1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第264回 インラック首相が宝くじの当選に介入 直井謙二

記事・コラム一覧

第264回 インラック首相が宝くじの当選に介入 直井謙二

第264回 インラック首相が宝くじの当選に介入 直井謙二

第264回 インラック首相が宝くじの当選に介入

「アジアの今昔・未来」第34回でタイの宝くじ事情を書いた。日本は連番もしくはバラで機械的に宝くじを買うが、タイの場合は客が予め購入する宝くじの番号を決めていて、宝くじ店をはしごしてでも希望の番号の宝くじを買うことなどを紹介した。庶民が夢を託す宝くじでも国によって買い方が違うというたわいもない話だが、政治が絡むとなると厄介になってくる。

タイ政府が反政府デモの鎮静化を目指して発表した非常事態宣言が解除されたとは言え、依然インラック首相を糾弾する声は高い。そこに降って沸いたのがインラック首相は支持拡大を狙って公営宝くじの当選番号を不正に操作し支持者に暗示したという事件だ。

「ネイション」と並ぶタイの英字有力紙、「バンコク・ポスト」は当選番号のうちのふたつが北部チェンマイで首相が使用した2台の車両ナンバーと一致していたと報じた。その上で反政府デモの幹部が、同様のケースは過去にも起きていて「首相が民衆に幸運を運ぶ、という評判を立てようと宝くじの担当局に圧力をかけた疑いがある」と語ったと伝えた。

コメの質入制度の不正横行に絡んで国家汚職制圧委員会が職務怠慢を理由にインラック首相の罷免を請求、また反政府デモの混乱の中強行され総選挙について憲法裁判所が選挙無効との判断をくだすなどインラック首相には政治的な逆風が続いている。また、支持母体だったはずの北部や東北タイの農民の間にもコメの質入の対価の支払いが遅れていることなどから不満が高まっている。

第364回 直井.jpg

ピンチを脱するため庶民の間で人気のある宝くじを利用したということだが、当選番号を手に出来る支持者は少数だし、当選番号を操ることは困難だ。抽選会場を何度か取材したが、数字を書いた数個のアクリルのこまを回して決める。日本の宝くじ同様、会場では大勢の宝くじファンが見つめている。タイでは身分の高い人や高僧のしぐさに当選番号が隠されているなどの噂がたびたび立つ。インラック首相もたまたま車の番号と一致したに過ぎないが、いかにも噂社会のタイらしい出来ごとだ。

またあらゆるギャンブルが禁止され、トランプの所持さえ禁止されているタイでは公営宝くじの人気が高い。「バンコク・ポスト」によれば、インラック首相は車から降りる際、転んで左足首を負傷し、2日後の閣議には車椅子で姿を見せた。全治1か月から2か月という。首相は支持者に幸運をもらそうとしたというが、自らは幸運に見放されているようだと噂されている。


写真1:宝くじ売りは身障者の貴重な仕事

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》次回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》の記事一覧

 

タグ

全部見る