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債務不履行、コロナ禍もあって不動産業は依然低迷-景気悪化恐れ、当局のテコ入れ策も(上) 日暮高則

債務不履行、コロナ禍もあって不動産業は依然低迷-景気悪化恐れ、当局のテコ入れ策も(上) 日暮高則

債務不履行、コロナ禍もあって不動産業は依然低迷-景気悪化恐れ、当局のテコ入れ策も(上)

 
中国では昨年秋、不動産企業大手「恒大集団」などの債務不履行(デフォルト)問題が起き、その影響を受けて住宅販売市場は今年に入っても全体的に低迷が続いている。今年1-5月期の大手企業100社の平均販売額は300億元に達せず、前年同期比で5割以上のマイナス。1000億元以上の取引をした企業は昨年より12社少なくなり、わずかに3社のみであった。昨年9月から、党・政府が不動産バブル状況を抑えるため、銀行に資金供給抑制を指示したり、デベロッパーが累積債務のつけで経営破綻を来したり、購入希望者が引き渡し遅延を恐れ買い控えしたりしていることが原因だ。さらに今春以降は、上海、深圳など大都市で大規模なロックダウン(封城)が行われたことも低迷に拍車がかかった。不動産業は全体経済動向のメルクマールであり、景気の悪さは即社会不安を呼ぶ。そのため最近になって、再びテコ入れ策が導入されている。

 <最近の不動産状況>

中指研究院のデータによれば、今年1-5月期の不動産業開発業者上位100社の平均販売額は273億9000万元で、前年比で50・7%の減。個別企業の売り上げランキングを見ると、「碧桂園集団」の2011億9000万元が断トツで、次いで「万科企業」1673億4000万元、「保利発展」1592億元、「融創中国」986億元、「中海地産」968億元、「華潤置地」813億2000万元の順。かつては上位ランキングされていた恒大集団はベスト100にも入っていない。不動産売り上げ100億元以上の企業は70社で、前年に比べて48社少なくなっている。不動産データサービスの「克而瑞」社によると、売り上げランキング上位100社の今年5月だけで取引された額は4546億7000万元。これは前月比では5・6%の伸びだが、前年同月比では59・4%の減であるという。

国家統計局の発表によれば、今年1-4月期にデベロッパーが全国で開発投資に当てた金額は3兆9154億元で、前年同期比で2・7%の減、このうち住宅投資額は2兆9527億元で、2・1%の減だった。この間の住宅開発面積は2億8877万平方メートルで、前年同期比で28・4%の減。新築物件の価格は昨年9月からずっと前月比でマイナスを続けている。中指研究院によると、今年1-5月期、主要100都市の商品住宅取引規模は前年同期比で4割減。5月だけ見ても、新築住宅価格が前月比マイナスとなったのは45都市、中古物件価格では57の都市が同じくマイナスになっている。これは特に、深圳、広東省、上海などでコロナ感染によりロックダウンの措置が取られたことが大きい。

中国では土地は国有であり、地方政府はデベロッパー、ひいては住宅購入者に土地の使用権を売り、その売却益を地方政府の主たる財源としている。そのため、これまで開発が進んでいた時には、地方財政は豊かであったが、昨年来、不動産開発が下火になったことから、その収入は激減している。今年4月の土地使用権売却収入は前年同月比38%減、下落率は前月3月の23%とより一段と大きくなった。財政部の発表によれば、地方政府はコロナ対策で一段とその防御策を講じなければならない時に、1-4月期の一般会計予算枠の収入が前年同期比で5%ほど減少、収入減の中の支出増によって財政状況を悪化させている。まさに泣きっ面に蜂の状態になっているようだ。

