1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第2回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

記事・コラム一覧

第2回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第2回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第2回 中国史研究者のパリ遊学記


コレージュ・ド・フランス別館には、中国学、エジプト学、チベット学、日本学などの各専門図書館が置かれている。パリの建物は、外に対して閉鎖的といえる。通りに面してがっちりした扉で閉じられている。訪問者は、パスコードを入力して自分で開けるか、あるいは扉の横にあるブザーを押してロックを解除してもらってから、建物へ入る。

(コレージュ・ド・フランス図書館内部)

コレージュ・ド・フランス別館の場合、扉を開けて入ると、すぐに中庭に出る。ここを通って図書館のある建物に入っていくこととなる。中国学図書館の入り口にはノートが置いてあり、入館者はサインをしなければならない。入口を入るとホールになっており、ここに机・椅子が配置されている。ホール部分は、一部開架式で、工具書や二十四史といった中国史研究の基本史料は手に取って見ることができる。ただし、ほとんどは書庫に書籍があるので、カード検索、もしくはオンライン検索をかけ、見たい書籍をカードに書き込んで、書庫から出してもらわなければならない。この別館内では、台湾の中央研究院が公開している漢籍電子文献というデータベースに無制限でアクセスできる。通常、個人が無料でアクセスする場合、制限がかかり、検索できないデータベースもあるのだが、ここではすべてのデータベースが検索可能である。

(別館内中庭)

『冊府元亀』や『唐会要』といった、唐代史研究では必要不可欠な史料もヒットするというすぐれた環境だ。また、中国の書籍・学術雑誌などのデータベースであるCNKI(中国知網)も、学位論文は見られないが、「期刊」はダウンロード可能である。日本の中央ユーラシア学の研究者でパリに来る人の中には、ここを利用している人もいるが、チャイナプロパーの研究者には、ほとんど知られていないのではないだろうか。特殊な史料(墓誌などの石刻史料やトルファン出土文書など)を調査するのでなければ、基本的に日本にいる研究環境に近いか、部分的には日本以上に便利かもしれない。長期休暇中、パリで中国学の論文執筆、というライフスタイルも「有り」だと思うのは、自分だけだろうか。

 

(別館内最上階に用意してもらった研究室)

この別館の上階には、中国学チーム(Équipe Chine)の部屋が別にある。確認できたのは二部屋。あまり広くないその部屋の一つには、敦煌・トルファン関係の書籍があり、博士課程に在学している留学生や、若手の研究者が詰めて研究している。さらに石刻関係の書籍が集められている別の部屋もある。


タグ

全部見る