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第6回 高原漫歩が人気、神仏山 森正哲央

第6回 高原漫歩が人気、神仏山 森正哲央

第6回 高原漫歩が人気、神仏山

今回は秋の登山シーズンが間近ということもあって慶尚南道と蔚山広域市にまたがってそびえ、爽やかな高原漫歩が人気の神仏山(1209m)を紹介したい。

慶尚道の東南部にそびえる「嶺南アルプス」のなかでは北の迦智山に次いで高く、秋になると霊鷲山との間、約3キロの稜線が黄金色のススキで覆われ人気が高い。各地から来たハイカーがススキの原を行き交う情景は嶺南(慶尚道)地方の風物詩の一つだ。1983年には北西の肝月山とともに蔚州郡立公園に指定されている。釜山からも訪ねやすいので強くお薦めしたい山の一つだ。

また、霊鷲山の南麓には、仏舎利(釈迦の遺骨)が安置されていることから“仏宝寺”とも呼ばれる通度寺が座し、山行の終着点(あるいは基点)とすることもできる。通度寺は、法宝寺の海印寺(慶尚南道陜川)、僧宝寺の松広寺(全羅南道順天市)とともに韓国の三宝寺の一つにも挙げられる名刹だ。

今回は登億温泉団地がある北麓の蔚州郡上北面登億里を起点に肝月山に登り、神仏山を経て霊鷲山まで縦走、秋のススキの原と稜線からのすばらしい眺望を満喫した。釜山や蔚山から登億温泉団地へ行くには、彦陽でバスを乗り換える。彦陽の街を出ると、稲穂が垂れた山吹色の田んぼが広がり、日本の農村を走っている錯覚におそわれる。ただ目的地の登億温泉団地は、煌びやかなネオンのモーテルが立ち並び、温泉街というよりラブホ街と呼ぶほうがぴったりしている。

登億里で硫黄温泉が発見されたのは1987年のこと。90年代後半に開発されたが周囲の観光開発が追いつかず、いつの間にかラブホ街になってしまったそうだ。ゴルフ場や乗馬場などの建設計画もあるそうだが。とは言え、もちろん大浴場を備えた施設もあり、「神仏山温泉モーテル」の駐車場には大型バスが何台も停まり、遠来の客を迎えていた。温泉団地の坂を上がったところが登山者用の広い駐車場で、週末ということもあって、各地から来た車でびっしりと埋まっていた。

登億里を起点とした登山路は、支尾根から肝月山へ登る肝月恐竜稜線コース、肝月峠への直登コース、切り立った岩稜を神仏山へと登る神仏リッジコース(神仏恐竜稜線)の3つ。恐竜稜線はやせ尾根を通るので、悪天時は避けた方が無難。虹流瀑布を経由する神仏リッジコースも、ロープで攀じ登る難所がひかえている。

恐竜稜線を行く予定だったが、スタートしてすぐ道に迷い、肝月峠への直登コースを登ることになってしまった。舗装された林道を何度も横切り、40分でススキが波打つ肝月峠につく。肝月峠は、載薬山の獅子平とともに嶺南アルプスを代表するススキ原で、“蔚山12景”のひとつ。三角屋根の立派な待避所あり、泊まることができるのか職員に聞くと、「宿泊用ではないけど、シュラーフを持ってきて寝る人はいますよ」とのこと。近くでは休憩所も建設中だった。さらに肝月峠から神仏山へ。ゆるやかな階段を上りきるとツツジの潅木帯で、最後はロープの柵で囲まれた平坦な道となる。大勢のハイカーでにぎわう神仏山の頂からは、彦陽市街、南北にのびる京釜高速国道を一望でき、遠くに蔚山の高層ビルが霞んでいた。

神仏峠の十字路を過ぎ霊鷲山へは約1時間15分。霊鷲山へと続く約3キロの平坦な稜線は神仏平原と呼ばれ、見渡すかぎりススキ原が広がり、清清しい。霊鷲山の山頂を過ぎて毘盧庵への下山道をやり過ごし、尾根を直進すると、これまでの平坦な道から一転して起伏のある岩混じりの歩き難い尾根となる。小ピークをいくつか越えるとハンパク峠につく。ここから尾根を離れて下降すると白雲寺につく。さらに下ると白雲庵駐車場。その先の毘盧庵三叉路から通度寺までは40分、少々退屈な車道歩きとなる。通度寺の境内に着くころには日が暮れ、辺りは真っ暗となってしまった。

慈蔵律師が646年に創建した通度寺は規模が大きい。周囲にある14の庵と合わせて約600人もの僧侶が修行に励み、法灯を守っている。通度寺から下の山門まではさらに20分、山門から新平・通度寺バスターミナルまではさらに徒歩10分かかる。

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