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転換する中国の外部環境認識 ――「利用可能な発展条件」から「塑造(形成)すべき外部環境」へ  加茂具樹

転換する中国の外部環境認識 ――「利用可能な発展条件」から「塑造(形成)すべき外部環境」へ  加茂具樹

転換する中国の外部環境認識――「利用可能な発展条件」から「塑造(形成)すべき外部環境」へ 

一.公式文献から読む外部環境認識

 筆者はこれまで、毎年12月に中国国際問題研究院が開催する「国際情勢と中国外交シンポジウム」での外交部長の基調講演と、翌年3月の全国人民代表大会会期中に行われる外交部長記者会見を定点観測し、中国外交が国際情勢を語る際に「戦争」「動乱」「大変局」といった語を前景化させていることを指摘してきた[注1]。これらは、外交部門による年次的な公式発信であると同時に、党指導部の対外認識を対内外に説明し、展開する場としても機能している。本稿が問うのは、その外交言説の変化が、党大会報告や五カ年計画建議といった中長期政策文書に表れた外部環境認識の変化とどのように連動しているのかである。この問いを、中国共産党の中長期政策文書から読み解く。

 本稿は、1990年代以降に中国共産党が提示してきた中長期政策文書を通時的に読み、中国指導部の外部環境認識の変遷を追跡する。具体的には、1995年9月に中国共産党第14期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第9次五カ年計画および2010年長期目標の制定に関する建議」以降の五カ年計画建議とその「説明」、および第14回党大会以降の党大会報告を対象とする。これらは、指導部の執政方針と発展戦略を理解するための重要な政策文書である。五カ年計画建議は、党が中長期の発展条件と政策課題をどのように設定しているかを示す。建議の「説明」は、本文に込められた情勢判断、政策意図、党内で共有された問題意識を補足する。党大会報告は、これらの発展戦略を、党の時代認識、国家目標、統治理念、対外戦略の中に位置づける上位の政治文書である。三者を併読することで、個別の外交発言だけでは見えにくい、中国指導部の外部環境認識の長期的変化を把握することができる。

 中国の歴代指導部が一貫して追求してきた外交目標は、自国の平和と発展に必要な国際環境の確保である。ただし、ここでいう発展とは、単なる経済成長ではない。中華人民共和国憲法前文が社会主義現代化強国の建設と中華民族の偉大な復興を掲げているように、中国にとって発展とは、近代以降の外来侵略と従属を克服し、国際社会で侮られない国家として自立することでもあった。いわば「弱国無外交」という歴史認識である。ここでいう現代化は、日本語でいう近代化の含意を含む、国家建設の課題であった。したがって中国外交とは、国家の自立と現代化を可能にする平和で安定した外部環境を確保する営みであった。この目標自体は一貫している。変化したのは、その外部環境をどのような性質のものとして捉えるかであった。

二.「平和と発展」と利用可能な外部環境

 この問題を考える際、まず確認すべきは、「平和と発展」という時代認識が、中国の改革開放路線にとって重要な理論的根拠であったことである。この概念は、鄧小平の国際情勢認識を背景に[注2]、1987年10月に開催された中国共産党第13回全国代表大会における趙紫陽報告「中国の特色ある社会主義の道に沿って前進しよう」において、党の公式文献の中に明確に位置づけられた。同報告は、「国際情勢と中国の現代化建設の必要に基づき、平和と発展という二大主題をめぐって、外交の構図と党の対外関係を調整した」と述べていた[注3]

 この時代認識は、改革開放の継続とも直結していた。第13回党大会報告(1987年10月)は、「現代の国際経済関係はますます緊密になっており、いかなる国も閉鎖状態の中で発展を求めることはできない」とし、「対外開放を堅持しなければならない」と述べた[注4]。つまり「平和と発展」は、単なる対外政策上の標語ではなく、中国が経済建設に集中し、改革開放を推し進めることを正当化する時代認識であった。

 こうして第13回党大会で定式化された「平和と発展」の論理は、1989年6月の天安門事件以降も継承された。1992年10月に開催された中国共産党第14回全国代表大会における江沢民報告「改革開放と現代化建設の歩みを加速し、中国の特色ある社会主義事業のより大きな勝利を勝ち取ろう」は、「現在、国内条件は整い、国際環境は有利であり、挑戦もあるが、それ以上に機会がある」と判断していた[注5]。外部環境は、挑戦を含みながらも、改革開放と現代化建設を進めるための有利な条件として位置づけられていた。

