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第12回 三方を海に囲まれた海南郡の名峰 頭輪山 森正哲央

第12回 三方を海に囲まれた海南郡の名峰 頭輪山 森正哲央

第12回 三方を海に囲まれた海南郡の名峰 頭輪山

朝鮮半島の南端、海南半島に位置する頭輪山は、珍島、莞島、古今島など大小の島々が浮かぶ多島海に臨み、山と海が一体となったすばらしい展望を心ゆくまで味わえる。晴れた日には青々とした大海原の彼方に済州島の漢拏山まで望める。

8つの峰が大興寺渓谷(大興寺川)を取り囲み、主峰の迦蓮峰(700m)、ノスン峰(682m)、頭輪峰(627m)がつらなる北東側は険しく、兜率峰(大屯山・673m)、蓮花峰(611m)、穴望峰(379m)、香爐峰(469m)のそびえる南西側は比較的なだらか。

三方を海に囲まれ、温和な海洋気候の海南郡に位置する頭輪山は、植生が豊かで、常緑樹のツバキやユズリハ(榧子林)、ソメイヨシノに似た王桜が自生している。また頭輪山一帯は1979年、道立公園に指定されている。全長1500mのロープウェイで北の高髻峰(636m)に登っても、頭輪山の山並みと多島海の雄大な景色を楽しめるが、高髻峰周辺に登山コースはなく、ザックを持っての搭乗も禁じられている。

今回は大興寺を起点にノスン峰、迦蓮峰、頭輪峰の3峰を歩いてみた。海南バスターミナルから大興寺行きバスに乗車。街を出てすぐ、頭輪山が左手に見えてくる。海南出身の文臣、尹善道の遺蹟を経由して約20分、旅館や食堂が並ぶ終点の三山面九林里で下車する。観覧券売場から大興寺までは大興寺川に沿って散策路を約40分。少し距離があるが、空を覆う新緑が心地よい。平行して車道が走り、マイカーは大興寺そばの駐車場まで入場できる。

浮屠殿を過ぎ境内へ。大興寺は新羅第24代国王、真興王(534~576)の母、只召夫人のため547年に阿道和尚が創建し、李朝仏教中興の祖、西山大師(休静・1520~1604)が再建した。大興寺から仰ぎ見る頭輪山はひときわ高く、毘盧遮那仏の寝姿にも擬せられている。境内の裏から林道へ抜けると10分で北弥勒庵と一枝庵への分かれ道にでる。左折して北弥勒庵へ向かうと、本格的な山道となる。足元には石が多く、急勾配に息があがる。

大興寺から50分、北弥勒庵についたら水場で喉を潤し、龍華殿の磨崖如来坐像を拝顔する。新羅時代の作とされるが、本尊とその周りに彫られた供養飛天像が今も明瞭で、黄白の柔らかい石色がここちよい。北弥勒庵からオシム峠(478m)まではゆるやかな下り。天然記念物の王桜がちょうどピンクの花を咲かせていた。

オシム峠からは再び潅木帯の急な登りとなる。ヘリポートを過ぎ、最後に手と足を使って岩を攀じ登るとノスン峰の大きな岩の頂につく。平らな一枚岩なので、人が少なければ展望を楽しみながら、弁当を広げるのに好適だ。迦蓮峰の後ろに穏やかな多島海が広がり、水平線の上に漢拏山の頂上が薄っすらとのぞいていた。ノスン峰から隣の迦蓮峰へは鎖場を通って5分。迦蓮峰に立つと、頭輪峰からのびた胃峰の先に莞島が望める。莞島と達島の間にかかるのは莞島大橋だ。

迦蓮峰から挽日峠へは階段が整備されている。挽日峠にはヘリポートがあり、秋にはススキの原が広がる。峠から千年樹と五層石塔のある挽日庵址を経て下山できるが、今回はもう一度、頭輪峰へ登り返した。頭輪峰の南側に約300m回りこむと三叉路に出る。右折して急坂をひと登りし、自然石の“雲橋”をくぐり、右に50mほど行くと露岩の頭輪峰山頂につく。

景色を満喫したら大興寺へと下る。雲橋を過ぎ、今度は石の多い西側斜面を下っていくと、25分で林道にでる。右へ行くと真仏庵がある。林道から指導標に従って再び山道に入り、渓流の音を聞きながらゆるやかに下ること20分、大興寺の表忠祠裏手に出た。

山と海が一体となった頭輪山は、印象深い山の一つ。青い多島海、ススキの原、切り立った岩稜、大興寺など、さまざまな要素が合わさって、楽しみが尽きない。ただ、韓国の南東端に位置し、ソウルや釜山から遠く訪ねにくいのが難点といえる。木浦、珍島、莞島などと合わせて旅行日程を立て、ぜひ一度訪れてみてほしい。  

●アクセス(バス)
・釜山西部バスターミナル(沙上)~海南 1日6本。24100ウォン
・海南バスターミナル~大興寺 1日19本 6時50分~19時40分。15分所要。1100ウォン。

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