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第16回 アジアの童話「ラーマーヤナ物語」  直井謙二

第16回 アジアの童話「ラーマーヤナ物語」  直井謙二

第16回 アジアの童話「ラーマーヤナ物語」

グリム童話やイソップ物語は日本の子供に親しまれているが、アジアの児童に広く知られる「ラーマーヤナ物語」を知る日本の子供は少ない。

2000年以上も前にインドの作家ヴァールミーキによって書かれたといわれるヒンズーの叙事詩「ラーマーヤナ」物語はインド洋を渡り、海のシルクロードを通ってほぼアジア全域に伝わった。その痕跡は東南アジアの小学校の教科書、9世紀に建立されたインドネシアのプラバナン遺跡やカンボジアのアンコール遺跡の壁面彫刻など、ありとあらゆる所で見受けられる。「ラーマーヤナ物語」はラーマ王子と妻、それに弟ラクシュマナ王子の3人の物語だ。3人が森を歩いていると、金の鹿が現れる。妻のシータ姫の希望で2人の王子が金の鹿を追いかけているとラヴァナという悪魔が現れ、シータ姫を誘拐する。

2人の王子がシータ姫を探していると超能力サルのハヌマーンが現れ、サルの国では権力闘争が起きていて困っていると2人に訴える。ハヌマーンの願いを聞き入れたラーマはサルの国の悪者ヴァーリンを倒す。喜んだハヌマーンは恩返しにシータ姫捜索に加わる。空を飛ぶなどさまざまな超能力を生かし、ランカ島に幽閉されているシータ姫を発見してラーマ王子に報告する。

サルの軍団の支援を受けたラーマ王子とラクシュマナ王子は激しい戦いの末、ラヴァナを倒し、平和が訪れる。ごく簡単に紹介したが、実際にラーマーヤナ物語を吟じると、24時間以上かかる。ネール大学のマンジュシュリ教授に北インドの古都ジャイプールにあるマハラジャの城でラーマーヤナ一部を吟じてもらった。(写真)


ところで、困ったサルを助け、恩を感じた超能力サルが人間に従い、さまざまな困難を乗り越えて人間の希望を実現するという構成は西遊記と似ている。また、ハヌマーンの能力と孫悟空の能力は空を飛ぶ、体の大きさを自由に変えるなど似ている点が多い。

さらに、中国の泉州にある開元寺に残る孫悟空の壁面彫刻などから、ラーマーヤナ物語が海のシルクロードを伝わって中国に伝わり、16世紀に完成した西遊記に大きな影響を与えたという学説もある。

アジア全域に伝わったラーマーヤナ物語だが、日本の桃太郎がラーマーヤナ物語の影響を受けたとする意見もある。話の構成が似ているし、サルがハヌマーン、桃太郎がラーマ王子、ランカ島が鬼ヶ島、ラヴァナを鬼と置き換えられる。

インドの古代叙事詩が身近なものに感じられる。

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