 この認識の継承は、1990年代の五カ年計画文書においても同様であった。「中共中央の国民経済・社会発展第9次五カ年計画および2010年長期目標の制定に関する建議」、すなわち第9次五カ年計画(1996〜2000年)建議は、「平和と発展は今日の時代の主題である(和平与発展是当今時代的主題)」とし、「国際的な平和環境は引き続き維持される見込みである」と判断した。世界の多極化、科学技術革命、国際経済協力、アジア太平洋地域の活性化は、中国に新たな発展の機会を提供するものとされた[注6]

 もっとも、1990年代の中国指導部が外部環境を単純に楽観視していたわけではない。第9次五カ年計画(1996〜2000年)建議の「説明」(1995年9月)は、米国を名指ししないものの、「一部の西側大国は中国が強大になることを望まず、中国が自らの発展モデルによって成功することを望まず、常にさまざまな方法で中国を牽制しようとしている」と述べた[注7]。すなわち、中国は、外部環境を全体として有利なものと判断しながらも、その中に自国の発展を制約しようとする大国政治の圧力が存在することを認識していた。ただし、この警戒は、後年のように中国の発展条件そのものを規定する中心的認識ではなく、有利な外部環境の中に含まれる制約要因として位置づけられていた。

 1990年代末を経て、2000年代のはじまりも、この基本認識は維持された。1997年9月に開催された中国共産党第15回全国代表大会における江沢民報告「鄧小平理論の偉大な旗印を高く掲げ、中国の特色ある社会主義事業を全面的に21世紀へ推し進めよう」は、「平和と発展は今日の時代の主題となった(和平与発展已成為当今時代的主題)」とし、「比較的長期の国際平和環境を獲得することは可能である」と述べた[注8]

 2000年10月に中国共産党第15期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第10次五カ年計画の制定に関する建議」、すなわち第10次五カ年計画(2001〜2005年)建議では、経済グローバル化、科学技術革命、産業構造調整、国際競争の激化が強調された。そこでは、「より大きな範囲、より深い程度で国際経済協力と競争に参加する(在更大範囲内和更深程度上参与国際経済合作与競争)」ことが目標とされた[注9]。WTO加盟を視野に入れた中国にとって、外部環境は圧力を伴いながらも、成長のために利用可能な制度環境であった。

 三.制度性話語権と外部環境の再編

 変化は、第11次五カ年計画(2006〜2010年)・第12次五カ年計画(2011〜2015年)期から明確になる。

 2005年10月に中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第11次五カ年規画の制定に関する建議」、すなわち第11次五カ年計画(2006〜2010年)建議は、「平和、発展、協力が今日の時代の潮流となっている(和平、発展、合作成為当今時代的潮流)」としつつ、「外部環境は全体として中国の発展に有利である(外部環境総体上対我国発展有利)」と述べた。しかし同時に、「国際環境における不安定、不確定要素が増加している(国際環境中的不穏定不確定因素増多)」と指摘した[注10]。さらに、資源、市場、技術、人材をめぐる競争、貿易保護主義、安全保障上の新たな挑戦も挙げられた。外部環境はなお有利だが、単純に利用できる機会ではなくなりつつあった。

 2010年10月に中国共産党第17期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第12次五カ年規画の制定に関する建議」、すなわち第12次五カ年計画(2011〜2015年)建議では、この傾向がさらに強まった。同建議は、中国はなお「大いに為すことのできる重要な戦略的好機の時期(可以大有作為的重要戦略機遇期)」にあるとしながらも、国際金融危機の影響、世界経済成長の鈍化、需要構造の変化、市場や資源、人材、技術、標準をめぐる競争、保護主義の台頭を挙げた。そのうえで、「中国の発展をめぐる外部環境はさらに複雑化している(我国発展的外部環境更趨複雑)」と述べた[注11]。こうして、外部環境は、利用可能な条件であると同時に、管理すべきリスク空間として描かれ始めたのである。

 決定的なのは、第13次五カ年計画(2016〜2020年)である。2015年10月に中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第13次五カ年規画の制定に関する建議」、すなわち第13次五カ年計画(2016〜2020年)建議は、「平和と発展という時代主題は変わっていない(和平与発展的時代主題没有変)」とした。しかし同時に、「外部環境の不安定、不確定要素が増加している(外部環境不穏定不確定因素増多)」とし、「戦略的好機の性質が大きく変化した(可以大有作為的重要戦略機遇期,但戦略機遇期内涵的深刻変化)」ことを把握すべきだと述べた[注12]