そんな中で、不動産の研究機構である「貝壳研究院」が3月に面白い調査結果を披露している。2021年に国内38都市で女性の物件購入者が48・6%を占めたという。2017年の45・5%から3ポイント以上の上昇。しかも、彼女らが一線級都市で昨年購入した物件の平均価格は470万元と高額だった。これが意味するところは、女性の高額所得者が多くなったことである。同研究院は購入女性からのヒヤリングだとして、「女性が住宅を買うのは結婚に際し安心感を持つためで、子供の多産を望んでいるからではない」と指摘している。従来結婚に際しては、女性側が男性に住居の用意を求めた。しかし、将来離婚もあり得ることを考慮し、立場を強くするため、自らも物件を持つ傾向にあるようだ。ただ、独身女性が購入するに当たって約4割の人が父母に金銭面で支援を仰いでいるという。業界も今後は女性をかなり意識した販売工作を展開するものと見られる。

 <昨年秋以来の推移>

昨年秋は、恒大集団の債務不履行問題がクローズアップされた。恒大に限らず大手のデベロッパーは外貨建債券を募っていたため、デフォルトは国際的な信用に関わってくる。当局はドル建て債券について国有銀行などに指示し必死に利払いなどを行い、不動産業者を支えてきた。不動産企業はそれで一息入れたが、それは負債が一部銀行に移っただけのことで、本質的に問題が解決されたわけではない。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は昨年12月15日に出されたある報告書だとして、中国の銀行が抱える不動産絡みの不良債権は2020年末に2・0%程度であったのに、21年中ごろには2・5%に上がり、同年末に5・5%に達したと伝えている。

最悪の不良債権企業は恒大集団であり、VOAによれば、その負債総額は3050億米ドルであるという。だが、実際はその程度でなく、他の情報ではそれを上回る負債額があるとも指摘されている。恒大以外にも、過剰な資金調達をしてきた「陽光城地産」「中国奥園集団」「佳兆業集団」なども返済に苦しんでいることが明らかになった。碧桂園はシンガポールに近いマレーシアの海岸線に人工島を造り、「フォレストシティー」という新都市建設を進めているが、潜在的な顧客である中国の富裕層が昨年来のコロナによる渡航禁止で海外に出られず、建設中止に追い込まれている状況だ。同社も外債には苦しめられ、デフォルトに陥る危険性が言われている。万科集団も3月末に、2021年に販売した住宅面積は3807万平方メートル、販売総額は6278億元で、それぞれ前年比で18・4%、10・8%のマイナスになったと発表した。

中国では21世紀に入って、地方政府が地域発展の起爆剤にしようと不動産開発業者にマンション建設を奨励してきた。富裕層は、資産形成のため、住居以外の2軒目、3軒目の物件を所有するようになり、それらによって中国各地で建設ラッシュが起きた。だが、いったんタガが外れると際限がない。過剰にマンションが建てられ、誰も入居しない「鬼城」というゴーストタウンの町とか、完成前に建築を止め放置される「爛尾楼」というビルが相次いで出現した。習近平国家主席は「住宅は住むもので、投機の対象にするな」と呼び掛け、さまざまな対策を検討した。その一つが不動産税の導入だ。過去何度も提起され、その都度時期尚早として見送られてきた制度。昨年10月に開催された全人代常務委員会議が再び持ち出され、財政部は昨年12月末、財政工作会議を開き、不動産税の試験的導入を再度提唱した。不動産税は、投機の対象とするような2軒目以上の物件に課すものだ。

逆に、本当に住む家が欲しい人には逆に住宅購入補助金を出したり、不動産取得時の税負担を軽減したりする地方政府も出てきた。習近平指導部が提唱する「共同富裕」を実現するため、金持ちには厳しく、貧しい人民には優しくという措置である。この結果、総じて不動産熱は確実に冷却化していった。外来人口が多く、住宅価格は下がりにくいとされる大都市深圳でも、ここ一年で不動産価格は下落気味で、購入者は投資利益が得られず、約2割の損害を被っているという。深圳不動産情報ネットの統計によれば、2021年、同市内で取引された中古住宅は4万699件で、前年同期比で57・3%の減。中国証券報によれば、2020年に学園地区にある32平方メートルのマンションを470万元で購入したという女性は「同様規格の部屋はその後値上がりし、一時520万元で取引された。だが、現在は私の購入時より2割程度安くなり、400万元でも買い手がいない」と嘆いている。