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第1回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第1回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第1回 中国史研究者のパリ遊学記


2016年4月から17年3月まで、勤務先の関西大学から在外研究の機会を与えられたので、パリへ行ってきた。私の専門は、分かりやすく言えば中国の古代中世史を研究している。

(コレージュ・ド・フランス内漢学研究所)

パリと中国古代中世史がどのような関係があるのだと訝しく思われるかもしれないが、19世紀から20世紀前半のパリは、北京、京都とならんで中国学の世界的研究拠点の一つだった。シャヴァンヌ、ペリオ、マスペロ、グラネといったシノロジストを輩出したフランスの中国学。はたまた、中国史のみならず我が国のアジア史学の泰斗、故・宮崎市定博士がかつて二度にわたって長期滞在したパリ。宮崎博士の中国史を見つめる視点と、パリ滞在は切っても切り離せない。では、フランスの中国学とはいったい何なのだろうか。21世紀の今、それはどうなっているのか。それを確かめてみようと、パリに行ってみようと決めた。
私の研究テーマの一つは、唐代の中国に入ってきたソグド人(中央アジア出身のイラン系の人々)がどのような活動をし、中国の歴史にどのような影響を与えたのかというものである。幸いパリには同じソグド人を研究テーマにしているエティエンヌ・ド・ラ・ヴェシエール教授がいる。ヴェシエール教授とは、2004年に北京で開催された第1回国際ソグド学会で会って縁があったので、彼を介してフランスでの受け入れをお願いしたところ、フランス国立科学研究所(CNRS)の客員研究員として受け入れてもらえることになった。

(コレージュ・ド・フランス別館)

この研究所には、文系理系の研究センターが置かれており、私はその中の東アジア文明研究センター(CRCAO)に招聘される形となった。東アジア文明研究センターは、フランス国立科学研究所、フランス国立高等研究院 (EPHE)、パリ第7大学、コレージュ・ド・フランスの四つの研究機関によって担われており、専任スタッフとこれらの研究機関所属の兼任スタッフから成っている。東アジア文明研究センターは、パリの第5区、パンテオンがある聖ジュヌヴィエーヴの丘を東へ下ったところにあるコレージュ・ド・フランスの別館内に設置されている。
渡仏前、ヴェシエール教授から、フランス語を勉強してくるようにと言われていたので、日常会話がぎりぎりできるくらいのフランス語を学んで渡仏した。

(コレージュ・ド・フランス図書館利用証)

ただ、現地ではヴェシエール教授の計らいで、コレージュ・ド・フランス別館の最上階にある日本学の図書館(といっても図書室のような規模)に併設された屋根裏部屋(といっても関西大学の個人研究室と同じか、やや広い)を用意してもらい、日本学の教授(名前は失念)を紹介していただいた。また、パリの中国学の研究者は流ちょうな中国語を話すほか、中国学図書館の中国人スタッフや中国人留学生とは基本、中国語で会話していたので、一年間のパリ滞在で、フランス語の能力が低下するという事態になってしまった。パリ市内の大型デパートにも中国人スタッフがおり、中国語ができればあまり不自由しないという環境ともいえる。


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