 ここで重要なのは、「平和と発展」という時代認識が放棄されたわけではないことである。変化したのは、その言葉の機能であった。第13回党大会(1987年10月)以来、「平和と発展」は、中国が経済建設に集中し、改革開放を進めることを支える時代認識であった。ところが2010年代以降、それは中国に有利な外部条件を自動的に保証する認識ではなくなった。外部環境は、平和と発展の大きな潮流の中にありながらも、不安定化し、競争化し、制度的に操作されうる空間として描かれるようになったのである。

 この認識転換と同時に、第13次五カ年計画(2016〜2020年)建議は、中国が「グローバル経済ガバナンスと公共財供給に積極的に参与する(積極参与全球経済治理和公共産品供給)」とし、「グローバル経済ガバナンスにおける中国の制度性話語権を高める(提高我国在全球経済治理中的制度性話語権)」と明記した[注13]。ここでいう制度性話語権とは、単なる発言力ではなく、国際制度の議題、規則、標準をめぐる影響力を含む概念である[注14]

 この記述は、同じ2015年10月に行われた中央政治局第27回集団学習での習近平発言と響き合っている。習近平は、グローバル・ガバナンス体制の変革が「歴史的転換点」にあり、それは「国際秩序と国際体系に規則を定め、方向を定めること」に関わると述べた。また、国際経済金融、新興領域、周辺地域協力などにおいて「新しいメカニズムと新しい規則」を構築する必要を説いた[注15]。この発言は、第13次五カ年計画建議に書き込まれた「制度性話語権」が、単なる発言力ではなく、国際制度の規則、方向、正統性をめぐる影響力を意味していたことを裏づけている。

 この理解は、第13次五カ年計画建議の採択後に『人民日報』理論面で示された説明とも一致する。2016年2月3日の「制度性話語権を高める」は、制度性話語権を「制度形式によって固定化された話語権(用制度形式固化的話語権)」とし、それが国際経済事務に長期的影響を及ぼし、国際社会における受容度も比較的高いと説明した[注16]。同記事は、制度性話語権を高めることが、中国の経済発展に良好な国際環境をつくるだけでなく、世界経済の安定成長にも保障を提供すると位置づけている。ここからも、制度性話語権が単なる発言力ではなく、制度を通じて外部環境を安定化し、方向づける力として理解されていたことが分かる。

 ここで注目すべきは、制度性話語権が、後に第15次五カ年計画建議で用いられる「塑造(形成)すべき外部環境」という発想と連続していることである。上述の『人民日報』の説明によれば、制度性話語権とは、制度形式によって固定化された話語権であり、国際経済事務に長期的な影響を及ぼすものである。すなわち、それは単に中国の発言力を高めることではなく、制度を通じて外部環境を方向づけ、より安定的で予見可能なものにする力を意味していた。この意味で、第13次五カ年計画の「制度性話語権」は、第15次五カ年計画における「外部環境の塑造」へとつながる概念的な前段階であった。

 第14次五カ年計画(2021〜2025年)以降、この認識はさらに強まる。2020年10月に中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第14次五カ年規画および2035年長期目標の制定に関する建議」、すなわち第14次五カ年計画(2021〜2025年)建議は、「平和と発展はなお時代の主題である(和平与発展仍然是時代主題)」と述べる一方、「国際環境は日増しに複雑化し、不安定性と不確定性が明らかに増加している(国際環境日趨複雑,不穏定性不確定性明顕増加)」とした。また、「経済グローバル化は逆風に直面し、世界は動揺と変革の局面に入っている(経済全球化遭遇逆流,世界進入動蕩変革期)」と述べた[注17]

 第14次五カ年計画(2021〜2025年)建議の「説明」(2020年10月)は、さらに踏み込んでいる。そこでは、改革開放、とくにWTO加盟後、中国は国際大循環に組み込まれ、「市場と資源の双方を外部に置き、『世界の工場』型の発展モデルを形成した(市場和資源「両頭在外」,形成「世界工廠」発展模式)」と回顧される。しかし近年、逆グローバル化や保護主義によって、「伝統的な国際循環は明らかに弱まった(伝統国際循環明顕弱化)」と説明された[注18]

 この認識から導かれたのが、「新発展格局」である。新発展格局は、単なる内需拡大策ではない。それは、米国主導の対中圧力、技術規制、サプライチェーン再編、保護主義によって左右されうる国際循環への依存を下げ、国内循環の安定性によって外部不確実性を緩和し、相殺する戦略であった。同時に、中国は国際循環から撤退しようとしているわけではない。国内大循環を強化することで、国際資源をより選択的に引き寄せ、国際経済協力と競争における新しい優位をつくろうとしているのである。

