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第3回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第3回 中国史研究者のパリ遊学記 森部豊

第3回 パリの東洋学図書館

(コレージュ・ド・フランス ヴァンセンヌ別館)


パリの5区にあるコレージュ・ド・フランス別館は、中々便利な場所にあり、環境の整った図書館なのだが、私が在外研究期間中の2016年5月31日、コレージュ・ド・フランス別館全体がリニューアル工事に入ったため、図書館も一時閉鎖され、パリの東部にあるヴァンセンヌへ仮移転することになってしまった。ところが、この移転に時間がかかり、ヴァンセンヌでの図書館再オープンはかなり遅く、冬になってからだったので、その間、パリ市内の別の図書館を利用することになった。

(フランス極東学院図書館)

パリには、東洋学関係の資料を所蔵する図書館がいくつかある。私は15区の外れ、エッフェル塔の近くのアパルトマンに住んでいた。そこから近かったのは、フランス極東学院図書館(アジアの家)である。この図書館は、16区のIéna(イエナ)、ギメ美術館の近く、ウィルソン大統領大通り沿いにある。外観はいかにも「パリ」という感じの建物だが、図書室は改装されていて、明るい感じだ。ここは学生がおらず、静かな環境で研究できる。はじめての利用時には、パスポートを持参の上、手書きで用紙にプロフィールなどを書き込んだが、後にパリ在住の日本人研究者に聞いたところ、何の手続きもしなくてもいいという人もいた。毎回の利用は、受付のノートに記名するだけで、これはコレージュ・ド・フランス別館の図書館と同じである。開架部分には、辞書など工具書、世界中の東洋学に関する人文学系雑誌があり、日本の『史学雑誌』『東洋史研究』『東方学』『東洋学報』なども配置してある。大漢和辞典は書庫にあり、取り出してもらうのが面倒だった。受付で、Wifiのコードをもらうと(毎週変わる)、館内ではフリーWifiが利用できるシステムになっている。

(Biblioth-que universitaire des langues et civilisations)

もう一つ利用したのはBulac(Bibliothèque universitaire des langues et civilisations)。ここは13区の外れにあるアジア・北アフリカ系言語・文化専門の図書館だ。建物は現代的建築で、大学が併置されているので、大学生・大学院生の巣窟となっている。利用する前にオンラインで個人情報を入力しておくと、はじめて利用する時の手続きがスムーズにいく。初回時、受付で手続きをすると、利用カードを発行してくれる。このカードキーをタッチして出入館することになる。図書館は3階建ての建物で、地階の席は指定制の個室がある。個室利用はオンラインでの予約制。1回の利用時間には時間制限がある、空いていれば連続予約して一日使えることもあるが、実際のところ、他の大学院生(?)や研究者との争奪戦を勝ち抜かないと予約を連続してとることは難しい。開架部分のフロアは、学生がうるさくて、作業に集中できないという難点があるこの図書館の利便性は(中国史研究にとって)大漢和辞典や漢語大詞典が開架にあることにつきる。二十四史や『通典』なども開架室にあるので、特殊な史料を使わない限り、論文執筆環境としては、まあまあ。CNKIの利用も可能である。


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