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第377回 ラジオ番組でも活躍する「女姿三四郎」(下) 伊藤努

第377回 ラジオ番組でも活躍する「女姿三四郎」(下) 伊藤努

第377回 ラジオ番組でも活躍する「女姿三四郎」(下)

NHKのラジオ番組を熱心に聞くようになってから、昔、テレビのニュース番組に登場していたアナウンサーの声に再び接する機会を得て、「旧友に再会したようだ」といったコラムを書いてきたが、この話題での最終回で紹介するのは、20年ほど前の現役時代に「女姿三四郎」の尊称で呼ばれた元女子柔道第一人者の山口香さん(51)である。

山口さんは、日本人女性柔道家がまだメダルに届くことが少なかった1980年代、ウィーンで開催された第3回世界選手権で日本人選手として史上初の金メダルを獲得した。初の公開競技となった1988年のソウル五輪では、悲願の金メダルは叶わなかったものの、銅メダル獲得など、日本女子柔道が世界のトップに通用することを証明した伝説的な女子柔道家である。現在は筑波大学の体育系准教授として教壇に立ち、後進の育成にとどまらず、幅広い分野で活躍している。

筆者はドイツ統一前の西ドイツに特派員として駐在していた折、1987年の西ドイツ・エッセンでの世界女子柔道選手権をたまたま取材し、この大会で銀メダルを獲得した山口選手の活躍ぶりを記者席で見る機会を得た。東京五輪の1964年に東京で生まれた山口香さんは当時、20代前半で、決勝で惜しくも敗退した直後のインタビューに応じてもらい、理路整然と、かつまたはきはきした口調で試合展開を振り返ってくれたことをよく覚えている。もちろん、記事・談話として東京本社の運動部に原稿を送った。

その受け答えを今も覚えているのは、世界選手権では女子の場合も幾つかの体重別階級があり、52キロ級の山口選手以外の日本代表にもインタビューしたのだが、ほとんどの選手が片言の返答ばかりで、山口さんの柔道選手とは思えぬスマートな体つきと合わせ、「文武両道を兼ね備えた女性だなぁー」と強い印象を受けたからである。

山口さんはソウル五輪を最後に一線を退いた後、大学教員として柔道を教える一方、全日本柔道連盟女子強化委員、NHKの女子柔道各種大会の実況中継時の解説者などとしても活躍。その後の幾つかの五輪を含め、スポーツ中継などでの歯切れ良い語り口などが評判を呼んだのか、近年はNHKのラジオ番組でも「パーソナリティー」「コメンテーター」として出演し、視聴者に人気があることは知っていた。

先日のNHKラジオの深夜番組「ラジオ深夜便」では、この番組のレギュラー・コメンテーターを担当している関係で、「ラジオ放送と私」というコーナーに登場、子供時代からのラジオとの関わりなどについて興味深い話が次々と出てきた。西ドイツのエッセンでの不思議な出会いから30年近く。山口さんの柔道家以外の素顔を知ることができておもしろかったが、同じ著名なアスリートの同学年として、早実高エース、プロ野球のヤクルトで活躍した野球選手の荒木大輔氏を挙げ、二人の交友ぶりの様子もほほえましかった。

 

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