 この認識は、2020年7月の中央政治局会議における習近平の発言にも表れている[注19]。同会議は、「我々が直面している多くの問題は中長期的なものであり、持久戦の角度から認識しなければならない」と述べ、そのうえで「国内大循環を主体とし、国内国際双循環が相互に促進する新発展格局」の形成を急ぐべきだとした。ここでいう「持久戦」は、外部環境の厳しさを一時的な衝撃ではなく、長期にわたって管理すべき条件として捉える認識を示している。さらにそれは、所与の環境に受動的に適応するのではなく、長期的な戦略、制度、政策によって不利な条件を組み替えようとする能動的な発想とも結びついている。

 四.外部環境を塑造(形成)する中国の特色ある大国外交

 第20回党大会と第15次五カ年計画(2026〜2030年)では、この対米認識はさらに安全保障化される。2022年10月に開催された中国共産党第20回全国代表大会における習近平報告「中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、社会主義現代化国家の全面建設のために団結奮闘しよう」は、「外部からの恐喝、遏制、封鎖、極限圧力に直面して(面対外部訛詐、遏制、封鎖、極限施圧)」と述べ、「中国の発展と安全の主導権をしっかり掌握した(牢牢掌握了我国発展和安全主動権)」とした[注20]。ここでいう外部圧力は、米国を名指ししてはいない。しかし、「遏制」「封鎖」「極限圧力」という語彙は、米国の対中競争政策を強く意識した表現と読める。

 2025年10月に中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議が採択した「中共中央の国民経済・社会発展第15次五カ年規画の制定に関する建議」、すなわち第15次五カ年計画(2026〜2030年)建議は、中国の発展が「戦略的機会とリスクと挑戦が併存し、不確定で予測しがたい要素が増える時期(我国発展処于戦略機遇和風険挑戦並存、不確定難預料因素増多的時期)」にあると述べた。国際的には、「百年来なかった世界の大変局が加速していること」、「単辺主義、保護主義の台頭」、「覇権主義、強権政治の脅威上昇」に加えて、原文でいう「大国博弈更加複雑激烈」、すなわち「大国間のせめぎ合いが一層複雑化し、激しさを増している」ことが示された[注21]

 同時に、第15次五カ年計画(2026〜2030年)建議は、中国が「国際空間を戦略的に活用し、外部環境を自国に有利な方向へ形成していく(主動運籌国際空間、塑造外部環境)」条件を備えると述べた[注22]。外部環境は、もはや受け入れるものではなく、能動的に「塑造」、すなわち形成する対象となったのである。

 以上の本稿の分析から分かるように、外交部長発言における「戦争」「動乱」「大変局」の前景化は、党文書における外部環境認識の変化と連動している。それは、外部環境が平和と発展を自動的に保証する条件ではなくなったという認識を、外交言説の形で表現するものであり、同時に、制度性話語権、新発展格局、外部環境の塑造という政策対応を対内外に正当化する語りでもある。

 したがって、中国指導部の外部環境認識の変化は、「平和と発展」の放棄ではない。むしろ、平和と発展が中国の発展に必要な安定的外部条件を自動的に保証するという前提の放棄である。対米認識に即して言えば、中国は米国を、利用可能な国際秩序の中心から、中国の発展空間、制度的発言権、技術的自立、安全保障を制約しうる構造的圧力の中心へと位置づけ直したといってよいだろう。その結果、外部環境は、利用可能な発展条件から、リスクを管理し、制度や規則、標準、議題設定を通じて塑造(形成)すべき対象へと変化した。

 このように見ると、「中国の特色ある大国外交」とは、単に中国が大国として積極的に振る舞うようになったことを意味しない。それは、外部環境を受動的に利用する外交から、制度、規則、標準、議題設定、正統性形成を通じて外部環境そのものを形成しようとする外交への転換である。中国外交の能動化は、国力の増大だけでなく、外部環境をもはや安定的な発展条件として信頼できなくなったという認識の産物でもある。

 中国の目標を、単純に「覇権の獲得」と呼ぶだけでは、中国指導部の問題意識を捉えきれない。中国が求めているのは、自国の発展と安全に必要な平和で安定した国際環境を、他者に依存して受け取るのではなく、制度、規則、標準、議題設定、正統性形成への関与を通じて自ら形づくることである。もちろん、そこには米国主導秩序への対抗意識があり、他国の行動を制約しようとする権力政治の側面ははっきりしている。しかし、それを「覇権」という一語で片づけると、中国外交がなぜ外部環境の形成を戦略課題としているのかを見誤る。今日の中国外交は、外部環境を「利用する外交」から、外部環境を「形成する外交」へと移行しているのである[注23]

