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第294回 特派員の取材と雑用 直井謙二

第294回 特派員の取材と雑用 直井謙二

第294回 特派員の取材と雑用

紛争やクーデターそれに国際会議や事件事故の取材やレポートなど、テレビ画面に表れるテレビ特派員はさっそうと活躍しているように見える。しかし、大使館での懇談や記者同士の会合などを「取材」と考えても実態は取材やレポートは40%、そして雑用は60%であろう。支局員の雇用や給料などの人事、支局の家賃の交渉など総務や経理の業務がかなり多い。

異国の地の風習もあって支局員への対応も一筋縄ではいかない。特に経済成長著しいアジアでは給料は毎年上がり、ミニサイズの春闘がある。本社の意向、支局員の希望それに同業他社の支局員の給料などから額を割り出し交渉する。本社では労組の役員として賃金アップを要求していたが、反転、労務管理の難しさを味合う羽目になる。

東南アジアの特派員はワシントンや北京といった政治のニュースが多い支局と違って拠点となっている国から海外に取材に出ることが多い。例えば、バンコク支局の場合、中国の西海岸からアフガニスタンまで取材範囲が広範囲に及ぶ。

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1980年代半ばアフガニスタン紛争が注目を浴び、パキスタンのペシャワールにあるアフガニスタン難民や7つに別れソビエトに支援された政府と戦闘を続けるアフガンゲリラの取材が多かった。写真はアフガンゲリラの中で最も強硬な姿勢を崩さなかったヘクマチアル・イスラム党党首にインタビューした時のものだ。

支局から飛び出す海外取材はやりがいもあって楽しいが、その月の会計報告は頭が痛い。支局員の給料や支局家賃などはタイの通貨バーツだ。パキスタンの出張費はパキスタンのルピー、このほか中国は元、フィリピンはペソ、インドネシアはルピア、ベトナムはドン、そして筆者の給料や日当は円だ。出張した国のレート票をつけそれぞれドルベース変換し合計する。

86年にカンボジアに出張したときはポルポト派によって破壊されたため銀行がなかった。
マネーチェンジの店にレート票もなかったので粗末な紙切れにレートを書いてもらった事もある。

1か月に3か国以上海外出張すると計算は複雑を極める。計算途中で重大な事件が起きれば会計を放り出して取材に向かう。戻って再び会計に取り組んでも何処まで済ませたか分からなくなる。会計はたいてい計算違いをしていて本社の経理マンが訂正して送り返してくる。

「今回は珍しく3ドルしか間違っていませんでした。この調子でお願いします」というお褒めの言葉を頂戴することになる。


写真1:ヘクマチアル氏と側近

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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