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第463回 高校野球部のシニアOBたちの「人生いろいろ」 伊藤努

第463回 高校野球部のシニアOBたちの「人生いろいろ」 伊藤努

第463回 高校野球部のシニアOBたちの「人生いろいろ」

母校の高校野球部OB会の中に5年ほど前に立ち上げられた還暦(60歳)以上のメンバーを対象とした集まり「シニアOB会」の年に一度の会合が最近、地元川崎の母校近くの居酒屋であり、この中ではまだ若輩の筆者も都合を付けて参加した。出身校である神奈川県の公立高校の野球部は昨年、創部60周年に当たって部草創期の先輩たちの活動などをまとめた『白球追った青春の日々―甲子園を狙え!』と題する部史を刊行したが、その編集を仰せつかった経緯もあり、今回のシニアOB会は出来上がった冊子を直接お渡しし、寄稿してくれた先輩方にお礼をする機会ともなった。

集まったのは野球部1期生から17期までのOBだが、昭和30年代(1956~64年)の部草創期の先輩諸氏はいずれも70代を迎えた高齢者ばかり。宴たけなわの折の近況報告を聞いていると、皆さんは一様に年相応の持病はお持ちのようだが、半世紀以上も前の高校時代に猛練習で知られた野球部での活動経験の「遺産」がまだ残っているためか、年齢に似合わず元気な方が多く、先輩OBたちの短い報告を聞きながら、日頃の活発な活動ぶりに驚いた。わが国では現在、平均寿命が延び、80代、90代になっても元気なご老人が多い高齢化社会を迎えている折、大変参考になる生き方を実践している何人かの野球部OBの近況をご紹介したい。

昭和31年に高校入学の1期生のIさん(77歳)は横浜市内で経理担当の奥さんとともに小さなカヌーショップを経営し、カヌー愛好家を対象にした訓練教室なども主宰している。Iさんは脱サラ組だが、カヌーショップの経営はすでに30年以上に及び、自らも率先してカヌー競技大会に参加するなど、日焼けした肌は現役アスリートの証しでもある。今年夏も沖縄の海であるカヌー大会に参加すると張り切っていた。

3期生のYさん(75歳)は、カラオケ店でよく歌われるコミカルな曲「野球小僧」に出てくるような野球大好き人間で、今もシニア向け軟式野球でレギュラーを確保し、全国大会での上位進出を狙う。後輩がちょっとでも気を抜いたプレーをすると、大きな声でカツを入れる性格は昔と変わらない。

4期生のKさん(74歳)は、母校近くの自宅で自転車店を開業するやはり現役組だ。野球関係で人脈があったためか、ご自分の自転車店からそれほど遠くはないプロ野球・巨人軍の2軍選手約40人が寮と練習グラウンド(読売ランド球場)を移動するための自転車の納入・運営管理を担当し、将来があるプロ野球選手の若手相手の仕事だけに神経を使うと話していた。

8期生のUさん(70歳)は高校野球部時代、捕手で1番打者というチームの文字通りのけん引役で、卒業後も後輩の指導でしばしば母校のグラウンドを訪ねていた。それから数十年がたち、近年は「空中散歩」のできるグライダーの操縦免許を取得し、月に1回のペースで埼玉県の河川敷で飛行訓練を続けている。国家資格でもある操縦免許の更新には、心身ともに健康である証明が必要ということで、健康管理にも努めることになったと近況を報告した。

野球部歴代ナンバー1の強打者だった5期生のOさん(73歳)は数年前から、完全に野球から離れた生活となったものの、地域社会での活動をサポートする日々のようだ。地域でのボランティア活動も心身の若さを保つ有益な活動と言えるかもしれない。

昭和の歌姫、島倉千代子さんの名曲「人生いろいろ♪♪」の歌詞ではないが、野球部の先輩たちが高校生時代と変わらずに人生で新たな楽しみを見いだし、生き生きと余生を楽しんでいる様子にちょっとした刺激を受けた。来年の会合での近況報告が楽しみだ。

 

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