1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第4回 全羅北道・鎮安の夫婦峰、馬耳山 森正哲央

記事・コラム一覧

第4回 全羅北道・鎮安の夫婦峰、馬耳山 森正哲央

第4回 全羅北道・鎮安の夫婦峰、馬耳山 森正哲央

第4回 全羅北道・鎮安の夫婦峰、馬耳山

今回は、馬の耳にも似たユニークな山容で知られている、全羅北道鎮安郡の馬耳山(678m)を紹介したい。
ポンポンと小気味良く並んだ2つのドーム状の峰が特徴で、あるいは韓国のガイドブックなどで見たことがある人も多いのではないだろうか。
仲睦まじい夫婦に擬して、東側の峰を父峰(雄馬耳山・678m)、丸みのある西側の峰を母峰(雌馬耳山・686m)と呼ぶ。
1979年に馬耳山道立公園に指定され、2003年には全羅北道地方記念物から名勝第12号に昇格し、全羅道を代表する観光地として一年中にぎわいを見せている。また、桜の名所でもある。

公園内には馬耳山のほか、最高峰の広大峰(609m)をはじめ笠峰(532m)、鳳頭峰(548m)、飛龍台(527m)などの峰がつらなり、変化に富んだ山行が楽しめる。
ただ残念ながら、母峰の頂上へと続く山道は、植生回復のため、2004年から14年10月まで10年間、閉鎖中で、父峰へ登る山道はもともとない。

主な登山口は鎮安邑丹陽里の北部駐車場と、馬霊面東村里の南部駐車場の2カ所。
桜の美しい5月、馬耳山麓の北部駐車場からスタートし、馬耳山、鳳頭峰、飛龍台を経て南部駐車場へと歩いてみた。
鎮安の街から馬耳山までは約3キロと近く、北部駐車場まではバスで5分ほど。日曜にもかかわらず思いのほかひっそりしている。
観覧券売場(2000ウォン)を過ぎると桜並木の緩やかな階段となる。桜はいささか見ごろを過ぎていたが、若葉が心地良い。途中の水場で喉を潤し、ひと踏ん張りすると、父峰と母峰の間の鞍部にあたる天王門(550m)につく。

天皇門から母峰頂上へ向かう山道は閉鎖中で、父峰中腹の華岩窟は落石の危険があるため一時立入禁止となっていた。ひと息ついたら銀水寺へ向かって再び階段を下る。
馬耳山は、礫や砂が堆積して固まった堆積岩からなる。遠目には滑らかでも、近くで見ると大小の石でデコボコし、南側には風化でできた洞窟状上の穴(タフォニ)が目に付く。
南麓の銀水寺は、李朝を創始した李成桂にまつわる伝説に彩られている。高麗王朝の将軍だった李成桂は1380年、阿只抜都が率いる倭寇を撃破、凱旋時に馬耳山へ立ち寄り、新王朝建国の天命を得たといわれる。父峰の真下に馬耳山神祭壇が祀られ、馬耳山が霊山であることを物語っていた。
銀水寺から緩やかに下ると、母峰絶壁下に塔寺が現れる。名前の通り、大小の石塔が壮観で、馬耳山を代表する観光スポットとなっている。
築いたのは李甲龍(1860~1957)という処士。この地で修行しながら、30年余りにわたって一人で積み上げたそうだ。
塔寺から南部駐車場までは、塔影堤と呼ばれる貯水池のほとりを通る舗装道があり、多くの花見客でにぎわっていた。だが今回は、塔寺そばの駐車場から山道へ入る。
風化でところどころ大きく凹んだ母峰の岩肌を見ながら登って行くと鳳頭峰の頂上につく。飛龍台の展望台をはじめ、桜並木に囲まれた塔影堤、最高峰の広大峰が一望にできる。
鳳頭峰から飛龍台までは多少起伏のある道となる。北部駐車場との分岐を、さらにその先で塔影堤との分岐をやり過ごす。このあたりまでは下りで、再び勾配がきつくなる。最後に手すりを頼りに露岩をひと登りすると、飛龍台の展望台につく。心地良い涼風でに身体を冷やし、360度のパノラマを心ゆくまで味わう。北側眼下に走っているのは益山・浦項高速道路だ。
展望台から、中腹の大きな岩上に建つ古金堂へはさらに30分。古金堂から下ること15分、塔寺と南部駐車場を結ぶ桜並木の舗装道に合流する。道両脇には食堂や土産物屋が立ち並び、大勢の家族連れらで活況を呈していた。
多くのバスや乗用車で混雑する南部駐車場に到着、山行を終えた。
登山規制が解かれる2014年10月以後、また訪ねてみたい。

●馬耳山へのアクセス(バス)
・ソウル~鎮安 3時間。
・釜山~鎮安 4時間30分
・鎮安~北部駐車場 一日12本。7時30分~18時20分。
・南部駐車場~鎮安 一日6本。10時~19時。
・南部駐車場~全州 一日2本。14時、17時。

 「2014年7月初掲」

タグ

全部見る