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第404回 様変わりするタイのHIV患者保護施設(下)  直井謙二

第404回 様変わりするタイのHIV患者保護施設(下)  直井謙二

第404回 様変わりするタイのHIV患者保護施設(下)

今年1月、タイ・チョンブリ県にある主にHIVに感染した孤児をあずかるローレンゾウホームを訪問した。タイに定住する日本人の友人T氏はボランティア活動のため毎週のように施設を訪れていて取材のため同行させてもらった。

その施設はキリスト教教団が運営していて30人ほどの孤児を4人のシスターを中心にボランティアなどが加わって世話をしている。20年前のHIV施設の取材が頭をよぎり暗い雰囲気を想像していたが、屈託のない子供たちの遊ぶ姿や微笑みを絶やさないシスターの表情を見てイメージが一新した。

子供が施設に預けられるのには三つの理由がある。1つは子育ての放棄や親の経済的な理由だ。タイも核家族化が進み無責任な親の特にHIVの子供は孤立しやすい。SNCなどの発展で社会構造が変わったことも影響しているとシスターは語る。2つ目はHIVに対する偏見が残っていて、子供同士のいじめから一般の学校に通えないケース。もう1つはエイズを発症させないためには正確な投薬がかかせないことだ。

施設には大きな薬棚があって幼いうちから投薬を受け、将来は自ら正確に薬を飲めるよう訓練が必要だ。施設には運動場や一般教室パソコン教室など充実した設備が用意され、子供たちはのびのびと生活している。その一方で健康な児童を養護する以上の神経を使わなければならずシスターらの負担は計り知れない。

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20年前に取材したロッブリのHIV感染者を保護する寺では僧侶の姿は見かけなかった。上座部仏教は僧侶の労働を戒律で禁止しているからで宗教による違いを感じた。

夕方、数人が大きな荷物を車に乗せ施設を訪れた。近所に住む村人が夕食を用意して運んできたという。大きなテーブルの上に夕食を並べ始めた。食事の用意ができるとボランティアは子供たちと椅子取りゲームや風船割り競争に興じ子供たちとの触れ合いを心から楽しんでいた。(写真)柔構造のタイ社会の一面を見るとともに「頑張らない」「楽しく」「できることをする」などボランティア活動を長く続けるコツを自然に身につけているような気がした。

対照的にロッブリの施設はHIVに対する偏見からか少数のボランティアのほかには外部から訪れる人も少なかった。医薬品の開発、HIV患者に対する偏見の減少などで施設を取り巻く雰囲気が一変した。HIVが次世代に感染し、子供を保護する施設が増えたことが懸念される。

写真1:HIVに感染した孤児をあずかるローレンゾウホーム

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