたくさん積もる。

1971年に道立公園、75年には国立公園に指定された。北麓に京釜高速道路、西麓に統営・大田中部高速道路が走っているのでアクセスも良く、1990年に雪川峰の麓に複合リゾート施設・茂朱リゾートがオープンして以降は、韓国を代表するウインタースポーツのメッカとしても脚光をあびている。茂朱リゾートからゴンドラを利用すれば約40分で香積峰に立つことができ、手軽に高山歩きを楽しめることから、一年を通して、山好きはもちろん、大勢の行楽客が訪れる。

今回は、雪で白く染まった冬の稜線を南徳裕山から香積峰へ1泊2日で縦走したので紹介したい。

前日は南徳裕山から27キロ南の咸陽邑に泊まる。縦走の始点となる霊覚寺行きバスが出ているためだ。翌朝、1時間余りバスに揺られ、樹林に囲まれた静かなバス停で下車。バス停から霊覚寺までは150メートル余り。新羅時代の877年に審光大師が創建、伽耶山海印寺の末寺にあたる。停留場に戻り、そばの小道を数百メートル進むと探訪支援センターがある。ここで軽アイゼンを付けて出発。南徳裕山までは3.8キロ、今晩の宿、サッカゴル峠待避所までは8.9キロの道のりだ。

まずは霊覚寺渓谷に沿って緩やかに登る。しばらく進んだら小橋を渡って右岸へ。さらに小橋を渡った辺りから勾配がきつくなり、足元にはゴロゴロと石が増え、やや歩きにくい最後に階段を抜けると、南徳裕山と下峰の間の霊覚峠(1290メートル)にでる。さらに頂上までは900メートル。起伏のある岩尾根で、縦走路のなかでは最も険しい区間だ。だが階段や欄干がよく整備されているので、展望を楽しみ安心して歩ける。徳裕山から六十嶺を経て南へと続く白頭大幹の先に白雲山、長安山が座し、その遥か先には、智異山の稜線が雲の上に浮かぶ。

南徳裕山(上峰)は、東西に1キロ間隔でそびえる双耳峰で、階段を上り下りして東峰(1507メートル)に立つと、西峰(1492メートル)がすぐ目前に迫る。今晩の宿、サッカ谷峠待避所へはさらに4キロ余り。17時の入室時間まで時間があるので、ゆっくり歩く。稜線にはツツジやミズナラが茂り、冬ということもあるが展望は良い。300メートルほど下降し、西峰、六十嶺への分岐を通過。月星渓谷へと分岐する月星峠(1240メートル)まで下降したら、アップダウンを繰り返しながらサッカ峰の頂上へ。振り返れば、西峰と下峰を左右に、西日を浴びた東峰がひときわ大きい。サッカ峰(1419メートル)を超えたら、鞍部のサッカ谷峠待避所(収容人数45人)へ下る。中規模の待避所で、入室時間には1時間ほど早かったが、すぐ壁際の静かな寝やすい場所を割り振ってくれた。

翌日は、朝から雪がぱらつき、視界がきかない中での山行となった。舞龍山、冬葉嶺、白雲峰、中峰を経て香積峰へ登り、九千洞渓谷へと下る計19キロの道のり。そのうち香積峰までは10.5キロ、九千洞の駐車場までは8.5キロある。南側に比べて起伏は小さく、より開放的で歩きやすい。平らな稜線には随所でツツジが群生し、晴れていれば稜線漫歩が楽しめる。

舞龍山(1492メートル)までは登りが続き、長い階段を抜ける。「舞龍山」と刻まれた石碑の立つ広い山頂を過ぎたら、下り気味に尾根をたどる。さらに七淵渓谷への下山路が分岐する冬葉嶺を通過する。七淵渓谷は龍湫瀑布などが織り成す渓谷美で知られる。
 白岩峰山頂の松渓三叉路で「白頭大幹」と分かれたら、広々とした徳裕平田にさしかかる。爽快な景色が味わえる徳裕山縦走のハイライトで、5月下旬から6月上旬、一帯にはツツジが、7月にはヤブカンゾウ(忘れ草)が咲き誇る。階段を登りきると中峰(1594メートル)で、縦走は大詰めを迎える。この先の起伏は緩やかで、イチイ、チョウセンシラベの間を縫って進む。香積峰の名は、イチイの韓国語ヒャンナム(香りの木)にちなむ。さらに香積峰待避所(収容人数60人)へと緩やかに下り、再び登り返すと香積峰の広い山頂に着いた。視界がきかないので、登頂の感激も早々に、そのまま東麓の白蓮寺へと下り、九千洞渓谷沿いの林道を茂朱九千洞へでる。白蓮寺までは急な下りで、ところどころ階段が整備されている。旅館や食堂が立ち並ぶ茂朱九千洞からは全州、大田、茂朱行きバスのほか、茂朱リゾートとの間に無料シャトルバスが運行している。

徳裕山はなだらかな山容で、防寒さえしっかりしておけば、冬でも十分安全に山行を楽しめる。また今回のコースとは逆に、ゴンドラで稜線に上がり、南へ抜けると楽に縦走がスタートできる。

●アクセス(バス)
・ソウル南部BT~茂朱 1日5本 7時40分~13時40分。12800ウォン。
・咸陽~霊覚寺 1日5本。始発7時半~終発17時。所要時間1時間15分。市外バスターミナルから100m先の「咸陽智異山高速」営業所から乗車。5000ウォン。
・九千洞発バス 全州(1日4本)、大田(1日5本)、永同(1日2本)、ソウル(1日1本)。すべて茂朱を経由。
・九千洞~茂朱リゾート 無料シャトルバス。1日16本。始発5時20分~終発21時20分。

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