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「あなたの夢を取り戻せ」

「あなたの夢を取り戻せ」

君の夢は何?

 

もし何年か前にこの質問を聞かれたら、僕はただ目をぱちぱちさせて言っただろう。僕にもわからない、と。

 

中国人に一番足りないのはこの夢を追うことだ。たくさんの若者が、4年間の大学教育を終えたとしても、君が彼らに将来の抱負を聞いたら、何人かしか答えられないかもしれない。こうやって彼らは社会に入っていく。そして結婚し、家を買い、仕事をし、残業をし、生活のいろいろな面でのプレッシャーが、僕らにちょっと一休みして考える時間すら与えないのだ。僕らはなぜ生きているかと。

 

少ない給料を握って、この社会が不公平で、貧富の差が激しいと叫ぶ。でもどうして考えないんだろう、自分の未来を想像する力もない人間に、社会がより多くを与えるだろうかって。

 

3年前、僕も茫漠とした未来と共に、海を越えて日本にやってきた。この見知らぬ国で、自分の夢を探したかった。

 

でもいろんなことは思っていたほど順調じゃなかった。大学院入試の試験は、試験を受ければ、面接試験を受け突破することができると思っていた。僕は待っていると知らなかった、あのよく知っている耳を刺す言葉、「あなたはなぜ大学院を受けるのですか?」「あなたは大学院で何をしたいのですか?」「あなたは将来何をしたいのですか?」―――「君はいったい、何をしたいんだ?」

あるいは君はいくらかの綺麗な言葉を作り出して答えるかもしれない、でももしそのすばらしい皮が剥ぎ取られたら、僕らには何も残っていないんだ。

海を渡って、ぼくらは答えを探しに来た。これは嘘じゃない。日本留学、この決定を下した人は、多かれ少なかれ自分の人生を変えたいと思っていると僕は信じている。こんな人生の答えを探すとき、君はおびえて、しり込みし、嘘をついてその場をしのごうとするかもしれない、でも君の未来の可能性も同時に君の嘘に抹殺されてしまうんだ。

 

僕らには自分の人生を考え、どうやって「生き方」を変えるかを考える時間が必要だ。特に厳しくて大げさな社会で20年生きた後には。

 

東亜学院は僕に「時間」を与えてくれた。

 

ここで僕の学業は長足の進歩を遂げた。先生たちの毎日の気遣いが僕の後顧の憂いをなくし、僕は自由に自分の夢を追求することができた。夢を追い求める途中で、何度も失敗し、倒れたけれども、先生たちは僕が勇気を出してもう一度旅を始めるよう励ましてくれた。

 

学校を離れてもう2年以上になる。でもあのときの学校での時間が懐かしい。今でもよくこの家に帰る。

 

ここは、僕の夢の新しいスタートだった。僕は一生忘れないだろう。


徐さん
(2009年10月東亜学院入学 2011年4月早稲田大学大学院 社会科学研究科(科目等履修生)入学 2012年4月慶應義塾大学大学院 社会学研究科入学 2013年掲載)

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