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第5回 韓国の国土観―白頭大幹 森正哲央

第5回 韓国の国土観―白頭大幹 森正哲央

第5回 韓国の国土観―白頭大幹

今回は山歩きの紹介を一回お休みして、韓国人の国土観について書いてみたい。隣り合う日本と韓国だが、風水地理説の受容をはじめ、その国土観、地理観は大きな違いがあり、韓国の山を歩く際にも、風水にもとづく韓国特有の国土観を知っておくと、なるほどと感じることが多いからだ。

特に「白頭大幹」ということばは日本ではあまり知られていないが、韓国人の国土観をよく表し、近年はブームといえるほどよく取り上げられている。白頭大幹とは“白頭山から始まる大きな山脈”という意味で、白頭山から金剛山を経て太白山にいたり、西南側へ方向を変えて小白山、俗離山、さらに南側へと方向を変えて秋風嶺、白雲山を経て智異山の天王峰まで約1400キロにわたって連なる、朝鮮半島の脊梁をなす山並みのことだ。


朝鮮では伝統的に大地を一個の有機体(身体)ととらえ、白頭山を発した一種のエネルギーである「生気」が、この白頭大幹に沿って智異山まで血液のように流れくだり、大地を潤していると考えてきた。

白頭大幹は韓国の国土観の根幹といえ、日本の登山愛好家が「百名山完走」を目指すように、韓国では近年「白頭大幹縦走」が人気を集めている(もちろん北朝鮮側は歩けないのだが)。白頭大幹を区間ごとに区切って紹介した登山地図やガイドブックも数多く発行されており、山を歩いていても、白頭大幹についてふれた案内板などをよく見かけるようになった。白頭大幹の区間中には、10年以上にわたって入山規制されている山もあり、完走を目指す人の中には、違法を承知で入山を試みる人も少なくない。白頭大幹縦走は時間に余裕のある退職者に人気だが、年配者は年々足腰が弱り、開放されるのをいつまでも待っているわけにはいかないという事情もあるようだ。

また2003年には「白頭大幹保護に関する法律」を制定し、全国土の2.6パーセント、山林面積の4パーセントを保護地域として指定、白頭大幹保護基本計画(2006~15)に基づいて整備を進めている。

白頭大幹の中には、道路の整備などで「断脈」(「気」が通る道が壊れていること)の憂き目にあっている場所もあり、2020年までに梨花嶺のほか、江陵の大関嶺、聞慶のボル峠、尚州のヌル峠・ピ峠・化寧峠、南原のサチ峠・女院峠など計13カ所を「復元」する計画という。このことからも近年、白頭大幹がいかに韓国で重視されているかが、理解してもらえるのではないだろうか。

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