 

 [注1] たとえば拙稿「『平和と発展』から『戦争と動乱』――『戦争』が前景化する中国外交の世界観」『中国政観』2026年3月19日。https://www.kazankai.org/media/cl/a2209

[注2] この概念は、鄧小平が1985年3月4日に日本商工会議所訪中団との会見で示した「平和と発展は当代世界の二大問題である」という国際情勢認識を背景としている(「現在世界上真正大的問題,帯全球性的戦略問題,一個是和平問題,一個是経済問題或者説発展問題。和平問題是東西問題,発展問題是南北問題」)。鄧小平自身は「時代の主題」という表現ではなく、「平和問題」と「発展問題」を当代世界の二大問題として提示した(「当代世界的両大問題」)。その後、この認識は1987年10月の中国共産党第13回全国代表大会において党の公式文献の中に位置づけられ、1992年10月の中国共産党第14回全国代表大会以降、「平和と発展は時代の主題である」(「和平与発展是当今時代的主題」)という定式として用いられるようになり、以後、党文書の規範的表現になった。

[注3] 趙紫陽「沿着有中国特色的社会主義道路前進――在中国共産党第十三次全国代表大会上的報告」1987年10月25日。原文は「根拠国際形勢和我国現代化建設的需要,囲繞和平和発展両大主題,調整外交格局和党的対外関係」。

[注4] 同上。

[注5] 江沢民「加快改革開放和現代化建設歩伐 奪取有中国特色社会主義事業的更大勝利――在中国共産党第十四次全国代表大会上的報告」1992年10月12日。

[注6] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展『九五』計画和2010年遠景目標的建議」中国共産党第十四届中央委員会第五次全体会議通過、1995年9月28日。

[注7] 「関于制定国民経済和社会発展『九五』計画和2010年遠景目標建議的説明」1995年9月25日。

[注8] 江沢民「高挙鄧小平理論偉大旗幟 把建設有中国特色社会主義事業全面推向二十一世紀――在中国共産党第十五次全国代表大会上的報告」1997年9月12日。

[注9] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十個五年計画的建議」中国共産党第十五届中央委員会第五次全体会議通過、2000年10月11日。

[注10] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十一個五年規画的建議」中国共産党第十六届中央委員会第五次全体会議通過、2005年10月11日。

[注11] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十二個五年規画的建議」中国共産党第十七届中央委員会第五次全体会議通過、2010年10月18日。

[注12] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十三個五年規画的建議」中国共産党第十八届中央委員会第五次全体会議通過、2015年10月29日。

[注13] 同上。

[注14] かつて本コラムでも論じたことがある。拙稿「制度性話語権と新しい五カ年規劃」『中国政観』2020年8月20日。https://www.kazankai.org/media/cl/a213

[注15] 「習近平在中共中央政治局第二十七次集体学習時強調 推動全球治理体制更加公正更加合理 為我国発展和世界和平創造有利条件」『人民日報』2015年10月14日。

[注16] 高奇琦「深度参与全球経済治理的保障 提高我国制度性話語権(新知新覚)」『人民日報』2016年2月3日。

[注17] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十四個五年規画和2035年遠景目標的建議」中国共産党第十九届中央委員会第五次全体会議通過、2020年10月29日。

[注18] 習近平「関于『中共中央関于制定国民経済和社会発展第十四個五年規画和2035年遠景目標的建議』的説明」2020年10月26日。

[注19] 「中共中央政治局召開会議 決定召開十九届五中全会 分析研究当前経済形勢和経済工作」『人民日報』2020年7月31日。原文は「我們遇到的很多問題是中長期的,必須従持久戦的角度加以認識」、「加快形成以国内大循環為主体、国内国際双循環相互促進的新発展格局」。

[注20] 習近平「高挙中国特色社会主義偉大旗幟 為全面建設社会主義現代化国家而団結奮闘――在中国共産党第二十次全国代表大会上的報告」2022年10月16日。

[注21] 「中共中央関于制定国民経済和社会発展第十五個五年規画的建議」中国共産党第二十届中央委員会第四次全体会議通過、2025年10月23日。

[注22] 同上。

[注23] 現在、2027年からの国際連合事務総長を選出するプロセスが進んでいる。外部環境を「形成する外交」という文脈において、中国が国際機関の人事を含む制度環境に関心を寄せている一例として参照できる。「王毅談中方対聯合国秘書長選挙期待」『外交部』2026年5月27日。https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202605/t20260527_11918566.shtml

 

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