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第448回 油断できないゾウによる事故  直井謙二

第448回 油断できないゾウによる事故  直井謙二

第448回 油断できないゾウによる事故

去年の8月群馬県の群馬サファリパークでインドネシア人の飼育員がゾウに踏まれ死亡するなど、飼育されているゾウが突如暴れ死傷者が出る事故が時折報告されている。ゾウに慣れた人でも突然野生に返る習性には注意が必要だ。

飼育されているゾウと野生のゾウは同じ動物とは思えない差があることはすでに書いた。(アジア今昔・未来 第82回 タイ・ランパーン県のゾウセンターン、第276回タイ西部の野生のゾウ)徹底的に調教されたゾウはウマやラクダよりはるかにおとなしく人間に従順だ。ウマは乗り手が下手だとバカにして振り落とそうとするといわれる。筆者もベテランの使い手のもと、ウマやラクダそれにゾウに乗った経験がある。ウマは思ったより頭が低く、歩行中前前方に落ちそうになる。ラクダはパキスタンのカラチで観光用のラクダに乗った。ラクダは乗るまではしゃがまされているが、立ち上がるときまず後ろ足を立てるので急に前のめりになり前方に落ちそうになる。次に前足を立てるので逆に前が上がり今度は後ろに落ちそうになる。歩行中もラクダは人間に配慮をしてくれない。昭和初期の童謡「月の砂漠」で唄われているような優雅な乗り心地ではない。

写真は中部タイのアユタヤで古式ゆかしくゾウによる戦闘シーンを再現したイベントで撮影したものだ。(写真)幼児が懸命にゾウに乗ろうとしていて思わず危ないと叫びそうになるが、このあと幼児はゾウに乗って場内を一周した。ゾウは乗り手が幼児であることを察知し、首の位置にしっかり座るまでじっとして動かない。歩行中も普段よりゆっくり歩き落とさないように注意している様子がうかがえた。

筆者もゾウに乗るのは全くの素人なうえに運動神経が標準より劣る。踏み台に乗ってもゾウの首まではかなり高い。飼育員に助けてもらってもなかなかたどり着けない。お尻を持ち上げてもらうような感覚が伝わりようやく乗ることができた。飼育員が二人がかりで助けてくれたと思ったら、お尻を持ち上げてくれていたのはゾウだった。へたくそな乗り手を助けてやろうとハナを後ろに回しお尻を持ち上げてくれたのだ。乗り手の技量を察知して優しく扱ってくれる。

こうしたゾウはあくまでも飼育されたゾウであることを忘れてしまいがちだ。また飼育されていても時として神経がいら立ち野生に戻ってしまうことがある。普段おとなしいだけに事故が起きやすいとも言えそうだ。


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