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第594回 ラオスの高速鉄道 直井謙二

第594回 ラオスの高速鉄道 直井謙二

第594回 ラオスの高速鉄道

中国が建設したラオスの高速鉄道が運行を開始して1年が過ぎた。山国で海のないラオスにとって物流の要になっている。一帯一路を推進する習近平政権にとっても他国が懸念する南シナ海海路の他に東南アジアに向けた物流ルートの一部が開通する。習近平主席は中国の昆明からラオスのビエンチャンまで、もはや高い山も長い道のりもなくなったと語った。

すでにタイの首都バンコクから中部タイのナコンラチャシマまでの高速鉄道はタイと中国との共同作業として着工を開始した。しかしナコンラチャシマからノンカイまでは着工の見通しは立っていない。ノンカイとラオスのビエンチャンはメコン川を挟んで隣町である。着工が決まれば中国昆明からタイの首都バンコクまでつながるわけだが、したたかなタイが施工の負担を巡って中国に揺さぶりをかけているように見える。

タイと比べて近代化が遅れていたラオスにとっては自慢の高速鉄道だ。一方でスリランカ同様、債務の罠に陥る懸念もある。まだ高速鉄道が走っていないタイ市民の間ではラオスの高速鉄道は、観光の目玉になっているようだ。9年間も同僚だったタイ人の元現地記者もさっそくラオスの高速鉄道に乗車したと連絡があった。とにかく切符を手に入れるのが大変で団体旅行に参加してようやく乗車できたそうだ。時速は160キロから200キロほどという。日本の新幹線の乗車経験もある元現地記者は日本の新幹線ほど速くないよと筆者に気を使っているようだった。

30年前、ラオスを取材した時の思い出がよみがえった。六本木のラオス大使館を訪ねビザを申請した。(写真)ラオスを旅する日本人も少なく大使館の予算も潤沢ではなく本省との通信費もままならない時代だった。

たまたま大使が一時帰国するので筆者の申請書類をビエンチャンの本省まで持っていっていただけるとのこと。これならすぐにビザが取れると思ったが、なかなか許可が来ない。大使館員もなぜ来ないかと首をかしげるばかりだった。

当時、ハノイ発ビエンチャン経由バンコク行きの飛行便があった。ビエンチャンはトランジットで2日滞在できたのでラオスの本省を突然訪ねてみた。女性職員が調べるととっくにハノイのラオス大使館に許可が出ているというのだ。どうせ大都会のハノイ経由だから東京に出すより確実だとの説明があった。そして、ハノイには自転車が洪水のように走っているが、東京には自転車があるのかと聞く。あまりないと言うと女性職員はやっぱりと答えた。
30年以上も前のことだ。


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