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第23回 駅から気軽に登れるソウル北端の岩峰 道峰山 森正哲央

第23回 駅から気軽に登れるソウル北端の岩峰 道峰山 森正哲央

第23回 駅から気軽に登れるソウル北端の岩峰 道峰山

ソウル特別市の北端に位置する道峰山は、北漢山、冠岳山とともにソウルを代表する山の一つ。牛耳嶺(370m)を境界とする南の北漢山とともに北漢山国立公園に指定され、市民にとってまたとない憩いの場となっている。山頂部は花崗岩の岩峰で、最高峰の紫雲峰(739m)をはじめ万丈峰(718m)、仙人峰(708m)、神仙台、五峰(655m)などの峻峰がつらなる。一方、山腹では門師洞渓谷、望月寺渓谷、ポムン寺渓谷(無愁谷渓谷)が渓谷美を競い、673年創建の天竺寺をはじめ望月寺、双龍寺、回龍寺など名刹も多い。

道峰山は南北に長く、北端の賜牌山(552m)から南端の牛耳岩まで約13キロ余り。平行してソウルと議政府を結ぶ地下鉄1号線(京元線)と国道が走り、交通の便は良い。いくつかの駅から徒歩で登山口にアクセスでき、バスの時間を気にしないでいいのもうれしい。今回は望月寺駅から望月寺を経て紫雲峰へ登り、道峰寺駅へ下山するコースを紹介したい。

まずは地下鉄1号線で望月寺駅へ。3番出口前に韓国を代表する登山家で、2000年にヒマラヤ8000m級14峰を制覇した厳弘吉氏(1960年生まれ)の展示館があるので立ち寄った。2003年に開館し、写真や登山道具などを展示している。厳氏の実家はもともと元道峰山渓谷(望月寺渓谷)にあり、行楽客相手の商売をしていたため、厳氏は子どものころから道峰山で登攀技術を磨いたそうだ。

駅から「北漢山トゥレッキル(周遊道)」の道標に沿って約500m歩き、西部外郭循環道路とソウル外郭循環高速道路の高架をくぐる。林の中の坂道を登ると登山口の駐車場につく。ルートはタラク稜線と元道峰山渓谷の2コースがあるが、望月寺に寄るため、元道峰山渓谷を選んだ。サンヨン寺の前を過ぎ、分かれ道を左へ。

雑木林を沢に沿って緩やかに登っていくとひき蛙岩、さらに進むと徳済井戸につく。その先の分かれ道で右折し、300mのぼると望月寺だ。新羅時代の639年、海浩和尚が創建した寺で、首都・徐羅伐(現在の慶州)の宮廷・月城を眺め、新羅王室の繁栄を祈願したことにちなんで名付けられた。

望月寺からさらに500mもがんばれば、展望のよい砲隊稜線にでる。そばのピーク(649m)に立つ砲隊山火事監視小屋前に座って、しばし疲れを癒す。晴れてはいるが、冬特有の霞が出ており、議政府市の高層アパート群がぼんやりしている。砲隊稜線は、紫雲峰から北に続く起伏に富んだ稜線で、対空砲陣地があったためこの名が付いた。

稜線に出てから紫雲峰までは1.4キロと距離的にはそれほどないが、切り立った難所もあり、思ったより時間がかかる。日陰側の斜面は雪で白いが、尾根は日当たりがよいためか雪は疎らで、この日、アイゼンは必要なかった。途中にある小ピーク(砲隊バンカー)からは、鋸の歯のようにつらなる仙人峰、万丈峰、紫雲峰、神仙台が見渡せる。仙人峰は、北漢山の仁寿峰と双璧をなすクライマーの聖地で、1950年代から本格的な登攀コースが開かれた。神仙台は、一般コースで登れる最高峰だ。

神仙台の手前には、Y渓谷の難所がひかえており、鎖や手摺を頼りに慎重に進む。迂回路もあるので、家族で行った場合は無理をしないで回った方がいい。また、週末と公休日は一方通行となり、神仙台側からは入れない。Y渓谷を抜けると紫雲峰と神仙台が目前だ。神仙台下まで鉄段を上がったら、最後は両手、両足を使いよじ登る。神仙台に立つと目前に万丈峰と仙人峰が屹立して迫り、南には神仙台からはティム岩、刀岩へと起伏に富んだ尾根が続く。晴れていれば、その先に、北漢山の山並みが広がるが、あいにく霞に包まれ見えない。

神仙台より先、ティム岩までの稜線は、事故が多発するため立入禁止なので、神仙台から修行道場として有名な天竺寺に立ち寄り、道峰渓谷へ下る。天竺寺までは、広場岩を経て約1時間10分。天竺寺は新羅時代の673年に義湘大師が玉泉庵として創建し、1398年に李朝の太祖・李成桂がここで百日祈祷を行った後に天竺寺と呼ばれるようになった。

天竺寺から450mで道峰待避所、さらに1キロ余りで金剛庵の前をすぎると、舗装路となる。180m先に道峰書院がある。さらに700m先で光輪寺、国立公園登山学校の前を通過。この頃には日が完全に暮れてしまった。暗闇の中、登山用品店が浩浩と立ち並ぶ一角を過ぎると、道峰洞の住宅街。ここから地下鉄の道峰山駅まで900mを残すのみだ。

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